127 クリスの成長
お読み頂きありがとうございます!
作中の “ 雷化 ” は “ ライカ ” とお読みください。
クリスは剣を中段に構えたまま、俺は腰の柄を握ったまま。
試合開始からすでに五分。こうして互いに睨み合うのみで、俺たちはまだ一度も刃を交わしていない。理由は単純。つけ入る隙が見当たらないからだ。
とはいえ、このまま睨み合っていても仕方ないんだよな・・・。
というわけで
「はぁああ!【風斬】!!」
俺はクリスの懐へと潜り込み、あえて大技を繰り出す。
「ちっ」
が、やはりダメだった。クリスは剣の角度をうまく調整することで、俺の攻撃をあっさりといなしたのだ。
普通は反応も難しい速度のはずなんだけど、クリスには剣の軌道がしっかりと見えているらしい。このレベルの相手はさすがに厄介だな。
「ごめんね。それはさっき観させてもらったんだ。ボクには通じないよ」
涼しい顔のクリス。ずいぶんと余裕がありそうだ。
「ふ~ん。じゃあこれはどうだ?」
俺が仕掛けたのは息をつく暇もない猛攻。とにかく攻める角度や速度を細かく調整し、クリスの苦手な部分を探っていく作戦だ。
今の俺なら、サルのように身体強化を細かく使用しつつ、風魔法による急加速を挟むことで、前より多彩な緩急を作り出せる。さすがのクリスでも、これならうまく崩せるかもしれない。
――三十分後。
俺はクリスに一撃も入れられていなかった。もちろん、クリスの攻撃も一度も喰らっていないので、おあいこと言えばそうなのだが・・・ああ悔しいっ!
「どうだい。崩せないでしょ?」
「ああ。難しそうだな」
「それにほら、自分の剣を見てごらん」
「うん?・・・・はぁっ!?」
驚いた。いつの間にか、俺の剣は所々小さく欠けており、鋭かった先端も丸みを帯びてしまっていたのだ。
このまま続ければ、ヒビが剣身全体に広がり砕け散ってしまうだろう。正直、今すぐ折れても不思議じゃない。それくらいのダメージだ。
「気がついた? キミの剣はもうボロボロ。さすがのジェフ君でも、このまま戦っても勝ち目はないだろう?」
クリスがそんな俺の様子を見て、静かに言ってくる。どこか誇らしげなその顔が、なぜだか凄く憎たらしい。俺はかまわずクリスへと攻撃を仕掛けることにした。
「はぁああ!!」
「ふんっ!」
――パキンッ!
「ちっ!」
しかし、クリスの一振りで俺の剣は粉々。あっさりと根をあげて砕け散ってしまう。
追撃を避けるため一度大きめに距離をとる俺だったが、クリスは追って来ず、その場でカラクリを明かした。
「これが【纏い】さ。まだまだ技術的にはお粗末なものだけれど、普通の剣くらいなら叩き割るくらいのことは出来る。そして・・・・」
さらに、剣を中段に構えながら何やら呪文を唱える。
「【雷化】!」
「うおっ!?」
すると、クリスの握る剣が淡く光り、周りでパチパチと火花が散りはじめる。
「これが “ 属性付与 ”さ。ボクの適正は雷属性でね。出力は魔力によって調整しているんだ。だから安心してほしい。これを喰らってもちょっと痺れるくらいだよっ!」
解説しながら襲い掛かって来るクリス。
嘘つくなっ! 物凄く痛そうだぞっ!!
俺は迫って来るクリスを見据え、魔力を集中させる。
だったらこっちは
「魔剣【カラドボルグ】」
魔装で勝負だっ!
ここでの【カラドボルグ】は “ ひたすらに硬い剣 ” の意味です。




