第1話 モラトリアム ールークの場合ー
突然始められたデスゲームに戸惑うものは誰一人としてなかった。
まさに熟練といった仕草で全員が平然を装いながら敵を観察。ルークも未熟ながら引けを取らないようにあたりを見渡す。
「ねえ、あなた本当に殺し屋?」
えーと、確か…そう、イヴァン!
「どうして?」
「ここにいるのは業界では名の通った殺し屋ばかりよ。だけど私、あなたを知らないわ。それにあなた音を立てて歩いていたもの」
「え、ここにいるのってそんなすごい人たちなんですか!?」
「ええ、特にあの2人は別格よ。」
そう言ってイヴァンが左の頬に傷がある男とフードを被った男を指差す。
「そうです。あなたも殺し屋なら『死神』と『悪魔』の名前くらい聞いたことあるでしょう?」
メガネをかけた好青年アルヴィンが話に加わる。
「死神も悪魔も殺した人数は4桁は間違いないと言われる超大物ですよ。誰も気づかないうちに殺し終えてる死神と、邪魔者もろとも殺す悪魔。聞いたことないですか?」
「すみません、殺し屋始めたのが4日前なので知らないです。まだ1人しか殺してなくて」
「へえ、お兄ちゃん。そいつぁ面白えな。何を使って殺すんだい?」
さっきまで遠くにいた頰に傷の死神がもう目の前にいる。
「おいおい、そんなびっくりしなくてもいいだろ?殺気消してただけじゃんか。」
「あなたは気配も完璧に消すじゃない。初めてでやられたら驚くわよ。」
「イヴァンか。交渉術がすげえやつ。」
「覚えてもらえて光栄ね。私と組んでいただけない?」
「ずるいですよ。僕も組みたいです。」
「組めるわけねえだろ。ここにいるやつで信用できる奴なんて1人もいねえからな。」
「確かにそうね。」
「同感です」
2人がうなづく。
「それにしても壮大なメンツだな。」
「無名なのがこの人だけですもんね。ほとんどの殺し屋を網羅してる僕でも知りませんでした。」
「あとは魔王さえいれば最強決定戦でしたね。こちらとしてはいなくて安心ですけど。」
「誰も顔を見たことがねえ殺し屋なんて恐ろしくて仕方ねえよ。俺と悪魔と魔王で三凶とか呼ばれてるけど、あいつのワントップは確定だな。勝てる気がしねえ。」
「その3人が組んだら脱出する3人確定ですね。考えただけでも恐ろしい。」
「そういえばルーク、この中に知ってるやついるか?」
ルークは首を横に振る。
「フェアじゃねーし教えてやるよ。あいつはノア。爆弾使いだけど近距離戦に弱いから接近するといいぞ。あの小さな女の子はロザリー。10歳だけど、殺す時の手際はめちゃめちゃいいから油断するなよ。…あとあいつは…」
死神はそのまま全員の特色を教えてくれた。意外にも面倒見がいいらしい。
「大番狂わせ、楽しみにしてるぜ?」
「生き残ったら面白そうですね。私は話を聞いたとき死に場はここに決めてますけど。」
「僕もです。こんな名だたる人々にどこまでできるか試せれば本望です。負けたくはないですけどね。」
「俺は悪魔と一戦交えるつもりだぜ。
出航したら手加減は無しだかんな。」
「もちろん。本気ですよ。」
「ええ、私も悔いは残さないわ。」
三人とも少し誇らしいような、楽しそうな表情で向かい合っている。
「とりあえず武器書いて、俺は一服してくるぜ。」
「じゃあ私は少しピアノを弾いてきますね。」
「僕は自分の情報を元にジョーカーを探してきます。」
「じゃあ僕は武器書いて部屋でぼーっとしてきます。戦う時はよろしくです。」
「おう!」
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