131 恥ずかしがり屋の女の子
大講堂に入った俺は指示された席に座る。
このブロックはAクラスの集合場所のようだ。周りに座る人たちにも、なかなか強そうなのがいるし、見覚えのあるサルもいた。やっぱりあいつも成績上位者か。
Aクラスにいるってことは、それだけで学年順位五十番以上ってことだもんね。
そんなことを考えながらキョロキョロとしていると、大講堂に入って来るティナが見えた。その後ろに続く女子生徒は、試験場であざをつくっていた女の子。どうやらあの日以来、二人は仲良くなったらしい。
「やあティナ。制服いい感じだね」
「あんたも同じの着てるじゃない」
「ほら、着る人によっても印象って変わるだろう? ティナが着ると、なんかカッコイイなって」
素直に褒めるとティナは喜ぶ。これはもう完全に把握済みだ。
「ひぅっ!? こ、こんなところでふざけないでっ! は、恥ずかしいじゃない」
「アハハッ! まあまあ。あ、そういえば来る途中でカフスに会ったんだ。クリスと同じでずいぶんと大人びててさ。カッコよくなってた。まあ、会った瞬間は顔をグシャグシャに汚していたけどね」
「フフッ! カフスらしいわね」
「うん。それから、色々と学校のことも聞かせてもらったんだ」
俺は、朝の出来事や道中でカフスに聞いた話を一通りティナに教える。
十傑のことを話したら驚くかと思ったけど、意外にそれほどでもなかった。むしろ、神妙に頷きながら何かを真剣に考えている様子だったけど、どうかしたのかな?
ちなみにその間、後ろの女の子はただただ静かに俯いているだけだった。つまらない話をしてしまって申し訳ない・・・って、こんな話じゃ混ざれないか。
「ところでティナ。そちらは?」
「うん? ああ、この子はロザリー。前に試験会場で会ったでしょ? あの子よ」
ティナは思い出したようにそう言って、ロザリーの背中を強く押す。そうして、俺の前に無理やり投げ出された少女は、蚊の鳴くような細い声で自己紹介をはじめた。
「ろ、ロザリー・オストワルトと申します。先日は本当にあ、ありがとうございました」
「ううん。あざが残らなくて良かった。俺はジェフリー・カーティス。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
しかし彼女は、とてつもなく恥ずかしがり屋な性分らしい。
早口で言い終えると、すぐさま顔を隠してティナの背中に引っ付いてしまったのだ。俺の差し出した手にも全く気づいていなかったみたい。
前髪を長く伸ばしているところから想像するに、かなり気弱な女の子なのかもしれない。それでも、ティナと一緒にこちらへ来たということは、彼女もAクラス。確かな実力者なのだろう。
正直、強そうにも見えないし、若干違和感が残るけど。剣を握ったらいきなり性格が変わるとか? いやまさかな。ハハハ
まあそれはともかく
「そろそろ始まるみたいだし。席に着こうか」
俺は二人に声をかけて着席を促した。




