170 反省。そして再起
俺は満身創痍になりながらも、どうにか11位。十傑第十席べルベッタ・セレスティへの挑戦権を得た。
しかし、今年の順位戦、俺はこれ以上順位を伸ばすことはなかった。あの白銀の狐に一度も勝つことができなかったからである。
正直、剣の技量は俺のほうが上だったように思う。これまでの試合経験を活かして、罠や戦略面にも色々と力を入れた。ただやはり、十傑相手に【魔装】だけでは足りない。それを今回、痛いほど思い知らされた。
考えてみれば、40位以降の上位陣にはかなり苦戦させられている。結局このレベルの相手になると、普通の剣では歯が立たず、【魔装】に頼りっぱなしになったのだ。
魔力消費の大きい大技ばかりでは、消耗が激しすぎて、長時間の戦闘が困難。この弱点を突かれると、一気に戦況が厳しくなってしまう。
これは、今後の課題として改善していく必要があるだろう。やっぱり、この学校でしっかりとした技能を身につけないとダメだ、ということがはっきりと分かった。
それから、彼女に敗れた理由がもう一つある。基礎体力の差だ。
まさか彼女が、身体強化もなしにあれほど動けるとは思っていなかった。なんとなく予想はしていたけれど、獣人族の身体能力は人間族のそれよりもはるかに高いらしい。
魔法で強化するにしても、土台の位置によってその効果は大きく変わってくる。特に彼女の場合は、もとの能力が圧倒的に高いのだろう。身体強化後の回避と攻撃が恐ろしくハイスピードだった。
残念ながら、今の俺ではあれに対応することは無理。もっと自分の基礎体力を向上させて、まともに打ち合えるように鍛えないといけない。
そんなわけで俺は今、授業を真面目に受けていた。
「サチウス先生!」
「どうした?」
「“ 属性晶 ” が爆発しました」
「なにっ!?」
【属性付与】を行使するためには、剣に魔力を込め、それを各属性魔法として変換する必要がある。といっても、この変換自体は剣に彫られた【属性紋】により自動的に行われるから、使用者は実質、魔力を込めるだけでいいそうだ。まあこれが一番難しいのだが・・・。
それはそれとして、自分の魔力と相性のいい属性、すなわち適正属性でないと【属性紋】は起動しないのだという。
で、この適正属性を確かめるための道具が “ 属性晶 ” という特殊な水晶玉だ。これに魔力を込めると、色が変化し、自分の適正が判るらしい。
ところがどっこい。なんの意地悪か、俺が魔力を込めると “ 属性晶 ” が爆発してしまう珍事が発生。これは一体どういうことだろうか?
俺が声を上げると、サチウス先生が慌てた様子で駆けてきた。
「おいジェフリー。一体何をやった?」
「えっと、普通に魔力を流しただけです」
散らばった破片を見た途端、先生の顔が早変わり。なんちゃらの叫びみたいな悲惨な表情だ。これは申し訳ない。
しばらく黙っていたサチウス先生は、俺の肩をがっしりと掴み、こう言ってきた。
「・・・今すぐ学校長室に行くぞ」
「えっ?」
「“ 属性晶 ” は非常に高価な備品。これを破損させたとなれば、学校長に事情を説明する必要がある。お前の口から頼むぞ」
「・・・・・」




