168 必中の鉄鎚
お読み頂きありがとうございます!
――攻勢に出て十五分。
「ちっ!」
何度か攻撃を繰り出すも、俺はルイスに致命的な一撃を与えられていなかった。やはり剣の技量が高く、受け流しも上手い。そう簡単にヒットはさせてくれないみたいだ。
そうして攻めあぐねている俺に、ヤツは顔をニヤつかせて言ってくる。
「おいおい。お得意の技は使わないのか?」
どうやら【魔装】のことも知っているらしい。わざわざ使うように挑発してくるということは、俺の魔力切れを狙っているのだろう。抜け目のないやつ。
「お前なんかには必要ないな。それに、地雷の場所も大体分かった」
俺は【空走】の使用をやめて地面に降りると、短剣を取り出して投げる。
――ドンッ!
思った通り、短剣を突き刺した地面が反応し、爆発した。攻撃を繰り返しながら、ヤツの動きを入念に観察し続けた結果である。
「お前の視線と体の動きが教えてくれたんだ。小細工はもう通じない」
剣を構えてジッと睨み据える俺。しかしルイスは、全く余裕の表情を崩さない。それどころか、鼻を鳴らして言い返してきた。
「ハッ! それで勝ったつもりか?」
「まだなにか・・・うっ!?」
「ようやく効いてきたか」
なんだ? 身体が急に重くなってきた。激しい眩暈と動悸が同時に襲ってくる。まるで熱にうかされているような、フワフワとした気持ちの悪い感覚だ。
「まさか・・・毒・・か?」
絶え絶えに呟く俺に、憎たらしいドヤ顔を見せるルイス。
「オレ様の付与属性は毒。それもかなりの猛毒だ」
「さっきの・・・」
「ああそうだ。足元を気にして回避が遅れただろ? あの時、剣に掠った時点でお前の負けは確定していたんだ。残念だったなぁ。だから俺が圧倒的に有利だって言ったんだよ」
く、苦しい! なんだこれ。目の前もだんだん暗くなってきた。
「はぁはぁはぁ」
「どうだ。苦しいだろ? そろそろ息もできなくなってきたんじゃないか?」
ダメだ。力が抜けていく。このまま倒れてしまいそうだ。
「倒れちまえよ。ラクになるぜ?」
「くっ!」
倒れるな! こんな奴に負けてたまるか。俺は、俺たちの誇りは、こんな奴に折られるわけにはいかないんだッ!!
「うぉおおおおおお!」
こうなったら一か八か。ありったけの魔力を注ぎ込み作り上げたのは、空を覆うような超巨大なハンマー。それを見上げたルイスが、あんぐりと口を開けて息を吐き出す。
「・・・・・・・はっ?」
「逃げ切れるものなら逃げてみろ。こいつでお前を叩き潰す!」
「おいおいおい! 嘘だろぉおおおおおッ?!」
絶叫する背中に向かって渾身の鉄鎚を振り下ろす俺。
「喰らえ。魔鎚【ミョルニル】!!」
必中の名を冠した巨大な鉄鎚は、ルイスの身体ごと地面を砕き割った。
「もう・・・ダメ・・・」
さすがに俺も限界だ。手足がピクリとも動かない。しだいに意識が薄れ、身体も地面に吸い寄せられる。まあいいか。賭けは俺の勝ちだ。




