16 入門
お読み頂きありがとうございます。
ブクマしてくれた人がいて感動しちゃいました。
頑張りますのでよろしくお願いします。
門の前には衛兵が二人立っていた。
グレッグたちは冒険者証を首から外し、それを衛兵の一人に手渡す。
「・・・・グレッグにミレーヌにフェイだな。よし。通っていいぞ。」
3人は問題なく通れたようだ。
「ジェフ!せっかくだ、俺たちが街を案内してやるよ!門を入ってすぐ右にちょっとした広場があるからそこで待ってるぜ!」
グレッグはそう言うと街へ入っていった。
次は俺の番か。ちょっと緊張するな・・・
「お前は旅人か?」
「はい。」
「滞在期間は?」
「ここから王都行きの馬車に乗りたいのですが、いつ頃出ますか?」
「ああ、それなら3日後だな。」
「それじゃあ、3日で」
「お前さん、王都に行くつもりなのか?」
「はい。王都にある騎士予備校に通う予定なんです。」
「ああ、王都でギルバート様が運営しているって言う。そりゃあ大したもんだ。頑張れよ!」
「ありがとうございます。」
「それじゃあ、荷物検査をさせてくれるか?」
「はい。こちらになります。」
俺は背負っている荷物と腰に差していた剣を衛兵に預けた。
「「これは!?」」
衛兵たちは、驚いた顔でこちらを見たあと、慌てた様子で問いかけてきた。
「あなたのお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
「・・・ジェフリー・カーティスです。」
「「!!」」
「えと・・・あの・・・」
「こ、これは大変失礼致しました!あのカーティス家のご子息とは知らず・・・」
「す、すぐに馬車をお呼びしますので、少々こちらでお待ちください!」
俺は衛兵たちに促されるまま詰所のほうに連れていかれた。
周りの視線が痛い・・・犯罪者の気分だ。私は無実です。どうかそんな目で見ないでください。
詰所に到着するとそこには、先ほどの衛兵たちよりも上等そうな服を身に纏った厳つい感じのおっさんが立っており、俺が入室するなり、禿げあがった頭を深々下げてこう言った。
「この度は、部下が大変なご無礼を致し、誠に申し訳ございませんでした!責任はすべて部隊長であるこのグレゴリにございますれば、何卒部下たちには寛大なご処置を賜りたく!」
彼はここの部隊長だったのか。まあ、いかにもって感じだし。
それにあの頭、そうとう苦労しているんだろうな。かわいそうに・・・
っと現実逃避している場合じゃない。
突然貴族が徒歩で門を通ろうとしたもんだから、そうとう慌てているのだろう。
俺自身は大したことないのに・・・本当に申し訳ない・・・
「どうか、頭をお上げください。我が家は貴族といえど、所詮は一代限りの名誉騎士爵。それに私自身には大した権限などもございません。」
「ありがとうございます!!」
グレゴリ部隊長は若干潤んだ瞳でこちらを見てきた。
う~ん。やっぱりやりづらい・・・それに禿げ頭に潤んだ瞳は凶悪だ。
「ところで、先ほど馬車を用意するとのことでしたが?」
「はい。ご領主様よりジェフリー・カーティス様がご到着なされた際には、直ちに屋敷にお連れするようにとの命令を承っておりますゆえ。ここから馬車に乗って頂こうかと。」
どうやらこのままグレイシス辺境伯のもとへ直行するらしい。まあ、大きな街だし、屋敷を探して歩き回る手間が省けるのはいいかもしれない。
っと、グレッグたちを待たせているんだった。どうしようか。
ここで馬車に乗らずに徒歩で屋敷に向かったら、衛兵さんたちが後で怒られるかも・・・それはちょっとかわいそうだ。馬車に乗るのは断れないとしても、せめてグレッグたちに知らせておきたい。
「・・・あの。」
「はい。何でございましょうか?」
「実は、門のすぐ右にある広場で『銀の風』という冒険者パーティーを待たせておりまして。彼らには道中でもお世話になり、ウラノスの街の案内もお願いしていたのです。このままご領主さまのもとへ参じる前に挨拶だけでもさせて頂きたいのですが・・・」
「ああ、先ほどあの3人組ですね。承知しました。直ちに呼んで参ります。」
「・・・」
先ほど門の前にいた衛兵の一人がすぐさま駆けていった。
わざわざ連れてこなくてもいいのに・・・申し訳ない・・・
少しして、先ほどの衛兵が3人を連れて詰所に戻ってきた。
3人も困惑顔だ。すまん。
「ごめんね。3人とも。実はちょっと用事ができてしまってね。」
「ああ。大体の話はここに来る途中に聞かされたから大丈夫だ。ご領主様のところに挨拶しに行くんだろ?」
「とりあえず今日はこのままご領主様の屋敷に行くことにするよ。街の案内はまた今度お願いできる?」
「おう。いつでも案内してやるよ!時間ができたら冒険者ギルドの向かいにある『三日月亭』ってとこに来な。俺たちの借宿なんだ。」
「わかった。時間ができたら必ず行くよ。」
「それじゃあな。ジェフ!」
「またね。ジェフ君」
「ばいば~い。」
『銀の風』、やっぱりいい人たちだ。
王都行きの馬車が出るまでには3日あるし、その間に一度『三日月亭』に行ってみよう。街の案内はもちろんだけど、冒険者ギルドのほうも案内してもらいたい。
さすがに冒険者制度があることは知っていたけど、詳しいことは全く知らない。父さんもとくに詳しいことは教えてくれなかったしね。
ぜひとも冒険者ギルドで冒険者制度について詳しく教えてもらいたい。あわよくば冒険者登録とか・・・
などと考えていると馬車を用意していた衛兵が声をかけてきた。
「それではジェフリー様、参りましょうか。」
「はい。よろしくお願いします。」
とりあえず今はグレイシス辺境伯だ。
父さんの古馴染み・・・どんな人なんだろうか。