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【第1章完結】光一くんのピアスはプライスレス【第2章執筆中】  作者: 御乙季美津
第2章 光一くんの努力はプライスレス
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さらば、九重警察署よ、また明日!

明けましておめでとうございます! 今年も御乙季美津と「光一くんのシリーズ」をよろしくお願いします!

ということで、お待たせしました。改稿につぐ改稿を行ってしまったことで、9日程空いてからの投稿となりました。

ということで楽しんで頂けたらと思います。

今回の話もよろしくお願いします。

 ホワイトボードに書かれた「爆弾」に光一が言葉を失っている目の前で、

「そこに書かれた名前のような……ん? あれ? あんなだったっけ? ……まぁ、良いっか。ホワイトボードには何を書いたのですか?」

 時間停止から解放された村田が夏奈へ尋ねた。書かれた言葉が変わったことに違和感を抱いたようだったけれど、どうやら気のせいだと判断して考えるのを止めたようだった。


「あ、あれはですね、えっと、さ、さっき休憩をした時に姓名判断をしていたんです。そ、その時に書いたここにいる防犯部のメンバーの名前です」

「あ、なるほど。姓名判断。ということは皆さんの名前……ん?」


 姓名判断という苦肉の策を村田が受け入れたところまでは良かった。しかし、その後の反応を見るからに、やはり夏奈が書いた「爆弾」に疑問を抱いたようだった。

「あの最後に書いてある『ホシノカナ』っていうのは――」

「あ、あれは、冗談です! 冗談!」

 村田の言葉に被せるように大慌てて夏奈が「冗談」を連呼した。会議室どころか廊下にまで響いていそうなほどの大声だった。


「冗談ですか?」

「そ、そうです! 冗談です! み、みんなでふざけて書いたものなので、き、気にしないでください」

「うーん、お二方はお似合いだと思いますけどね」

 夏奈と光一を見比べながらそう言う村田は、爽やかな笑顔を見せていた。


「えっ!? お、お似合いですか!?」

「はい。そうだと思いますよ」

「お、お似合いだなんて……へへへ、そ、そうですよね……」


 冗談なのか本気なのか分からない村田の言葉を夏奈は真に受けたらしく、頬に両手を当てながらくねくねと小刻みに動き始めた。


(村田さん……余計なことを言わないでくださいよ……)

 溜め息を吐く光一は、その光景を呆然と眺めることしかできなかった。


「ところで、この後はどうされる予定ですか?」

「お似合い……お似合い……へへへ……」


 村田が尋ねたけれど、自分の世界に入りくねくねと動く夏奈の耳には入らないようだった。


「朝倉さん?」

「朝倉先輩?」

「お似合いだなんて。あ! でももしそうなったら、かわいい美紗ちゃんが妹に――」

「朝倉先輩!」

「な、何!? ビックリしたー」

 冬美の一喝で、夢の世界へと迷い込んでいた夏奈は現実に戻ってきたようだった。


「村田巡査部長から話があるそうです!」

「えっ!? あ、す、すみません。そ、それで何かありましたか?」

 呆れたような表情を見せる村田に焦りながら夏奈が尋ねた。自分の世界に入り込むという恥ずかしい場面をバッチリ見られてしまい、既に取り返しのつかない状況になっているのだけれど、必死に体裁を整えようとしているようだった。


「この後はどのようにされる予定ですか? 確か、今日と明日の予定で来られているという話ですよね」

「こ、今回は泊りで来ているので、えーっと、この後は宿泊先にむ、向かいます」

「分かりました。あと明日も来られる予定ですよね?」

「はい。明日は、えーっと、く、9時頃にお伺いしようと考えていますが……冬美、9時で良いよね?」

「はい。それで大丈夫です」

 落ち着かない様子で尋ねる夏奈に、冬美はいつもの調子で答えた。


「く、9時にお伺いします」

 冬美に確認した後、夏奈は9時に九重警察署を訪れる約束を村田と交わした。


「分かりました。ちなみに明日も会議室を使われますよね? 何時頃まで使われますか?」

「あ、明日ですか? ぶ、部長に確認します」

 そう言うと、夏奈は慌てた様子で功人に尋ねた。


「部長。今回の出張ですが、明日は何時ぐらいまで滞在することができますか?」

「基本的には朝倉君と川崎君次第で構わないが、ここらから福岡に戻ることを考慮すると……そうだな、今日と同じぐらいの時間までが良いだろう」

「分かりました」


 功人に確認し終えると、夏奈は次に冬美と光一に尋ねた。


「2人とも今日と同じぐらいの時間で大丈夫?」

「自分は問題ありません」

「俺も大丈夫です」

「それじゃ問題無いね」

 2人に確認し終えると、夏奈は村田との話し合いを再開させた。


「あの、明日はもしできるのであれば、えっと、今日と同じように定時一杯まで使わせていただければと思います」

「分かりました。確認した限りでは、明日も会議室を使う予定は入っていなかったと思うので大丈夫だと思います」

「ありがとうございます。あ、あと、この机の上に資料を広げていますが、こ、このままでも大丈夫ですか?」

 机の上に広げられた資料に視線を送りながら夏奈が尋ねた。

「大丈夫ですよ。この会議室を使う予定は無かったはずなので、自分が代わりに管理をしておきますから」

 笑顔で村田が答えた。


「あ、ありがとうございます。それでは明日もよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします。それでは、玄関まで送っていきますよ」

 そう言うと、村田は会議室を出て玄関の方へと歩きだした。


「それじゃ行こっか」

 その後を追うように、防犯部の4人も会議室を後にした。


 村田の案内で玄関へとやって来ると、階段から急ぎ足で降りてくる足音が聞こえた。やがて、その足音の主である阿部が姿を現し、

「今日はお疲れ様でした。結果はいかがでしたか?」

 笑顔でそう話しかけながら防犯部の4人の方へやって来た。


「今日は本当にありがとうございました」

 生安刑事課長である阿部が話しかけてきたことを考慮したらしく、功人が防犯部の4人を代表して答えた。


「例の山荘で調査を行ったり、そちらからお借りした資料を参考にして調査をしたりしましたが、情報が色々とあって精査しきれていないので、明日、その続きを行おうと考えております」

「なるほど。ちなみに、明日もこちらで?」

「そうですね。村田巡査部長とうちの朝倉が話し合いまして、明日も会議室をお貸ししていただくことになっています」

「村田部長、会議室は大丈夫なんだよね?」

「はい。今日、会議室を借りる時に確認をしましたが、予約が入っている様子は無かったので大丈夫だと思います」

「それなら大丈夫かな。それでは、今日は本当にお疲れ様でした」

「また明日もよろしくお願いします。それでは」

 そう功人が答えると、合わせたように防犯部の4人は軽く頭を下げた。そして、4人に会釈をした村田と阿部に見送られるようにして、4人は九重警察署の玄関から出て行った。


 自動ドアを抜けた外へ出た4人を、夕暮れに色付きながらも未だに明るい青空の下に充満している蒸し暑い空気が柔らかく包んだのだった。

「いいね」や評価、感想、ブックマークをしていただければ、とても励みになります。よろしければポチっとしてください。またこの話の全体的なプロローグにあたる「光一くんのピアスはプライスレス 第零章」も併せてよろしくお願いします。

次の更新も少し時間が空くかと思いますが、どうかよろしくお願いします。

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