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転生騎士の英雄譚  作者: 青空
王立騎士学校
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閑話 十傑会合

クリス視点の閑話です。

ジェフ君を見舞ったボクは、その足でとある部屋へと向かった。今日は月に一度の “ 十傑会合 ” の日だからだ。


歴史を感じさせる重苦しい扉を開くと、そこにはすでに九人。これまた仰々しい黒塗りの長テーブルを囲んで座っていた。


「遅いぞクリス。さっさと席に着け」


一番奥に座るザッシュ君が、低い声で言ってくる。今日は少し機嫌が悪いらしい。


「まあまあ。ちょっと野暮用があったんだ。すぐに席に着くよ」


静寂の中、コツコツと響く自分の足音を聞きながら席に座るボク。ザッシュ君はざっと全員を見回すと話し始めた。


「お前らもすでに知っている通り、貴族派閥の五回生ルイス・ヴァレンティーノが、一回生ジェフリー・カーティスに敗れた。これは校内でもかなり話題になっているようだ」


これにマリウスとカフス君が反応する。


「まあジェフリー先輩ですからねぇ。ここまでは順当じゃないですかぁ?」


「さすがは我が師。治安の維持にも貢献して頂けるとは、なんとありがたい。今度きっちりとお礼に参らねば! さて、手土産は何が良いだろう?」


調子にのったカフス君を、すかさず(いさ)めるサーヤ嬢。


「それはやめてね。兄さん。()()ご迷惑をおかけすることになるから」


「そんな! じゃあ贈り物だけでも」


「や・め・て・ね?」


「は、はい・・・」


さすがに対応が速い。ただ、空気を凍らせるのはやめてほしいかな。その笑顔、ホント怖いよぅ。


「クリスの報告にあった特殊な技【魔装】。あれはかなりの脅威だな。このままいけば、高確率で11位までは上がってくるだろう。そのまま十傑入りを狙ってくるかもしれない」


これはザッシュ君の言う通りほぼ間違いないだろう。旧クラスのみんなも頑張るだろうけれど、あの強さはやっぱり生半可ではない。本気ではなかったとはいえ、ボクもやられちゃったしね。


「現在判明しているのは、剣、槍、糸、鎚の四種だね。ただどれも、かなり()()()()()()()()大技みたいだ。弱点を突くとしたら、そのへんが有効じゃないかな。真正面から殴り合うのは、かなりリスクがあるし」


ボクの言葉に第十席べルベッタ・セレスティが反応する。


「フッ。所詮一回生でしょう? まだまだ学校(ここ)での戦い方は分かっていないでしょうし、そこまでリスキーとは思えませんが」


鼻で笑った彼女に視線が集まった。


「あいつをナメるなッ!」


真っ先に口を開いたのはザッシュ君だ。その強い口調には、ボク以上の怒気がこもっているように感じられる。


「あいつの剣の技量はすでに超一級。俺たちと同格かそれ以上だと思え。俺たちに残された優位性(アドバンテージ)は、この学校で身につけた技能と個々で鍛え上げた身体能力くらいしかねぇ」


「それは・・・」


「ベルベッタ、あいつをそのへんの雑魚と一緒にするな。でないと、そのままお前の席はなくなるぞ。決して油断するな。全力で勝ちにいけ。分かったか?」


最後に鋭く睨みつけられたベルベッタ嬢。彼女は怯えるでもなく、狐尻尾をわさわさと動かし、なぜか恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべる。


「は、はい。ザッシュ様ぁ!」


ここ最近分かったことだが、この子、ザッシュにののし・・・話しかけられるのがたまらなく嬉しいらしい。これが恋なのか、ただ変態なだけなのかは微妙なところだが。ボクの見立てでは両方だろう。


とはいえ残念ながら、ザッシュ君の本命は変わらずサーヤ嬢なんだよね。キルトン家のご両親に認めてもらえるかは分からないけれど・・・。


などとあさっての方向に思考を飛ばしていたら、ルイス先輩の処遇やらなにやらについても話し終えてしまったようだ。ザッシュ君が会合の終わりを告げる。


「それじゃあ解散だ」


みんなが立ち上がってぞろぞろと退室していく中、ボクの背に声をかける人物がいた。


「クリス」


予想通り。ザッシュ君である。


「うん?」


ボクは小首を傾げるポーズで応えてみせる。ザッシュ君は頭をかきながら、少しきまり悪そうな様子で聞いてきた。


「・・・今日、あいつに会いにいったのか?」


「あいつってジェフ君のこと?」


「あ、ああ。それしかないだろ」


「アハハ。まあそっか。うん。会ってきたよ」


「なんか言ってたか? その、俺のこととか」


「ん~どうしよっかな~」


「もったいぶらずに教えろよ!」


おっと。下手に揶揄(からか)うと機嫌が急降下しそうだね。ここはジェフ君のモノマネでもしてみよっか。


「俺がケツを叩きに行く。だってさ」


「ん? なんだそれ。まあいい。お前も気ぃ引き締めておけよ。俺たちはまだ、あいつに負けるわけにはいかねぇんだ。あいつの目標、ライバルでいてやんねぇと。救われた恩を返すために」


「はいはい。分かっているよ」


もう耳にタコができそうなくらい聞いたセリフだ。そして、これもいつも通り。


「あいつが()()()()()になるために」

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