20 領主の館③
財務部のある南の館から領主の館までは中庭を通る。
周囲をあれだけ大きな建物に囲まれているので、日当たりはどうなんだろうと思っていたが、そこはやっぱり領主の屋敷、中庭の広さも尋常ではないようで、これなら屋敷が影に入ることはなさそうだ。
常に手入れの行き届いた庭木と美しい花々は、慌ただしく書類を届けに来た職員たちをも和ませることだろう。
屋敷のほうは庁舎よりもさらに歴史を感じさせる佇まいであった。おそらく相当年季が入っているのだろうが、全く古さを感じない。どころか年を経た渋みと凄みが滲み出るダンディーな屋敷だ。
人間にするなら、白髪によく整えた髭を蓄えた渋声のイケオジ的な(笑)
屋敷の主人もこんな感じだろうかと何となく想像してしまう。
屋敷の玄関まで行くと、執事服を身に纏った片メガネのお爺さんが立っていた。
姿勢よく立つ姿には一切の油断がなく、戦士としてもかなりの手練れであることが伺える。
・・・ちょっと待って、このお爺さん、バケモノじゃない?それに、どこかギルバートおじさんと似た雰囲気もある。一見穏やかそうに見えるが、涼しい顔でエグイ手を使ってきそうだ。
お爺さんはこちらを向き、深くお辞儀をすると挨拶してきた。
「本日はご足労頂き、誠にありがとう存じます。お初にお目にかかります。私、グレイシス辺境伯家にて執事長を務めております、ゴッドと申します。ご当主様よりカーティス騎士爵家ご嫡子、ジェフリー・カーティス様をご案内するよう申し付かっております。」
・・・神(対応)かよ!
「それでは、私はここで。ゴッド殿、あとはお願い致します。」
「承知致しました。グレゴリ殿。お勤めご苦労様でした。」
グレゴリ部隊長とはここでお別れのようだ。
「ジェフリー様、また南門に来ることがありましたら、いつでもお声がけください。今度はきちんと歓迎させて頂きます。その折にはぜひとも、お父君のお話でもお聞かせ願いたく!」
「グレゴリ部隊長、案内頂きありがとうございました。またお会いできるのを楽しみにしています。」
父さんの何を聞きたいのかはわからないが、とにかくいい人だった。南門を通るのは帰省する時ぐらいだろうから、当分先になるだろうけど、その時はまたお会いしたい。
グレゴリ部隊長は最後に一礼すると、元来た道を引き返していった。
俺は手を上げて答え、軽く見送り、ゴッド執事長に向き直った。
それからゴッド執事長は扉を開けて、俺を招き入れた。
「それでは、ジェフリー様。こちらへ。」
「はい。」
ゴッド執事長に案内された先は、応接室だった。
屋敷の雰囲気に調和した、渋みのある調度品が置かれている。
美しい木彫りの入ったソファーは、非常に柔らかく、長時間座っていても疲れを感じないだろう。テーブルは一本木から造られたもののようで、重厚感があり、木目が綺麗に見える。
部屋の調度品を感嘆とともに眺めていた俺に入室の知らせがあった。
扉が開き、部屋に入ってきたのは・・・!?




