10 ギルバートおじさん③
夕食後、俺は再び父さんに呼ばれ、書斎へ来ていた。そこにはやはり父さんとギルバートおじさんがいた。
「ジェフ、こちらに座りなさい」
父さんはそう言うと、隣のソファーを勧めた。
「ジェフ、お前の剣技はすでに相当なものだ。これは俺とギルが認めているし、先ほどギルと試合をしてお前自身が実感できているはずだ。だが、騎士になるためには剣技以外にも多くのことを学ぶ必要がある。知識や教養、礼儀作法、その他にもたくさんな。騎士になるには生半可な覚悟では足りん。それはわかるな?」
「うん。」
「そしてこの国には、一定の評価基準を満たした者のみが通うことの許される騎士学校がある。騎士になるためには必ず騎士学校を卒業しなければならない。」
「うん。」
「騎士学校の入学試験は年に一度、試験を受けられるのは十二歳~十五歳までだ。つまり入学のチャンスは人生で四度のみ。これを逃したら決して騎士になることはできない。お前が試験を受けられるようになるのは二年後だ。」
「うん。」
「この二年間でお前は騎士学校に入学できるだけのチカラを身につける必要がある。」
「そこで私が呼ばれた訳です。ジェフ君、キミが騎士になるための勉強を私に手伝わせてほしい。」
「ジェフ、ギルは現在騎士として働く傍ら、王都で騎士学校の予備校を運営しているんだ。」
「ジェフ君には、ぜひうちの予備校に来てほしいんだ。予備校では騎士に必要な技術や知識だけじゃなく同年代の騎士候補生たちとも知り合うことができるし、ジェフ君にとっても良い刺激になると思うんだ。もちろん強制はしない。予備校生はみんな寮に入ってもらうことになるし、勉強のレベルも低くないから、きっと苦しいことや辛いことも経験するかもしれない。だから、よく考えて決めてほしい。」
最後に
「入校式は三か月後だからそれまでに返事をください。」
そう言うとギルバートおじさんは部屋を出た。
それから数日、俺は予備校に通う決心ができずにいた。
予備校が騎士への近道なのはわかる。でも、家族と離れるのも不安だ。
うちから王都までは馬車でも二週間、徒歩なら一か月はかかる。
すぐに連絡を取り合うのも難しいだろう。
それに騎士の勉強については、父さんに教われば、ある程度は大丈夫だろうという思いもあった。
そんなふうにあれこれ悩んでいたら、見かねた父さんが背中を押してくれた。
「なあに悩むことはない。お前の好きなように全力でやってみなさい。お前は自慢の息子だ。」
俺は “ 幸せ ” だ。
そして、この “ 幸せ ” を守るために俺は絶対に騎士になるんだ!
そう改めて決意することができた。
「父さん。俺、予備校に行ってみたい!」