14 道中の話
道中、俺はファングボアを魔石を破壊せずに倒す方法を考えていた。
解体していて気づいたことだが、魔物は生きている状態だと全身に魔力を行き渡らせているせいか、皮から筋肉、骨に至るまで全身が鎧のように硬くなっているようだ。
その証拠に戦闘中はあれほど硬かったファングボアが、解体時には難なく切り分けられた。
それからもう一つ、骨格を観察した結果、顎下から頭蓋骨までは空洞になっており、骨自体も薄かった。
正面から脳を破壊することは難しいだろうが、顎下を貫通させ頭蓋まで到達させられれば、脳を破壊し、魔石を傷つけずに倒しきることが可能かもしれない。
と、そこまで考えて、一つ疑問が湧いてきた。
グレッグたちはどうやってファングボアを倒しているのだろうか?
「グレッグ、ちょっと聞いてもいい?」
「なんだ?」
「グレッグたちはどうやって、魔石を傷つけずにファングボアを倒しているの?」
「ん?ああ、俺たちの場合はそれぞれ役割分担があるんだ。」
「まず、ウチが獲物を惹き付けるじゃん?」
「そこに身体強化の魔法を使った俺が斬りつけて足止めをする。」
「その間に私がファングボアの耳元に【音爆弾】を炸裂させれば。」
「ファングボアが気絶するって寸法だ。あとは美味しく頂くだけってな。ハッハッハ」
「ファングボアが気絶?」
「そうそう。ファングボアは耳がいいんだ。だから耳元で大音量を鳴らすと脳が麻痺して気絶する。結構有名な話だが、知らないか?」
「ん~全く。・・・それから【音爆弾】ってなに?」
「【音爆弾】っていうのは、空気の振動を瞬間的に増幅することで大音量を生み出す魔法よ。実は中級魔法だから結構難しいけれどね。」
「なるほど。そんな倒し方があるのか・・・」
「まあ、口で言うほど簡単じゃないけどな。上手く惹きつけて足止めするのも、【音爆弾】をファングボアの耳に直撃させるのも。」
なるほど。ファングボアの弱点は耳だったのか。これはいいことを聞いた。まあ、現状俺が使える戦法ではなさそうだけれど、覚えていて損はない。
【音爆弾】ほどではないにしてもそこそこの大音量を出せれば、多少の効果は期待できそうだし。
そんな話をしていたら、ちょうどよいところにファングボアが現れた。
「ジェフ!あれは俺たち3人で倒すから手出ししないでくれ!」
そう言うとグレッグたちはファングボア目掛けて走り出した。
3人の連携を見るいい機会だ。さっき言っていた戦法をよく見ておこう。
・・・数十分後。
「いや~今回はかなりうまくいったな。ここまで速く仕留めたのは初めてじゃないか?」
「グレッグの足止めが上手かったわよね。おかげで一度で【音爆弾】をたたき込めたわ。」
「実はジェフの受け流しを見よう見まねでやってみたんだ。いつもは力押しでガンガン斬りかかっていくだけだったが、上手く受け流せれば相手の体勢を崩しつつ足止めできるかもしれないと思ってな。まあ、まだまだ勢いが殺せていないせいか体への負担が大きい感じだけど、うまくすればそうとう楽に戦えそうだ。」
「魔石も確保できたし、ウラノスに帰ったらパーッとやろうよ!」
そんな感じで、俺たちは交流を深めつつウラノスを目指し歩き続けた。
ミレーヌさんに冒険中に便利な水の魔法や火の魔法を見せてもらったり、グレッグの身体強化魔法を見せてもらったり、すごく楽しかった。
中でも一番驚いたのは、フェイが物凄い料理上手であったことだ。実は料理屋の娘なんじゃないかと思ったのは内緒だ。とにかくうまかった。
そうしてウラノスに到着したのは3日後のことである。