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転生騎士の英雄譚  作者: 青空
初めての街
12/210

12 冒険者に遭遇

それから3日間何度かイノシシに遭遇したが、毛皮と牙を剥ぎ取りつつ旅を続けた。


あのイノシシはこの辺によく生息している種類のようだ。食べてみて分かったが、あのイノシシは普通のイノシシと比べてとても美味しい。あれだけ美味しければ、肉もお金になるかもしれない。


まあ、あんなに大きくては運べないが・・・


しばらく街道を歩いているとどこからか金属音が聞こえた。


「・・・キンッキンッキンッ」


「・・・!・・・・!!」


時折叫び声と爆発音も聞こえてくる。どうやら戦闘音のようだ。


他人の戦闘を見るのも勉強になりそうだし、見に行ってみよう!


そう思っていたら、街道から少し離れた森の中からいつものイノシシと人が一人飛び出してくるのが見えた。


さらにそのあとを追うように剣や杖を持った人たちが飛び出してきた。


なるほど。最初の一人がイノシシを開けた場所までおびき出し、剣や魔法で攻撃する作戦のようだ。


杖を持った人が一瞬光ったかと思うと、次の瞬間、杖の先から炎が飛び出した。


あれが魔法か。初めて見るな。


そしてちょっとカッコイイ・・・


今度は剣士が身体を光らせ、一気にイノシシへ飛び掛かった。凄まじい身体能力だ。もしかして身体強化の魔法だろうか。


カッコイイ・・・


「!?」


ぼーっと眺めている俺に気づいたのか、先頭の一人がこちらに何か叫んでいる。


「・・・・・ろ!!・・は・く・・・にげろ!!・・・早く逃げろ!!」


あれだけの攻撃を受けてもイノシシは走り続け、こちらに向かって来ている。


たしかにこのままだと巻き込まれそうだが、逃げて無駄に体力を消耗するのも、この後の旅程を考えると避けたい。


狩りをしている彼らには悪いが、ここは俺も参加させてもらおう。なあに、手早く終わらせて獲物を譲れば文句は言われないだろう。


俺は剣を構え、迎撃態勢に入った。


「・・・ッブッブモオオオオオオオ!!」


イノシシはそのまま俺に突っ込んでくる。


ここだ!


いつものように無様に腹を晒すイノシシを一突きで仕留めた。


「・・・ふぅ。こんなもんかな。」


と一息ついている俺のところへ先ほど先頭を走っていた一人がやってきた。


凄い形相でこちらを睨みつけている。

そんなに悪いことしちゃったか?

たかがイノシシ1頭だぞ?


「おい!お前!何してくれてんだこの野郎!」


・・・よく見たら、女の子・・・かな?


声も女の子っぽいし。髪は若葉のような淡い緑色で長い。目はやや吊り目だが、鼻はすっと伸びていてバランスがいい。


胸は・・・・・うん。よそう。


全体的に背が低く、線は細いが引き締まった筋肉としなやかな足を持っているようだし、さっきの走りは相当なものだった。おそらくこの娘は身軽に動き回るレンジャー職だろう。


「おい!聞いてんのか!話聞けこの野郎!」


「あ、ああ。申し訳ありませんでした。どうか許してください!悪気はなかったんです。」


こういうときはとりあえず謝っておこう。


なぜ怒っているのかはわからないが・・・


「ホントどうしてくれんだよ!せっかく苦労してファングボアをここまで追い込んだっていうのに!あんな殺し方したら魔石が粉々じゃねーか!まあ、肉やら毛皮もそこそこで売れるけど、一番高価な魔石が粉々じゃ報酬が半減しちまうんだぞ!」


なるほど。あのイノシシはファングボア、魔物だったらしい。


この世界に魔物は多種多様に生息するが、総じてその体内に魔力を宿している。その核となるのが魔石で、普通の動物の心臓にあたる部分がこれである。


一説によると動物がなんらかの理由で魔力を体内に溜め込んだ結果、心臓が魔石化し、身体ごと変質して魔物になるらしい。


まあ、実際にはドラゴンのような元の動物がわからないような魔物もいるから一概には言えないらしいが。


それはさておき、確かにこの()が言うように魔石は高価で取引される、らしい。


伝聞でしか聞いたことがないから詳しいことはわからないけれど、魔石は魔道具を使用するための燃料となるため、街ではよく取引されるのだそうだ。


魔道具は魔力をエネルギーとして動かすことができるため、人が直接魔力を供給して動かすこともできるが、そんなことをしていては魔力枯渇で倒れてしまう。


魔力を大量に蓄積している魔石であれば、いい燃料として利用できるというわけだ。


さて、そうとは知らず、俺はファングボアの心臓もとい魔石を剣で一突きしてしまった。


報酬が半減とか、相当な金額だろうな・・・


いちおう粉々になった魔石でも魔法薬の原料になるため薬屋に持っていけば売れないこともないが、二束三文、買いたたかれて終わりだ。


俺の有り金を全て渡すしかないか・・・


と諦めていた時だった。


先ほどの剣士と魔法使いがこちらへやってきた。


「おい!フェイ、そのへんにしてやれ!坊主も謝ってるじゃないか。」


「グレッグは甘すぎだよ!謝って済む問題と済まない問題があるじゃん!」


「そうは言うが、巻き込んでしまった俺たちにも非はあるだろ?お前が逃げた方向が違けりゃこんなことにはならなかったんだ。坊主ばかりを責めるのはおかしいだろ?」


「グレッグだってこいつの動き見ただろ?どう考えても素人じゃないよ!あんな腕があったら魔石を壊さなくってもファングボアを倒せたはずじゃん!」


「・・・まあ、確かにあの動きはすごかったが。」


剣士グレッグは俺をちらりと見て困った顔をした。


そこへ先ほどの魔法使いが割り込み、


「それよりも、グレッグ、フェイ。あれ、解体しない?」


そう言うと一同は先ほど倒したファングボアをみやった。


「・・・そ、そうだな。ミレーヌの言う通り、さっさとやつを解体しよう。話はそれからだ。」


グレッグは言うが早いか、そそくさと解体しに向かった。


「お前も手伝え!」


フェイは俺をひと睨みし、その後を追う。


「・・・はぁ~」


とりあえずさっさと解体してしまおう。


困ったなぁ。


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