153 そこに痺れる憧れるぅ!
寒いネタはスルーで…(苦笑)
そこからどんどん順位を伸ばしていった俺は、順位戦開始二週間でなんと311位まで一気に上がることができた。
その間、特に面白かったのはクラスメイトたちの反応。
それまでは遠巻きにしていたはずの連中が、俺がレオナルド相手に勝利を修めた途端、興奮した様子で駆け寄ってきたのだ。
「うぉーすげぇー!!」
「やっぱり主席はだてじゃなかったんだな!!」
「さっすが青鬼様のお気に入り。実力は本物なんですね」
彼らの変わり身のはやさに、ちょっとだけ驚いた俺だったが、悪い気分はせず。むしろ今まで交流できていなかったぶん、一緒に笑い合い、みんなの結果に一喜一憂するなど楽しい日々を過ごすことができた。
学校成績にもかかわってくる、というか成績と戦績がほぼ一緒と言っても過言ではない非常に重要なイベント。順位戦。少し不謹慎かもしれないが、俺にはこれが何かのお祭りのように思えてきてしまっていた。
そうして順調に順位を伸ばしていった俺。しかし、500位くらいを超えた辺りで、彼らの態度に変化が見られるようになる。
「はっ!? いきなり上位層かよ!」
「え、強すぎぃ。抱いて!」
「僕らとは次元が違ったみたいです・・ああ武神様・・・」
一体どうしたというのだろうか。これには俺も困惑するしかない。いやまあ、最初の奴はまだいい。だが、あとの二人。
そんなゴツイ図体で引っ付くな! 俺は男好きじゃない!
二つ名をつけて崇めるのもやめてくれ! 恥ずかしいじゃないか!
言っては悪いが、たかだか過半数を超えただけ。この程度、それほど驚かられることではないはずなのに。みんな大げさすぎるよ・・・。
そして極めつけはこの前、311位になったときのことである。
「俺を舎弟にしてください!!」
「俺を奴隷にしてください!!」
「僕を信者にしてください!!」
「・・・・・」
こいつら、鬱陶しいを通り越してもはや怖い!
平身低頭。頭を床に擦りつけるクラスメイトの姿を見て、言葉を失う俺。だが、その沈黙は長くは続かなかった。横から救世主が現れたのだ。
「あんたたち。いいかげん気持ち悪いわよ」
さすがは直球勝負のマルティナさん。俺の言えなかったことをさらりと言ってのけるその雄々しき姿。そこに痺れる憧れるぅ!
「舎弟に奴隷に果ては信者? バッカじゃないの。私たちは騎士を目指してここにいるんでしょ? そんなくだらないことを言っている暇があるなら、剣の腕を磨きなさい。知識を、知恵を身につけて戦術を磨きなさい。そうしないと、置いていかれるわよ」
冷たく言い放ったティナは、彼らを強く睨みつけたあと、最後にこう付け加える。
「私はいつまでも見上げてるつもりなんてない。絶対にそこに辿り着いてみせる」
きっと彼女ならすぐに追いついてくるだろう。俺はそう確信しているからこそ、振り返らずに走っていられるのだ。そんな信頼を込めた視線を送ると、彼女も力強い瞳で頷き返してきた。
やがてティナは剣を手に取り、教室を出ていく。どうやらこれから彼女の戦いが始まるらしい。
頑張れティナ!
俺は心の中で声援を送った。




