1 孤独
初めまして。
よろしくお願い致します。
孤独だった。7歳のとき、親に捨てられた。
どうやら借金のカタにでもされたらしかった。
両親が留守の間に黒ずくめの男がやってきてそんなことを言っていた。
特に何も感じなかった。ただそうかとしか思えなかった。
両親から与えられたモノは罵声と暴力ばかり。
一日中怒鳴り散らしては殴るだけ。
今思えば丁度いいサンドバックだったのかもしれない。
黒ずくめの男に連れられてやってきたのは、とある施設だった。
訳のわからぬままナイフを持たされ、初めて人を殺した。
俺と同い年くらいの子供だったと思う。
口を塞がれ、四肢を縛られた状態でも必死に泣き叫んでいた。
言われるままにナイフを刺したら静かになった。
それから5年間、体術から武器の使い方、人を騙す話術、その他“任務”で必要なありとあらゆることを教え込まれた。
12歳になってからは、毎日が“任務”だった。何人殺したのか、何人騙したのか、もはや覚えていないが、相応の数だっただろう。心なんてものは初めから死んでいた。
それでも時折、街を歩いていて思うことがある。
なぜあいつらはあんなに眩しい笑顔で歩いているんだろうか。
俺とは全く違うウラの世界の住人たち。
きっとやつらはみんな“幸せ”なんだろう。