15 ガレオスの・・・
「ジェフ、あれを見てみろ!ウラノスの街を囲む外壁だ。」
「随分高いな・・・」
「そりゃあそうさ。ここウラノスはガレーリア王国の中でも辺境。魔物の素材や魔石を集めやすい反面、いつ魔物の群れが襲ってくるかわからないんだ。街の防衛は強固にしておく必要がある。」
「メリットとデメリットの両方があるわけか・・・」
「そういうこと。ところで、ジェフは、街は初めてなんだよな?」
「うん。実家から出たことがないからね。」
「それじゃあ、街への入り方を覚えておくといい。まず、俺たちみたいな冒険者や商人といった何かしらのギルドに所属している奴らは、こんな感じの身分証を支給されているから門番にこれを見せれば、簡単な持ち物確認程度でそのまま通してもらえる。旅人みたいな流れ者の場合には、500リアの移民税を門番に支払う必要がある。それから、貴族様の場合だが、これについては詳しくは分からん。大抵貴族様たちは家紋入りの馬車で移動するのが通例だから専用の出入り口を使っている。ちょうど左側にあるのがそれだ。徒歩で入場する時には、おそらく通常の門から入って、家紋の刻まれたものを見せる感じになると思うが・・・ジェフは持ってなさそうだな。」
うちは一代限りの名誉騎士爵、家紋なんてありはしないだろう。
父さんから貰った剣の柄の部分に施されている特殊な(?)模様が家紋かもしれないと思えなくもないが、どうだろうか・・・とりあえず門番に聞いてみる方向でいいか。
500リア払わなければならなかった場合は・・・
鉄貨=1リア
赤銅貨=10リア
青銅貨=100リア
銀貨=1000リア
小金貨=10000リア
大金貨=100000リア
だから、青銅貨が5枚か。
とそんなことを考えながらグレッグから入場の仕方を聞いていた時だった。
「おいおいグレッグぅ~。『銀の風』ともあろう方々がガキのおもりかよぉ~。ぎゃははは!」
「いよいよ冒険者引退じゃね?ぎゃははは!」
「こりゃあ傑作だな!! 腹痛ぇー!!」
如何にもチンピラっぽい3人組の男たちが大声で笑いながら歩いてきた。見たところそれほど強そうには見えないんだけど・・・
「あいつらは『ガレオスの牙』、いちおう私たちと同じCランクの冒険者パーティーよ。」
「いつもウチらに突っかかってくんの。チョーうざい。」
ミレーヌとフェイが小声で教えてくれる。
「はぁ~~~。めんどくせぇ」
グレッグも深い溜息をついて心底面倒くさそうな顔をしている。
これは時間がかかりそうだ。
「それで、俺たちに何の用だ?『ガレオスの牙』さんはお忙しいんだろ?ついこの間も俺たちが受けようとしていた依頼を横からかっさらっていったくらいだしなぁ~フッ」
「な、なにがおかしいんだよ。依頼の受注は早い者勝ちだろ?」
「そうだな。早い者勝ちだ。どんな依頼を受けようがそいつらの自由、それが冒険者だ。」
「なら文句はねぇだろ?へへ」
「ああ、文句はない。ただ、『ガレオスの牙』ともあろう方々が受けるには、ちっとばかし物足りなかったんじゃないかと思ってなぁ~。たかがラビットタートル10匹程度。『ガレオスの牙』さんにかかれば瞬殺だろ?フッ」
「あ、ああ。全くだ。あんな簡単な依頼じゃあ、準備運動にもならなかったぜ。へへへ」
「ところで、お前さんらいつもの盾と鎧はどうしたんだ?最近買い替えたばかりだったろ?こんなすぐに修理に出すとは思えないが・・・ニヤッ」
「きょ、今日は散歩なんだよ。たまには息抜きも必要だろ?」
「へ~。余裕そうで何よりだ。じゃあ、たまの息抜きを邪魔するわけにもいかないから俺たちは失礼させてもらっていいか?これでもそこそこ忙しいんだ。」
そう言うとグレッグは、さっさと門へ向かって歩き出した。
俺たちもそれに続いて歩き出す。
「ちょ、ちょっと待てよ!こら!」
後ろで何か叫んでいるが俺たちは一様に無視し、振り返らずに歩いた。
ちなみにラビットタートルはウサギのように飛び跳ねる亀で、非常に素早い魔物らしい。おまけに甲羅に籠ったまま弾丸のように突撃してくる狂暴なやつなのだそうだ。
ファングボアと同様にランクC以上の冒険者でないと依頼を受注できないが、それほど難しい相手ではないとのこと。
グレッグたちがそう言うってことは、大した魔物ではないのだろう。
・・・『ガレオスの糞』・・・やっぱり弱そうだ・・・
噛ませ犬感が足りないかなぁ・・・