179 ただしジェフリーお前はダメだ
――四日前の話だ。
「全体注目ッ!」
サチウス先生が教室に入ってくるなり、教卓を叩いた。
一体どうしたのだろうか? やけに気合いの入った号令だ。俺も含めクラス中の全員が、驚きをあらわにサチウス先生を見る。
「明日から魔法学園との合同演習を実施することになった!」
これまたいきなりだな! 息をのむ音と喉を鳴らす音が、そこかしこから聞こえてくる。だが、そんな生徒に構わないのがサチウス先生だ。
「向こうからは二名から三名の班を、こちらからは三人から四人の班をつくり、組んでもらうことになる」
なるほど。バランスよく計六名になるように組むんだろうな。
「魔法学園チームとの混成は教師陣のほうで決めることになる。が、その前に我々の側でも班を作らなければならない。今回は各自で自由に組みなさい。ただし、ジェフリーお前はダメだ」
なんだって!? どうゆうことだ?
「先生。それはどうしてでしょうか?」
強い口調で問い返した俺に、渋い顔で答える先生。
「はっきり言ってしまうと・・・お前一人だけが飛び抜けて強すぎる。これでは演習の意味がない」
「それは・・・」
「班員たちが、お前に頼りきりになってしまう可能性もあるだろう。それでは困る。これは実戦訓練でもあるからな」
俺だけが突出しているというのは確かに間違いない。順位戦の結果から見ても、それは明らかだ。それに、授業で行う摸擬戦も最近は先生が相手をしてくれている。クラスのみんなと俺にはそれだけの差があるのだ。
でも、演習に参加できないっていうのはあんまりじゃないか?
「それはおかしいと思います!」
真っ先に声を上げてくれたのはティナだった。
「彼も学校の生徒です。演習に参加しないなんて許されません」
「うむ。そうだな。だから・・・」
何かを言おうとしたサチウス先生だったが、怒涛の勢いで発言するティナに押されて何も言えない様子。もしかして俺たちは何か誤解をしている?
「なぜ一人だけ演習に参加させないのでしょうか? それでは平等の精神に反します!」
「ああ。だから・・」
「彼を参加させることは一回生全体の士気、そして競争心の向上にも繋がるはずです」
「人の話を聞き・・」
「組ませる班がないというのなら、私たちと組ませてください!」
いよいよ限界を迎えたらしい。こめかみに青筋を浮かべたサチウス先生が、残り少ない貴重な髪をゆらゆらと逆立てて天に飛ばす。
「だから、誰も参加させないとは言っていない! いい加減、人の話を聞きなさい!!」
これに固まるティナ。
「へっ?」
先生は淡々とこう続けた。
「ジェフリーはこのクラスの上位陣であるマルティナ、ロザリー、ジョーの三人と組ませることになっている。魔法学園のほうも一回生の上位二名を出してくる予定だ。お前たち六名には、通常よりも難易度の高い課題を与える。覚悟しておくように」




