149 順位戦の概要
突っ立っていた男子生徒も大人しくなり、教室内の熱が冷めたところ。サチウス先生はカリカリと板書をはじめた。
「それでは今から具体的な説明をしていく。質問があればその都度、挙手して聞きなさい」
「「「はい!」」」
「まず開催期間についてだが、これについては例年通り、特に変更はない。明日からの一か月間となる。ただし、対戦相手および試合時刻、試合場所については学校側から指定させてもらう」
ふむ。つまり昔のような、野良試合みたいな決闘はダメってことか。たしか父さんの時代は、毎日ひたすら戦いをふっかけては順位を伸ばしていたんだよね。聞いた話だけど・・・。
「はいっ! サチウス先生!」
「なんだ?」
「その場合、学校側の都合で順位の高い人たちと試合できない。なんてことが起こり得ると思うのですが。そのあたりはどのように決定されるのでしょうか?」
おっ! なかなかいい質問をしてくれた。俺もちょっと気になったんだよね。でもこの発言って、学校側を信用していないみたいでちょっと気が引ける。
「うむ。すまないが、そこに関しては、教師陣による裁定としか言えないな。ただ、当たり前の話として、一試合目からいきなり上位の生徒と対戦させるような組み方はしない。毎試合の出来を見ての判断となるだろう」
つまるところ、対戦相手を圧倒すればするほど評価され、次にあたる相手は高ランクになるってこと。っていう解釈でいいのかな?
「試合は基本的に、自分よりも “ 順位の高い者 ” と “ 順位の低い者 ”、交互に行ってもらう。自分よりも順位の高い者に勝利した場合は、その者の順位に入り、自分よりも順位の低い者に敗北した場合には、順位を一つ下げる措置をとる。それ以外の場合は据え置き、もしくは他の生徒の順位変動により順位が下がると考えておきなさい」
サチウス先生は、説明がいまいち理解できていないであろう生徒を見て一つ頷くと、具体例を板書してくれた。
「うむ。例えば、350位の者と400位の者が戦い、後者が勝利したとする。この場合、この者は350位に昇格し、もともと350位だった者は順位を一つ下げられ、351位となる。逆に、350位の者と400位の者が戦い、前者が勝利したとする。この場合には、二者間での順位変動は起きないため、順位は据え置きとなる。が、自分より上位の者が順位変動を起こした場合には、この影響を受けて順位が下がることがある」
コツコツと叩いた黒板には、丁寧な図が描かれている。
「まあ、このように図にしてしまえば、非常にシンプルな構造だ。順位変動については期間中、毎日貼り出しを行うので、そこまで深く考える必要はないが、いちおう頭に入れておくといいだろう。それでは話を続ける」
そこから先は一般的なルール説明だった。
といっても実戦方式。基本的には何でもありの勝負ということでいいらしい。でもってその中で一番重要なのがこれ。
「今回は入学試験のときとは異なり、先に死亡したほうが負けとなる。お前たちの命、文字通り全身全霊を懸けて挑んでもらうことになるわけだが・・・・・そんなに心配そうな顔をするな。タネ明かしをしてしまうと、試合会場は全て魔法で作られた特殊な異空間になっている、というだけだ。ここで死亡しても現実に影響はないから安心しなさい」
生徒たちが全力でころ・・・競い合える仕掛けが万全ということである。
――次の日。
初の順位戦が行われる日。俺はなぜか森の中にいた。




