180 演習課題
そうして与えられた課題が、ワイバーンの討伐。脅威度Aランク級の飛行型亜竜種で、かなりの強敵である。
聞いた話によれば、ワイバーンは全身が蒼く硬い鱗で覆われており、体長は二十メートル前後。大きな翼を持ち、尻尾が短く、首が長いらしい。
獲物を見つけると、三千メートルもの高さから急降下し、自慢の顎で胴体を引き千切るように捕食するそうだ。人間程度なら間違いなく丸飲みだろう。
サチウス先生の言った通り、普通の一回生相手に出す課題ではないね・・・。
ワイバーンの生息域、すなわち巣の在処というのは、実は分かっていない。なので本来は、討伐課題にするにはあまり適さない魔物なのだ。
ではなぜこのような課題が出されたのかと言えば
「最近、王都の西側にある丘陵地で狩りをする姿が頻繁に目撃されている。お前たちはこれを二週間以内に調査・討伐し、素材の一部を提出しなさい」
ということらしい。
――そんなわけで次の日の早朝。
俺たち四人は先生に指示された通り、王都の西門に集合していた。ここで魔法学園チームと合流することになっているのだ。
ジョーが大きなあくびをしながら話し出す。
「ふぁ~あ。どんなんが来るんやろな~」
「・・・ど、どうかな」
「向こうも一回生のトップ二人って話だけど、魔法使いって体力面が心配なのよね。途中でへばられたら困るわ」
ティナの懸念はある意味正しい。ただその理由は、彼ら自身の体力がないということではなく、俺たち騎士候補生と違って身体強化がまともに使えないことに起因する。
一般的な魔法使いは、自身の身体能力を上げるような魔法は使えないため、移動は基本的に馬。風魔法を使った加速で馬を高速で走らせるというのが普通だ。
しかし、馬も生き物。疲れるときは疲れる。今回のような長距離移動の場合はとくに、できるだけ無理をさせないようにしたほうがいいだろう。途中で使い物にならなくなると俺たちも困るから・・・。
「その辺も含めて “ 課題 ” なんだろうね。騎士団に入れば、魔法使いと一緒に遠征するのも普通らしいし。向こうも成績上位者ということは、戦闘のほうは問題ないだろうから、そこに期待するとしよう」
魔法学園での成績がどのように決められるのかは知らないが、おそらく二つの要素が成績に絡んでくるのは間違いないだろう。一つは魔力量。もう一つは苦手属性の少なさだ。
強力な魔法をたくさん使える人材ほど優秀だというのも、この間アンヌさんにも教えてもらったしね。きっと相当な使い手であるはずだ。
と、そんな話をしているところへ、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「・・・いさまぁ~!!」
「ん?」
そして次の瞬間。
「グフッ!?」
俺のお腹に既視感のある衝撃と痛みが走った。
「お兄様ぁあああ!!」
「エリー?!」
勢いよく俺の胸に飛び込んできたのは、金髪の美少女。魔法学園に通う我が妹エリスであった。




