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転生騎士の英雄譚  作者: 青空
初めての街
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13 銀の風

俺たちはしばらく無言で解体作業を行った。3人はさすがに慣れているのか、素早く皮を剥ぎ取り、肉を切り分けていった。俺はそれを部位ごとに並べていく。


1時間程度で作業を終えると、魔法使いミレーヌさんが革袋のようなものを持ってきた。解体したばかりの素材に手を触れ、【収納】と唱える。


次の瞬間、俺は目を瞠った。


そこにあったはずの素材が次々と革袋に吸い込まれて消えたのだ!


「・・・それは?」


興味が抑えきれず、つい聞いてしまった。ミレーヌさんは俺が驚愕している様子をみると、軽く微笑んで答えてくれた。


「これは収納袋といって、触れたものをその形状にかかわらず出し入れできる魔道具よ。ただ、収納できる容量は使用者の魔力量に依存するから無限ってわけではないの。私の場合、ファングボア2頭分くらいかしら。」


ミレーヌさんが言うには収納袋という魔道具は非常に高価だが、使い勝手がよく、そこそこお金持ちな行商人や高ランク冒険者ならばよく持っているという。


使い方は簡単で、収納したいものに触れながら【収納】と唱えると袋に入れることができ、逆に取り出す場合には、取り出したいものを思い浮かべながら【解放】と唱えるだけらしい。


そんなやり取りをしていると、片付けを終えたグレッグとフェイがやってきた。


グレッグは俺のところまでやってくると、突然頭を下げた。


「改めて、先ほどは巻き込んでしまって申し訳なかった。その上、解体まで手伝わせてしまって。」


「俺の方こそ、勝手に獲物を傷つけた上に魔石まで破壊してしまって。申し訳ありませんでした。」


「俺はグレッグ。Cランク冒険者パーティー『銀の風』のリーダーで剣士だ。よろしく。」


グレッグの身長は180cmくらいで、なかなかがっしりとした体形をしている。髪は銀色の短髪で、彫が深く、男前な顔つきだ。銀色の鎧を身に纏い、腰に一振りの剣を刺しているため、一目で剣士だとわかる。


「私はミレーヌ。同じく『銀の風』のメンバーで魔法使いよ。よろしくね。」


ミレーヌさんは金髪美女である。顔立ちはもちろん、スタイルもよく、大人の女性という感じがする。こちらもローブにハットと、いかにも魔法使いの装いだ。


「ウチはフェイ。『銀の風』でレンジャー兼弓使いをしてる。で、あんたは?」


「俺はジェフリー・カーティスといいます。今は騎士学校を目指して王都に移動中で、この先の街ウラノスに立ち寄る予定だったんです。実はさっきのイノシシ、ファングボアを魔物とは思っていなくて。道中でも何度か遭遇したので、この辺に生息する大型のイノシシかと勘違いしていました。勝手なことをして申し訳ありませんでした。」


「「「・・・・!!」」」


3人は俺の名前を聞くと、一様に顔を青くした。


そのまま片膝をついて頭を深く下げた。


グレッグが鬼気迫る声音で言う。


「た、大変なご無礼を致し、誠に申し訳ございませんでした!お貴族様とはつゆ知らず、叱咤までしてしまいました!この者にはきつく言い聞かせますので、何卒ご容赦賜りたく!お怒り冷めやらぬようでございましたら、我が命をもって謝罪させて頂きます!」


・・・ああ、なるほど。3人はどうやら俺をどこかのお偉い貴族子息だと勘違いしているようだ。


質の悪い貴族だと、不敬罪で即処刑にすることもできるらしいからね。


この国では平民は名が一つで、貴族の場合は名が二つとなる。ちなみに王族は名が三つだ。


俺は今ジェフリー・カーティスと名乗ってしまった。


自分で『私は貴族です。お前らをここで処刑することもできますよ!』と宣言してしまったようなものだ。


「そこまでの謝罪は必要ありません。貴族といっても、うちは一代限りの名誉騎士爵です。それに貴族なのは父であって、俺ではありませんから。そこまでかしこまる必要はありませんよ。」


「「「ありがとうございます!!」」」


う~ん、やりづらい。できればラフな感じで話したいんだが・・・


「・・・普通に話さない?」


そう提案すると、


「・・・・・・・・・ああ、わかったよ。みんなもそれでいいか?」


グレッグは逡巡の末、了承してくれた。


「はい。」


「りょーかい!」


次いで二人も了承してくれる。


一通り自己紹介を終えたところで、グレッグが質問してきた。


「ところで、ジェフリー」


「あ、ジェフでいいよ」


「じゃあ、ジェフ。騎士学校を目指して王都に移動中ってことは、これから騎士学校の入学試験を受けにいくのか?」


「さっきは騎士学校を目指してって言ったけど、実際にはまだ試験を受けられる年齢じゃないんだ。正確にはあと2年、猶予がある。」


「へ~。・・・ん?・・・ってことは、ジェフはまだ10歳なのか?!」


「うん。」


「さすがに嘘だろ? へへへ・・・」


「本当だよ。」


「お前、すでに俺より強ぇぞ・・・泣」


「「「・・・」」」


グレッグが泣いている。男泣きだ。イケメンは泣いていても絵になるな。


などとどうでもいいことを思って眺めていると今度はフェイが質問を引き継いだ。


「じゃあなんでジェフは王都に向かってるわけ?騎士学校の試験までどうするの?」


「ああ。実は王都にある騎士予備校に通う予定なんだ。」


「騎士予備校?」


「うん。騎士になるには剣の強さ以外にも、知識や教養、礼儀作法を覚える必要があるんだ。俺は騎士予備校でそれを学びたいと思ってね。それと、同年代の騎士候補生たちとも仲良くなれるかなって。今までずっと実家から出たことがなくて、同年代の知り合いがいないんだ。だから少しワクワクしてる。」


「ふ~ん。実家から出たことなかったから魔物も見たことなかったってわけ?」


「・・・うん。この旅で初めて見たし、初めて戦った。いちおう書物で読んだことはあったんだけど、もっとすごいのを想像していたし・・・」


「そ、ならしかたない。ウチが許したげる。」


「ありがと。」


「そういえば、3人は依頼でここへ?」


「そうよ。私たちはウラノスを拠点に活動しているパーティーなの。今回はこの辺に現れたファングボアの討伐依頼を受けてきたのよ。」


「魔物の討伐依頼の場合は、討伐証明の部位を持ち帰れば完了なんだけど。魔石を回収できた場合には報酬が倍になるんだよね~。まあ、正確には魔石を買い取ってくれるってだけなんだけど。」


「まあ、魔石は運が良ければって感じだったからジェフがそこまで気に病む必要もないんだぞ。依頼はすでに達成したしな。あとはウラノスに帰ってギルドに報告するだけだ。」


3人はそう言うと荷物をまとめてウラノス方面へ歩き出した。


高額な請求をされなくてよかった。旅費がなくなるところだった・・・3人は優しいな。


そんなことを思っていると、おもむろにグレッグが振り返って言う。


「ジェフ!せっかくだ、ウラノスまで一緒に行かないか?」


それは面白そうだ。ぜひご一緒させてほしい。


「うん!よろしく。」


こうして俺たちは一緒にウラノスを目指すことになった。

冒険者ランクなどについては冒険者ギルドで説明される予定です。

その他設定についても追々まとめようかと・・・

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