186 三つ首狼の倒し方は?
今俺たちの前にいるヘルウルフは明らかに異常種だった。
身体の大きさに素早さ、火力。普通のヘルウルフとはレベルが違う。どれもこれもSランク級のそれだ。ワイバーンを喰らったことでさらに強大になったのだろう。
特に厄介なのが
「ちっ!またか!」
正面の首を斬り落としても死なないこと。時間が経つと元通りに再生してしまうことだ。
「一体どうなっているッ!」
こいつは本当に生物か? いや、これがヤツの魔法? だが、こんな超回復じみた魔法、聞いたこともない。俺たち人間が使う回復魔法とは原理が違うのか?
どちらにせよ力の源は心臓、すなわち魔石であるはずだ。だからこれを壊してしまえば確実にヤツを仕留めることができるはず。
「問題は、そこまで刃が届かないことなんだよなぁ」
長さだけなら槍を使えば何とかなるかもしれないが、皮だけでなく筋肉までガチガチの相手に、一点突破はキツすぎる。とてもじゃないが俺の腕が耐えられない。
「とはいえヤツの弱点が見えないことには・・・っと【カヴァーチャ】!」
隙あらばトゲトゲの尻尾で串刺しにしてこようとするヘルウルフ。俺は魔鎧を適度に使いつつ攻撃をいなしていく。ティナたち前衛三人もそれぞれに対応し、頑張ってくれていた。
「でもやっぱり厳しいか」
そこそこ深い傷はつけているようだが、斬り落とすまではいかないらしい。浅い傷はすぐに再生してしまって効果もないみたいだ。ここは俺が援護に行ったほうがいいかもな。
そう思って足を踏み出そうとしたところ
「「「ジェフリー(あんた)の相手はそっち!!」」」
三人が声を揃えて言ってくる。何か秘策があるのかな? あれほど自信に満ちた表情で戦っているんだから、本当に問題はないんだろうけども。なんだろうね。
「はぁ~はいはい。分かったよ」
左右の頭を三人に任せ、俺は若干寂しい気持ちになりながら、再生を阻止する方法を考えることにした。
「う~む」
断面を焼いても問題なく再生してくるということは、単に表面の細胞を活性化させているわけではないのだろう。やはり俺たちの使う回復魔法とは違うようだ。
そもそも、魔物が使う魔法とは、呪文を用いた体系的なものではなく、もっと原始的なものなのかもしれない。だとすると、ヤツが魔法を構築するプロセスは・・・。
「あの頭の中で完結している?」
こう考えれば、正面の首を落としただけでは倒せないことにも納得がいく。ヘルウルフには頭が三つもあるからだ。
「どれか一つでも頭が残っていれば、再生魔法が使えてしまうのかもしれないな・・・」
その証拠に
「「やったぁあっ!?」」
ロザリーたちと同じタイミングで首を落としても再生は止まらなかった。また振り出しに戻るだけである。ティナ。頑張ってくれ。
俺は心の中で応援しながら、再生した頭に再び斬りかかった。
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諸事情により来週の更新をお休みします。
再開は11/8予定です。




