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【第2章完結】光一くんのピアスはプライスレス【第3章執筆中】  作者: 御乙季美津
第1章 光一くんの初体験はプライスレス
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家庭訪問は波乱の香り?

なんとか10日で投稿することができました。

遅筆ですみません(^^;)

時間があればプロローグから読んで頂ければ幸いです。

よろしくお願いします。

 17時半過ぎに事務所を出た一行が光一の実家に到着したのは、18時10分を少し過ぎた時のことだった。


「ここが光一君の実家?」

「は、はい。そうです」

「やっぱり緊張するなぁ」

「大丈夫ですか? 初対面なので無理をせずに帰っても……」


 笑顔ながらも硬い表情を見せる夏奈に、光一は気遣うように声をかけた。


「ううん。大丈夫。光一君の家族だもん。きっと大丈夫だよ」


 しかし、光一の家族なら大丈夫、という根拠が謎な自信を持った夏奈はそれを聞き入れず、逆にやや硬いながらも十分に明るい笑顔を見せた。


(完全に詰んだな……)


 光一としては、夏奈には遠慮してほしいという本音があった。だから、初対面の人と接するのが苦手であるという夏奈の性質を盾に、初対面である自分の家族と関わることは大変ではないか、という立派な言い訳をプレゼントして、やんわりと間接的に帰ることを勧めたつもりだったけれど、結局は無駄な努力になってしまったのである。


(仕方ない……)


 心の中で呟きながら、光一は自分の家のインターフォンを押した。いつもは持っている家の鍵を使ってドアを開けるけれど、今日は彩子や夏奈が一緒に来ていることを知らせるという意味を込めての行動だった。

「はーい」

 インターフォンを押してから間髪入れずに、ボタンの隣にあるスピーカーから普段よりも1オクターブほどハイトーンな母親の声が聞こえた。事務所を出る前に連絡をしていたとはいえ、そのあまりにも早過ぎる反応に、インターフォンの前で待機していたのではないか、と考えてしまうほどだった。


「帰ったよ」

「今開けるから」


 間もなくして家の中からドタドタという足音が聞こえた後、玄関の鍵が解錠されドアが内側から開いた。


「……た、ただい……ま」


 しどろもどろになりながら帰宅を告げた光一は、玄関にいた母親の身なりを見た瞬間に言葉を失った。いつもはジーパンといったラフな格好をしている母親が、オフホワイトのスカートスーツを着てメイクをバッチリとしていたからである。


「お帰りなさい!」

 その気合いは身なりだけでなく、光一たち一行を迎える声にも込められていた。


「……」

「その方々が光一の上司?」

「……えっ!? あ! そうそう」


 呆気にとられていたところに母親が話しかけたことで我に返った光一は、一歩横にずれてから2人を紹介し始めた。


「こちらが班長の春日彩子さんで、こっちが先輩の朝倉夏奈さん。2人にはいつもお世話になっているんだ」

「初めまして。光一君の上司の春日彩子です。いつもお世話になっています」

「朝倉夏奈といいます。光一君とは同じ班のメンバーです。これからよろしくお願いします」

 そう言うと、2人は同時に頭を下げた。


「光一の母です。いつも光一がお世話になっています。さぁさ、玄関ではなんですから、どうぞお上がりください」

「ありがとうございます。お邪魔します」

「お邪魔しまーす」

「うふふ。光一の上司の方々がこんなに……」

「そんなこと……」

「そう言ってもらえて……」


 終始笑顔の母親に先導されるように、彩子と夏奈はスリッパに履き替えると、そのままリビングへと向かっていった。


(夏奈さんの、これからよろしくお願いしますって、いったい何をよろしくお願いするつもりなの!? ほんと、こうなるから夏奈さんには来てほしくなかったんだよな……)


 3人の後ろ姿を見ながら1人玄関に取り残された光一は、肩を落としながら心の中で突っ込むことしかできなかった。


 一足遅れてリビングに入ると、3人は既に4人掛けのテーブルに着いていた。光一から見て手前の左側の椅子には母親が座り、テーブルを挟んで向き合うように彩子が席に着いていた。そして、光一の座席として予約されている母親の右隣の席の反対側には満面の笑みを浮かべる夏奈が座っていて、

