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転生騎士の英雄譚  作者: 青空
王立騎士学校
177/210

159 クンクン……クンッ!?

試合が終わると、扉の前に見覚えのあるズボンが一本。綺麗に折りたたまれていた。


「ん? これは・・・」


よく見るとその上には、お菓子の入った袋とメッセージカードが添えてある。中にはこう書かれていた。


『さっきはごめん。勢いで殴っちゃったけど、本当は凄く感謝してる。これ、疲れてたら食べて。それから・・・あれは絶対に忘れなさい。いいわね! マルティナより』


お世辞にも貴族のような綺麗な字とは言えないけれど、丁寧に書かれた可愛らしい字がなんだかティナらしい。好きな子からのラブではないレターは、俺の疲れた心と体に謎の活力を与えてくれる。


「よしっ!」


元気を取り戻した俺は、さっさとズボンを穿くと、ティナのお菓子を頬張りながら教室へ戻ることにした。ちなみに、手に取ったズボンから少しだけ()()()()がしたのは誰にも内緒である。



――訓練場から教室までの帰り道。


何やら懇願する男の声と、それをあしらう女の声が聞こえてきた。


「俺と恋人になってください!」

「私、そういうの興味ないから」

「なら食事だけでも!」

「食堂で十分よ。それじゃ」


出歯亀(でばがめ)気分で覗いてみると、なんとそこには・・・。


「っ!?」


「えっと・・・えへへ・・こんなところで奇遇だねマルティナさん」


別クラスの男子生徒とそいつに告白されているティナがいた。


ば、バレた! そして気まずい! あんな場面見たくなったよ!!


いや、でも確かに。ティナはあの切れ目で勘違いされやすいけど、本当はとっても優しい女の子だし、容姿だってとても良い。(俺基準)


ときどき不器用なところもあるけれど、それだって愛嬌だ。異性にモテないほうがおかしい。むしろモテて当然だ。


そう考えてみると、ティナを狙っているライバルは結構多いのかもしれない。ああでも、今の様子を見るに本当に興味がなさそうというか、かまっていられないっていう雰囲気だったしな・・・。


脳内で独り言をかき回す俺に、ティナが聞いてくる。


「今の聞いてた?」


よく見れば、彼女は少し落ち込んだ顔をしていた。なぜ? そんな疑問が湧いてくるが、今は棚上げだ。ここはテキトーに誤魔化そう。


「えっと、最後だけ」


「本当に?」


思いのほかダメージを受けている俺。このよく分からない感情は一体なんだろう。嗚呼。どうか取り繕ったこの笑顔だけはバレませんように。理性に力を込めて願う。


「ホントホント。食事の誘いを断ったところしか見てないし。もしかして何かあった?」


「・・・ううん。なにも。それよりお菓子、食べてくれた?」


「ああうん。ありがとう。凄く美味しかったよ」


「フフフッ! やった」


ああダメだ。今そんな笑顔を見せられたら、蓋が壊れてしまいそうになる。


「ねぇティナ」


「うん?」


落ち着け俺。抑えるんだ!


「今度の休日なんだけど・・・」


「うん」


待て待て、それを言ってはいけない。やめろ!


「ちょっと付き合って」


ギリギリのところで押さえていたはずの感情が理性を殴り飛ばし、口をついて漏れ出てしまった。

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