128 稲妻の貴公子
受け止めた剣に重みがかかる。
「ぇぇええええっ!?」
さっきまでのドヤ顔はどこへやら、クリスが驚愕の声を上げた。目玉が飛び出しそうな、へんてこな顔が面白すぎる。
「はぁああ!!」
「くぅっ!」
俺は体重の載ったクリスの斬撃をさらりと弾き返し、これ以上ないくらいのドヤ顔をつくって言ってやった。
「勝ち目がなんだって?」
目を丸くしたクリスが突然笑い出し、輝く瞳で俺を見る。実に楽しそうないい笑顔だ。
「・・・・アハハッ! これは驚いた。やっぱりジェフ君は規格外だねっ!」
「いやいや、これはまだまだ序の口だ」
「アハハッ! なら、こっちも全力でいかせてもらうよ」
言った途端、クリスの周りの温度が急上昇。
先ほどまでの淡い光はそのエネルギーを増し、やがて稲妻の輝きを放ちはじめた。空気をも切り裂く雷が、轟音を響かせて俺のほうに向かってくる。
「はぁああ!」
「ぉおおお!!」
エネルギーが強大すぎるせいだろうか。クリスの剣を受け止めた瞬間、電撃が空を走って俺に襲い掛かってきた。嘘だろっ!?
「いっ!?」
俺は咄嗟に後方へ飛び、大きく距離をとる。辛うじて回避はできたが、どうにも右腕をかすめてしまったらしい。痺れがひどく、いまいち言うことを聞いてくれなくなってしまった。
「ちっ」
どうしよう。あまり近づきすぎると完全に感電してアウト。魔力の残量もかなり少なく、魔装ももって三分くらいだろう。長くは打ち合えないうえ、使えるのは利き腕じゃない左腕のみ。はっきり言って分が悪い。
う~む。それならいっそ、一か八かの勝負に出るとしようか。これでクリスを倒せなければジリ貧、どっちみち俺の負けだ。
「うぉおおおお!!」
腹をくくった俺は、勢いよくクリスに突っ込み、剣を振りぬく。
「【空走】!」
と見せかけてそれを手放し、風魔法で素早く後方へと飛んだ。
前のめりになりそうな身体を無理やり反らしながら、振り下ろされる雷撃をギリギリでかわす俺。目の前のクリスは、剣を振り下ろした直後で肩ががら空きの状態。
ここしかないっ!
「魔槍【グングニル】!」
鋭く伸ばした魔力の槍。俺はそいつを、クリスの肩めがけて投げつけた。
「んぐっ!?」
肩口に突き刺さった激しい痛みにクリスが呻く。彼はそのまま剣を落として後ろに転がるが、惜しいことに追撃ができない。魔力も体力ももう限界だからだ。
「はぁはぁ・・・どうだクリス」
俺は肩で息をしながらも、それを悟らるぬように余裕の表情をつくり、自ら回復中のクリスに降参を促す。正直これで折れてくれないと、色々と厳しいんだよな・・・。
そんな弱気な俺を見透かしたのか、それとも単に向こうも限界だっただけなのかは分からない。ただ、クリスは額の汗を拭いながら息を整えると、笑いながらこう言った。
「はぁはぁ・・ふぅ。そうだね。今回はボクの負け、かな」




