133 功罪
そうして入学式を終えた俺たちは、本校舎の各教室へと移動する。
周りの新入生たちは先ほどのあれを演技だと思っているのか、ガヤガヤと騒ぎながら楽しげに歩いていた。
俺は一人、ザッシュの言った言葉の意味を考える。
「足手まといは仲間を殺す。騎士にとって弱さは罪だ」
これは自分自身に言い聞かせている言葉。そんな気がした。
ザッシュは今もなお、あの出来事を引きずっているようだ。
もしかしたら、戦場で仲間を置いて逃げたと、弱かったせいで足手まといになってしまったと、自らそう思い込んでいるのかもしれない。あいつはその罪の意識から、今も抜け出せないでいるのだろう。
そうではないのに。あいつがあの場にいてくれたから、頼れる仲間が知らせに走ってくれたから、俺たちは全力で戦えた。敵うはずのなかった強敵を打ち倒すことができたんだ。
あいつが一秒でも早くと一心不乱に駆けてくれたからこそ、俺たちは助かった。騎士団が来なければ、俺たちは石像のまま崩れ落ち、朽ちていたはずなのだから。
あれが “ 罪 ” だって? ふざけんなっ!
あれはザッシュの “ 功 ” だ。むしろ感謝しなきゃいけないのは俺たちのほうなのに。なんであんな風になっちまったんだよっ!
しかし、今の俺ではこの言葉を届けることは難しい。あいつは学校の頂点。俺は新入生主席とはいっても校内で数えれば現在最下層。残念ながら、俺はあいつに挑む権利さえ持っていない。
「あいつに挑むにはまず校内順位を・・・」
「どうしたのよっ!」
「つっ!?」
後ろから突然襲ってきた強い衝撃。俺は驚いた拍子に咽そうになる。振り向けば見覚えのある女生徒が二人立っていた。
「ティナ? それにロザリーも。いきなりどうしたの?」
「どうしたのはこっちのセリフよ。一人でブツブツ言いながら歩いて・・し、心配になるじゃない・・・」
尻すぼみに呟くティナ。くっ可愛い!
「ハハハ。ごめんね。ちょっと考え事してて・・・」
「はぁ。どうせザッシュのことでしょ?」
「えっと・・・」
「分かるわよ。なんかあいつ、空気が怖かったもの」
どうやらティナも気が付いていたらしい。俺は先ほど考えていたことを二人に語った。
「バカよね。あのとき残ったのは私たちの意思。それに、誰が行くにせよ知らせる役割は必要だった。あの場にはあの女もいたけど確実じゃない。二人一組のほうが確実性があったんだから、あれは適切な判断だったはずよ」
「そうだね。結果的にはああなっちゃったけど、あれは二人で無茶しすぎたせいもあるし。ザッシュが気に病む必要はないはずなんだ。むしろ俺たちが無事なのはあいつのおかげなんだから感謝しないと」
「それ、でも・・・」
「うん。ロザリーの言う通り。あいつは、それでも気にしちゃういいヤツなんだ。俺たちの自慢の仲間なんだよ」
だから俺は
「全力であいつを取り戻す!!」




