177 まだまだだね
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俺の差し出した剣を矯めつ眇めつ。一頻り検めたアンヌさんはようやく口を開いた。
「これは凄いね! 一体どうやっているんだい?」
「え~と、そうですね。簡単に言うと、魔力を物凄く圧縮して剣の形に固めている感じですね」
俺は軽く自分のイメージを伝えてみる。
「ほうほう。この剣の輝きは魔力変質時のものか。ちなみに、魔力の圧縮率はどれくらいなんだい? 剣の硬さとの関係は? 他の形にもできるのかな? 変質させているということは、別の性質のものにも変換できるかもしれないね。ああそれから~」
すると、興奮したアンヌさんが矢継ぎ早に質問を飛ばしてきた。俺はたじたじになってそれを抑える。
「ちょ、ちょっと待ってください! 質問が多すぎます」
「あ、ああ。申し訳ない。あまりにも面白い光景を見たものだからつい。学者魂が暴れだしてしまったようだ。少し待ってくれるかな・・・すぅ~はぁ~」
一つ深呼吸をして落ち着きを取り戻したアンヌさん。溢れ出した好奇心を持ち前の理性でなんとかねじ伏せたようだ。
「で、魔力の圧縮率はどれくらいなんだい?」
「えっとですね・・五割・・・いや、七割くらい?」
正直分からん! ていうかそこまで考えて使ってなかったよ!
「すみません。正直に言うと、自分でも分からないんです。ここまで硬くするには、かなりの魔力を消費しますので、相当圧縮しているとは思うんですけど」
「ふむ。それじゃあ、魔力の圧縮率と剣の硬度の関係も分からなそうだね。他の形にはできるのかな?」
「あ、はい。槍とか鎚とか、イメージがきちんとできていれば、何でも作れます。ただ、火や水のような形の定まらない物体にはできないみたいですね。あと、魔力消費の激しい大きな物とかはほとんど維持できないです」
「魔力はずっと供給するのかい?」
「魔力を供給しなくても少しの間ならもちます。でも、形を維持し続けるには、魔力供給が必要ですね」
「では、一度変質させた魔力を別のものに。例えばそう。剣の形にしたものを槍の形に作り変えたりすることはできるのかな?」
「いえ、それもできません。一度なにかの形にしたものはそのままです」
「複数のものを同時に作ることはできる?」
そういえば考えたことなかったね。剣を二つ作るくらいだったら、数分はできそうかな。すぐ魔力枯渇でぶっ倒れそうだけど。
「剣みたいなものであればたぶん・・ただ魔力が・・・」
「やっぱり消費が大きすぎるか」
「はい・・・」
結局問題なのはそこなんだよね。凄く強力な武器であることには違いないのだけれど、時間的な制約が大きな欠点となっている。
困り顔の俺に、しかしアンヌさんは楽しそうな顔で言ってくる。
「フフッ! なるほどなるほど。これはまだまだ検証の余地がありそうだ!」
研究者の血が息を吹き返したらしい。お手柔らかにお願いします・・・。




