174 無属性体質の優位性
腕を組んだアンヌさんはいつの間にかメガネを装着。端をクイッと持ち上げながら説明を始めた。こ、これが世に言う教師もの・・・って何の話だ?
「まず、我々魔法使いが使用する魔法は、前にも教えた通り全て放出系。すなわち、己の魔力を火や水なんかに変換し、外界に放出する魔法だ。これはいいね?」
「は、はい」
「そして当然だが、魔法にも分類というものがある。属性、規模、難易度・・・色々な側面から評価し、カテゴライズしていくわけだ。今回はとりあえず、一番大きな括りでいうところの下級魔法、中級魔法、上級魔法の三分類について説明しよう」
曰く、
下級魔法 : 一~二つの呪文から構築される魔法
中級魔法 : 三~四つの呪文から構築されるそこそこ強力な魔法
上級魔法 : 五つ以上の呪文から構築される強力な魔法
ということらしい。ほうほう。さっぱり分からん!
「あ、でも・・・もしかして俺が普段使っている【火球】とか【水球】って」
「その通り。それらは一つの呪文で発動する下級魔法だ。魔法使いなら誰でも使うことのできる初歩的な魔法でもある。そう。たとえ不得意な属性であってもね」
「得意だと、どうなるんですか?」
ここが本題だよ。アヌえもん!
「うむ。魔法使いにおける得意不得意というのは、実はここに関係しているんだ。得意な属性なら上級魔法まで使いこなせるし、不得意な属性なら下級魔法しか使えない。さて、ここまできたら、君にも話が見えてきたのではないかな? “ 無属性体質 ” の優位性について」
う~む。“ 無属性体質 ” の優位性か。不得意な属性の場合、下級魔法しか使えない。でも、“ 無属性体質 ” にはその不得意がないから・・・。
「つまり “ 無属性体質 ” の魔法使いは、中級魔法までなら全て使いこなせる。可能性がある?」
アンヌさんは深く頷き、俺の疑問符まじりの回答を肯定する。
「そういうこと。“ 無属性体質 ” とは、良く言えば “ 万能 ” 、悪く言えば “ 器用貧乏 ” なのさ。強力な上級魔法は使用できないが、あらゆる戦場で活躍できる才がある。得てして、戦場で必要とされるのは、そういった使い勝手がいい人材だ」
様々な戦場を見てきたアンヌさんが言うんだ。間違いないだろう。
「“ 無属性体質 ” の彼らが、魔法使いになった理由。それはつまり、最も効率よく出世できる道だったからということにすぎないんだよ」
なんてこった! 俺は騎士よりも魔法使いのほうが向いているらしい。
あれ? それなのに騎士になろうとしている俺は、もしやとんでもない大馬鹿野郎なのでは? いやいやいや、こう考えるんだジェフリー。
「なら、中級魔法も使えるようになればいいってことですね」
そうすれば、俺は史上初の魔法騎士。遠距離から近距離まで何でもこなす最強の騎士になれるんだ!




