防犯部による会議 その1
5日で投稿をすることができました。本当は毎日したいところですが、なかなか時間が^^;
さて、今回の話から、防犯部の4人による会議が始まります。今回の調査対象となっている事件の被疑者は4人で、過去の事件で発生した思念の数は5人分。その違いの原因を、若手3人(夏奈、冬美、光一)は突き止めることができるのか!?
と大袈裟に書きましたが今回の話もよろしくお願いします。
「えっとさ、冬美の調査で分かったのは、思念の由来になった人の名前ってことで良いんだよね?」
「そうです。5人分の名前です」
小声で尋ねた夏奈に、冬美は同じように小声で答えると力強く頷いた。
「それでさ、その名前を照合する事件なんだけど、やっぱり玖珠屋で話を聞いた強盗殺人事件の関係者の名前と照合するべきだよね」
「そうですね。思念が発生する事件ですから、それぐらいの規模から探すべきかと自分は考えます」
「だよね。その関係者の中に、名前があれば良いんだけど……」
「そうですね。そうと決まれば早く取り掛かりましょう」
「うん、分かった」
冬美と夏奈は、いつにない真面目な表情で頷き合った。
この後の流れを確認した夏奈は、村田の方を向いて、少したどたどしさはあるものの、しっかりとした口調で話し始めた。
「えっとですね、あの廃山荘で起きた事件について、えっと、確認をしたいことがありますので、あの、強盗殺人事件がだいぶ前にあったと思うんですけど、その、し、資料を、お借りできませんか?」
「強盗殺人事件……と言えば、あー、あれですね。あの廃山荘でだいぶ前に起きた事件のことですよね? 未だに被疑者を検挙していないので、こちらとしてはお恥ずかしい限りですよ」
「強盗殺人事件」というキーワードだけで、村田は防犯部が必要としている事件の資料を理解したようだった。
「恥ずかしいということは無いと思いますよ。周囲に何も無いような場所で起きた事件なので目撃者も少ないでしょうし、不特定多数の人間が集まるような場所ですから、被疑者が痕跡を残していたとしても分かり辛いと思います」
苦笑する村田に、功人はフォローを入れながら、その苦労を労った。
「局の部長殿にそう言ってもらえると、少し気が楽になりますよ。ところで、その事件の資料と今回の調査は、どう繋がるのですか?」
「え、えっと、こ、今回の調査で廃山荘の状況は分かったのですが、あの、廃山荘で起きた大きな事件は、えっと、確認したいのですが、今回の調査対象になっている殺人事件と、その強盗殺人事件ぐらいですよね?」
「そうですね。こちらが把握している大きな事件は、それぐらいですね」
「それでですね、えっと、事件がどのように起きたのかを、こちらとしては、は、把握しておきたいのです」
「なるほど、そういうことですか。分かりました。本部長からうちの課長に連絡があったぐらいなのでお貸しすることは大丈夫だとは思いますが、一応、課長に確認してみます」
「それで、その事件の資料はこちらに?」
功人が尋ねた。
「えぇ、もちろん、こちらにありますよ。うちの資料保管庫に入っていたと思います」
(ここにあって良かった……)
「……良かった……」
村田の返事を聞いた光一が安堵したのと同じタイミングで、夏奈が小さく呟く声が聞こえた。
「あ、あとですね、えっと、ホワイトボードを使っても、だ、大丈夫ですか?」
「どうぞ。寧ろ使わないと会議にならないと思いますので。それでは、今から取ってきますので、しばらくお待ちください」
そう言うと、村田はやや急いだ様子で会議室から出ていった。
村田が出て行ったのを確認した後、功人は並べられた折り畳み式の長机のうち、右側の列、前から3番目の場所に置かれたパイプ椅子に座った。それを見た夏奈と冬美は左側の列の一番前に置かれたパイプ椅子にそれぞれ座り、光一はその後ろの机のパイプ椅子に腰を下ろした。
「それでは、早速だが、今回の調査結果を基に検討を始めるとしようか」
全員が座った後、功人が「開会」を宣言した。
「分かりました」
功人に答えると、夏奈はホワイトボードへ向かって右側へ移動し話し始めた。
「まずは今回の調査で判明したことのおさらいだけど、冬美、もう一度説明して」
「分かりました」
夏奈に促された冬美は席を立つと、長机から少し外れた3人を見渡せる場所に少しだけ移動してから話し始めた。
「今回の調査の結果、あの廃山荘には5人分の思念が存在しているということが判明しました。そして、その発生時期についてですが、自分の感触としては大きな誤差は無く、ほぼ同じ時期に発生した可能性が高いと推測しています」
「確認だけど、その思念の由来となった人物の名前は、もう分かってるんだよね?」
「はい。この後、村田巡査部長が来ると思うので、まだホワイトボードに書くことはできませんが、後程、片仮名で書こうと考えています。漢字体までは分からないので」
「分かった。それじゃ、この後お願いね。説明、ありがとう」
夏奈に座るように促された冬美は、軽く礼をしてから座っていた席へと戻り着席した。
「次に――」
冬美が着席した後、夏奈が再び話し始めた。
「今回の調査対象になっている事件のおさらいだけど、この事件は一ノ瀬愛莉という若い女の子が廃山荘で殺害されたもので、被疑者は同じグループで動画配信をしていた男性4人です。犯行の状況や証拠品から、この4人が殺人と死体遺棄をしたことは間違いないと大分県警は考えてるし、夏奈もそう思います。だけど、4人全員とも死体遺棄は認めてるのに殺人や殺意については認めていないのが今の状況です。なので、大分県警の本部長は、この事件には思念が関わっているのでは、と考えて防犯部へ調査の依頼をしてきました。防犯部としても話の流れから思念が関わっていると推測してますが、この推測には、冬美の調査で分かった思念の数と、今回の事件の被疑者の人数が合わないという問題点があります」
(そうなんだよな……)
夏奈の説明を聞く光一は心の中で同意した。
「ただ、あの廃山荘で過去に起きた事件について確認したけど、みんなも聞いていたとおり村田さんの話では、調査対象になっている殺人事件と、玖珠屋で聞いた強盗殺人事件以外に大きな事件は起きて無いみたいです。なので、今回は冬美が調査で確認した5人分の名前と、その強盗殺人事件の関係者の名前を照合しようと思います。今までの話で質問はありますか?」
「わたしから1つ良いだろうか?」
説明を終えて少し表情を和らげた夏奈が尋ねると、功人がスッと手を挙げた。
「いいね」や評価、感想、ブックマークをしていただければ、とても励みになります。よろしければポチっとしてください。よろしくお願いします。
またこの話の全体的なプロローグにあたる「光一くんのピアスはプライスレス 第零章」も併せてよろしくお願いします。
なるべく次のお話を早く投稿できるよう頑張りますので、応援のほど、よろしくお願いします。