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転生騎士の英雄譚  作者: 青空
王立騎士学校
180/210

162 売れ残りの奇跡

昼食を済ませたあとは服を見たり、装飾品を見たり。クルクルと踊るようにお店をまわっていく彼女は、実に楽しそうだった。


そうしてあっという間に訪れる夕暮れ時。楽しい時間は早く過ぎるっていうけれど、あれは本当らしい。俺はふところにしまった()()を渡す場所を探した。


「ねぇティナ。あそこのお菓子屋さんにも寄っていかない?」


「いいわね。ちょっと休憩していきましょうか」


意気揚々とお店に入っていった俺たちだったが、残念。時間が少し遅かったようだ。ショーケースには、売れ残りのフルーツケーキが一つだけしかなかった。


「えっと・・・」


逡巡(しゅんじゅん)する俺にティナが言う。


「これを貰いましょ」


「でも・・・」


「いいから! あ、店内で頂きます」


そのまま強引に飲み物まで注文してしまったマルティナさん。彼女は俺の手を引いて窓際の席まで歩いていく。


店員さんは俺たちを待たせることなくテーブルに品々を並べ、最後に「それではごゆっくり」とだけ言ってさがっていった。


「えっと、どうしよっか」


テーブルの真ん中に置かれた、可愛らしいフルーツケーキを見ながら聞いてみる。


「た、食べさせてあげても、い、いいわよ?」


「え?」


え? ちょっと待って。今なんて言った? 食べさせてあげるって言わなかった? いやいや、気のせいだよね? さすがに俺の妄想だよね?


「だからっ!」


夕日色に染まったティナは少し声を荒げると、呆けた俺の口にケーキに突っ込んでもう一度。


「食べさせてあげるって言ったのよ・・・・」


「・・・」


口の中に広がった甘酸っぱい香りが、俺の頭をとろけさせる。ボーっと火照った脳みそは、やがて俺の手を勝手に動かし、懐から小さな箱を取り出した。


「うん?」


「これをティナに貰ってほしい」


不思議そうな顔をしたティナに、スルリと言葉を返す俺の口。


「開けてもいい?」


「うん」


「・・・・・これって!?」


俺がプレゼントしたのは、小粒の青い宝石が輝くネックレス。これ、実はちょっと特殊な仕掛けがある品で、ティナが驚くのも無理はない。


「いちおうこの “ 魔宝石 ” には、俺の魔力が込めてある。今後、()()()()()()があった時はそれを使ってほしい」


そう。この宝石は魔力を溜めることができる特殊な石なのだ。さらに、石に(たくわ)えた魔力は誰でも使用可能で、本人以外でも自由に取り出すことができる。


「でも、この色。相当な魔力が込められているわよね?」


この宝石の面白いところは、魔力の蓄積量に応じて()から()に変色する性質。一度しか溜められないから、この色はこれっきり。使い切ったらただの赤い宝石になるだけだ。


「おかげでもうヘットヘトだよ。ハハハ。なんちゃって?」


いやホント。渇いた笑いしか出ないくらい、結構疲れてるんだよね実は。でもそんなの見せられないでしょ? 男として。


「本当に、いいの?」


「うん。君に貰ってほしいんだ」


「今の私には何も返せないわ」


「ううん。もう、いっぱい貰っているから」


「そんなこと!」


「フフッ! そんなことあるよ。それにほら、いつもくれる美味しいお菓子とか。ね?」


「・・・・・・ありがとうジェフリー。大切にするわ」


「うん」

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