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転生騎士の英雄譚  作者: 青空
初めての街
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閑話 カイルとデイズ~英雄~

とりあえず、閑話終了です。

今後に繋がる三話でした。

晴れて騎士学校を卒業した俺たちは、そのまま王国騎士団に入団した。


騎士団の任務は主に、王国内の治安維持と未開地の調査となっている。


現状、確認ができている国は、ゾルーデ山脈の向こうにあるサンドレア王国のみだし、特に活発な交流や衝突もないから他国による侵攻についてはそれほど心配していない。


それよりも未開地に存在する魔物や天然資源を調査し、国を豊かにすることが最優先事項となっているのだ。


だから、大抵は魔物やその他脅威(盗賊団や犯罪組織など)の調査・討伐と未開地での探索活動が主ってわけだ。


さすがに騎士団って言っても、一年中任務についているわけではなく、騎士団内で人員のローテーションを組んで任務に出ている。待機している間は当然、任務がない状態だ。


だが勘違いするな、この待機期間中に課せられるトレーニングのほうが100倍キツイ。


ぶっちゃけ死にたくなるレベルだ。

決して休めるなんて思ってはならない。


正直、地獄のトレーニングのあとの遠征任務は、軽い遠足のようなものだったぜ。魔物を狩るのが楽しくってしょうがなかったもんだ!


騎士団が派遣されるような任務は、当然だが、被害の規模が大きく、脅威度が非常に高い上、緊急性のあるものがほとんどだ。冒険者ギルドが斡旋している依頼との違いはそこにある。


通常、冒険者のパーティーは3~5人程度、多くても10人には届かないだろう。そうなると、いくら個人の技量が高くても、規模自体が小さいため、対応しきれない依頼が出てくる。


こういった依頼は、冒険者ギルドから王国政府へ報告され、騎士団に回される。俺たちが遭遇した地竜の討伐に、すぐさま騎士団による討伐隊が編成されたのもこのためだ。


そういえば、これはあとになって聞かされた話なんだが、この地竜討伐に向かった討伐隊を率いていたのは、ダンダリウスという人でな。のちに俺たちの師匠となる人なんだ。


地竜撃退の功績を称えられ、騎士団長に就任したらしいんだが、俺たちが入団したころにはすでに、その地位を次代に譲り、騎士団の戦力底上げを図るため後方支援部隊に回っていたよ。


ちなみに、待機期間中の地獄トレーニングを指揮していたのもこのじじいでな。ほんっと~~~に底意地の悪い鬼畜外道の腐れじじいだったぜ。トレーニング中に何度殺されかけたかわかりゃしねぇ。


まあ、カイルが騎士団長に抜擢された年の暮れにぽっくり逝っちまったから、ジェフリーがダン爺に会うことはできないが、ちょうどお前と同い年くらいの孫がいるって話だ。もしかしたら、そいつとはどこかで会うこともあるかもしれないな。


それはさておき、俺らの師匠ダンタリオンは、それはもう強かった。あれほどの【纏い】を使いこなせる人物を俺はダン爺以外に一人しか知らない。


ん?ああ、【纏い】は何かってか。


【纏い】ってぇーのはな、簡単に言うと自分の魔力を体内で濃縮し、武器なんかに通すことで切れ味や硬度を著しく上昇させる技能だ。


似たようなもので、【身体強化魔法】ってぇーのがあるが、これは自分の身体に魔力を循環させることで、身体強度を著しく上げる技術でな、実は【纏い】よりも遥かに簡単だ。


なぜかというとだな、これは当たり前の話だが、自分の身体に元々存在する魔力は自分自身にとって非常に親和性が高い、つまり体内で魔力を循環するだけなら抵抗が一切ないから何も難しくない。


だが、【纏い】は自分以外のもの、すなわち抵抗が物凄く大きい物体に魔力を流す。その上、絶えず自身と物体の中で魔力を循環させなければならないため非常に難易度の高い技術となる。


この超絶技巧をダン爺と同等、いや、それ以上かもしれないくらい巧みに使える奴が、お前の親父カイルだ。


それを証明する逸話がある。


これはカイルが騎士団長に就任してしばらくしてからのこと。


ちなみに、俺はこの頃ようやく副騎士団長になったばかりだった。


ある日、俺とカイルは訓練場で摸擬戦をしていたんだ。


ちょうど互いに睨み合い、戦いが硬直状態に陥っていた、そんなとき、妙に慌てた様子の部下が訓練場に駆けこんできた。


話を聞いてみると国王が呼んでいるからすぐに王城に来るようにとの通達でな。俺たちは急いで王城に赴き、王のもとへ参上した。


そこで聞かされたのは、地竜侵攻の知らせだった。


すでに冒険者ギルドより王国騎士団派遣の要請があったようで、奇しくも、発見場所は俺たちがガキの頃に地竜に遭遇し、泣きべそ掻いて逃げ出したあの森だった。


俺たちはすぐさま討伐隊を編成し、森に向かった。


森に到着した俺たちは、そのまま割れるような咆哮が聞こえてくる方向へと進んだ。


そこにいたのは・・・角がへし折れ、胴に傷を負った地竜だった。


俺たちはすぐに気が付いた。


『あの時の地竜だ。』と。


おそらく、へし折られた角と胴の傷はダン爺が撃退時につけた傷だ。そう思ったら、不思議と恐怖心は湧かなかった。むしろ、『あの時の礼を返してやる。』なんてことすら思ったもんだ。


地竜との死闘は3日間続いた。


今度のヤツは一切引く様子を見せず、俺たちを皆殺しにしようとひたすらに襲い掛かってきた。正直、俺も含め隊員のほとんどが、精神的にも肉体的にも追い込まれ、絶望しかけていたさ。


だがそこに、俺たちの目の前に、一切あきらめずただじっと勝機を伺っているとんでもない野郎がいた。ガレーリア王国騎士団長カイル、その男だった。


あんときゃ、つくづく規格外な野郎だと思ったな。


そして、俺たちはその瞬間を確かに目撃した。


戦い慣れた俺たちですら身を震わすほどに濃縮された魔力を【纏い】、一瞬の隙を突いて地竜の首を一閃する英雄の姿を。


その後、カイルは地竜を討伐した功績を称えられ、国王より<()()>の称号を贈られた。


ちなみに、結婚して田舎に引っ込むのはもうちょい先になる。


その辺はまた今度、話してやるとしよう。


カイルの結婚秘話、どこで書けるかわかりませんが、乞うご期待!

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