「光一君、早く!」

「あ、は、はい」

(俺の席の向かい側はやっぱり夏奈さんか……高校の3者面談よりきついって……)

 手招きをしながら急かす夏奈に呆れながら光一は大人しく席に着いた。


「光一が上司の方に気に入られているみたいで良かった」

「ははは……そ、そうだね……」

 席に着いた時に左隣から聞こえた母親の一言に、光一は曖昧な言葉を返すことしかできなかった。


 その後、星野家のリビングでは女性3人によるトークが繰り広げられた。全員が概ね好意的に話をしてくれたおかげで、光一が針のむしろになるということは無かったけれど、話が進んで光一のプライベートが話題に上った時に、

「光一君は家ではどんな感じなんですか? 夏奈はとても興味があるんです」

 身を乗り出した夏奈の食いつき方が異常だったことに、光一は戦慄を覚えざるを得なかった。


 盛り上がる女性3人のトークは止まるところを知らず、蚊帳の外状態の光一が壁掛け時計を見ると、既に時刻は18時半を過ぎていた。


(もうそろそろ、美紗が帰ってくるか。何か分かると良いんだけど……)

 福岡タワーで思念の影響を受けた後の美紗の行動の原因が分かることを光一が心の中で祈ったちょうどその時、玄関を解錠してドアが開く音が聞こえ、


「ただいま」


 帰宅した美紗の声が聞こえてきた。


「光一の妹の美紗が帰ってきました。お帰りなさい!」

「えっ? 美紗ちゃん!?」

「あれ、お客さん?」


 「美紗」という名前を聞いて色めきだった夏奈が言葉を発したのとほぼ同じタイミングで、玄関の方から母親に問いかける美紗の声と、スリッパに履き替える音が聞こえた。そして、パタパタというスリッパの足音が数歩分聞こえた後、リビングへと続くドアがゆっくり開いた。


「こんばんは」


 ドアのところで、リビングにいる彩子と夏奈にすぐに気付いた制服姿の美紗は、持っていた鞄を床に置くと緊張した様子で軽く頭を下げた。


「この子は光一の妹の美紗です」

「星野美紗といいます。高校3年生です。よろしくお願いします」


 離席し美紗の横へ立った母親が紹介すると、彩子と夏奈はそれぞれ席を立ち自己紹介をし始めた。


「春日彩子といいます。光一君と同じ職場に勤めていて、光一君が所属する班の班長をしています」

「朝倉夏奈です。光一君にはいつもお世話になってます。光一君から妹さんがいるという話を聞いていたけど、今日、こうやって会うことができて嬉しいし、とても可愛いので一目で気に入りました。これからよろしくお願いします」

「は、はぁ。あ、は、はい」


 彩子の自己紹介が極めて普通なものだったその一方で、夏奈はグイグイと迫るような自己紹介をして見せた。そのせいで呆気にとられたような表情をしながら引いていた美紗だったけれど、

「ん? あれ、この香りはもしかして!?」

 何かに気付いた様子を見せると突然表情を険しくした。そして、彩子と夏奈に近付いてスンスンと2人から漂う香りを確認すると、


「初対面でこんなことを言うのは何ですが、兄さんにちょっかいを出すのは止めてもらえませんか?」


 突然夏奈に詰め寄ったのである。


「えっ、えっ、ど、どういうこと!?」

「誤魔化しても無駄です。昨日もでしたが、兄さんからあなたの香りが漂ってきました。あなたが兄さんにちょっかいを出している証拠です」

「ちょ、ちょっと! 美紗!」

「兄さんは黙ってて!」

「……」


(前の美紗はこんなんじゃなかったのに……)


 険しい表情を見せる美紗と、やや追い詰められてそうな表情の夏奈を見た光一は、間髪入れずに右手で右耳のピアスに触れ、左手で壁掛け時計を指差すと、


「お願いします」


 と静かに呟いた。その瞬間、リビングの壁掛け時計に「GLASYA=LABOLAS」が円状に配置された模様が浮かび上がり、世界の時間が一斉に停止した。

光一と美紗と夏奈の関係を書いた話は次回で一旦終わり、話は再び事件へ再突入していきます。


感想やブックマーク、評価ををしていただければとても励みになります。

次の投稿は1週間後を目途に計画しております。

今後ともよろしくお願いします。


次回をお楽しみに!!

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