126 修羅
俺とクリスは、困惑顔の試験官たちをよそに盛り上がっていた。
「実はジェフ君が無事に回復したことは知っていたんだ。昔のクラスメイトたちもみんな、情報としては知っているんじゃないかな」
「だったら顔くらい見せてくれればいいのに」
「まあ、それもそうなんだけど・・・あれから色々あってね。みんな必死なんだよ」
少し苦笑気味なクリス。一体何があったんだ?
「二人が目覚めるまでの三年間、ボクたちはただひたすら強くなることだけを考えてきた。もう仲間を失う苦しみなんて味わいたくない。それだけを胸にここまでやってきたんだ」
俺たちが瀕死の傷を負ったせいで、みんなにも迷惑をかけてしまったらしい。石化した俺たちを見たときの精神的負荷は相当なものだったようだ。
「ごめん」
頭を下げる俺に、クリスは首を振って答えた。
「ううん。それはいいんだ。二人が無事でいてくれただけで十分さ。あの出来事があったからこそ、ボクたちもここまで成長することができたと思うしね。二人には感謝しかないよ」
それから少しバツの悪そうな表情でこう続ける。
「ただ、実はジェフ君たちにちょっと言いづらいことがあって・・・・」
「うん?」
「ボクらの世代のことなんだけど・・・その、ちょっと特殊というか、学校内で妙に恐れられるようになっていてね。気がついたら “ 修羅の世代 ” なんて呼ばれてて・・・」
「修羅ぁ?」
「朝から晩まで剣を振りまわす訓練の鬼、学内を牛耳る最恐集団、なんて言う人もいるかな。まあ、あながち間違いでもないし、否定できないのがちょっとあれだけど・・・」
「へ、へ~」
いやいやお前ら何してんのっ?!
寝て起きたら、元クラスメイトたちが学校を牛耳る不良(?)集団になってたとか怖いわ!
「そのへんは追々知ることになるだろうから、お楽しみに?」
なんで疑問形なんだよ。そんなの楽しめねぇよ。
一瞬返す言葉を失う俺に、クリスは突然真剣な眼差しを向けてきた。
先ほどまで弛緩していた空気が一変。緊迫したものとなる。
「だから今は全力で戦おう。負けないよジェフ君。ボクはすでにキミを追い越した」
鋭い殺気を叩きつけてくるクリス。濃密で一分の隙もない。三年前とはまるで違う親友の姿がそこにはあった。
「ハハッ! 俺も負けないぜ!」
それがなぜだか凄く嬉しくて、俺は思わずこぼれた笑みに全力の殺気をのせる。
「フフッ!」
「ハハハッ!」
俺たちは部屋の中央で向かい合い、笑い合う。
お互いの力量は何となくわかる。おそらく剣の技量だけならほぼ互角くらいだろう。すいぶんと様変わりしたもんだ。
「サチウス先生。号令をお願いしますっ!」
クリスが間に立つ試験官に声をかける。その声により、ようやく金縛りから脱出した試験官が俺たちに確認してきた。
「あ、ああ。よし準備はいいな?」
「「はい!」」
「これより第二戦。受験生対在校生の試合を開始する。この試合では現時点での実力を視るのが目的だ。受験生は全力で当たりなさい」
「はい!」
「それでは互いに礼。試合開始ぃいい!!」
髪の薄いサチウス先生の大声が室内に響き渡った。




