表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

アイネイアスの武器造り(後編)

なかなか更新できずに申し訳ありません

(o_ _)o




~前回のあらすじ~


 幸薄男のヘパイストスさんの奧さんであるアフロディーテさんが絶賛浮気中の中で突如、息子の顔を見に来たゼウスさん。


 目的は勿論、息子の嫁さんです。


 けれど、浮気相手がアレスと聞いたゼウスさんは二人を別れさせようと画策します。


 そして呼んだのがアフロディーテさんの従者で原初の神様エロスさん。


 当初、渋っていたエロスさんもゼウスの合コン話に食い付いて彼の願いを叶えようとします。


 けれど、原初の神様エロスさんは策士です。


 アフロディーテさんには自分が関与したことがバレないようにゼウスさんを騙すつもりでいます。


 さてさて、どうなることやら……。


ーーー本編の始まりですーーー


 ここは静かな牧草地帯、見渡す限り大自然豊かな場所で場違いな露出狂のおば……もとい、綺麗なお姉さんが周囲をキョロキョロと見渡しながら歩いておりました。


「アレっち~、どこ~?」


 はいっ、アフロディーテさんです。


 待ち合わせ場所に来たのは良いけれど、情人アレスさんの姿がどこにも見当たりません。


 無駄に色気を振りまきながらアフロディーテさんってば、他にイケメンがいないか探しております。


 ですが、牧草地帯には人の気配がありません。


 そりゃあ、当然でしょう…。


 えっ?何がって……あぁ、説明不足でしたね。


 えっとですね、アフロディーテさんがこの牧草地帯に来る数分前のことです。


ーーー数分前


 牧草地帯に怪しい二人組がいました。


 丸いレンズのサングラスに黒一色の出で立ちの二人、一人は天使の姿をしたエロスで…もう一人はまぁ、想像通りのゼウスさんですね。


 ゼウスさんってば持てる権力全てを使ってこの牧草地帯から人払いを致しました。


 この二人、何故この場所にいるかというとーー。


「アレスの居場所は分かった」


 スマホを取り出したエロスさんが画面を見つめながらアレスの場所を探し当てます。


 うん?どうやって調べたの?


「わしはお前らの生みの親だから…」


 いや、答えになってないよ?


「監視してる」


 なに、ドヤ顔してるんですか!


 それって犯罪じゃ……ちょっと前に大問題になった大手SNSサイトじゃないんですから。


「…えっ、もしかして俺も?」


 戦々恐々するゼウスさん。


 前科ありすぎますからね、あなたは。


「当然じゃろ。わしの恋愛情報網を甘く見るでない。それより、先回りしてアレスを拉致るぞ」


 ヘラ姉さんに見つかっていないあれやこれやを思い出しながら青ざめるゼウスさんを横目にやる気満々のエロスさん。


 その原動力はもちろん合コンです。


 絶世の美女ブシュケとエロスとの合コン、勘の良いギリシャ神話好きの貴方、次回予告ですよ(笑)


 というわけでアレスがアフロディーテさんと待ち合わせした牧草地帯に先回りをした結果ーー。


「…えっ?ゼウス様、えっ?エロス様も…えっ、何その格好?アフロディーテさんはどこに?ってか、なに……その荒縄と布は?」


 戦の神と呼ばれるアレスですが主神に敵うはずもありません。嫌な予感と共に引き攣った表情で二人を見つめます。


「俺の女に手を出しおって」


 ゼウスさんってば額に青筋を浮かべながらボソリと呟くと荒縄でアレスの身体を縛り、猿ぐつわを噛ませます。


「んぐっ!?うぐぐわだば!」


 何を言っているのかさっぱり分かりませんがアレスの表情はかなり青ざめていました。


 まぁ、主神から縛られたのですから……。


 しかも、ようやく事情を飲み込めたアレスは手を出した相手が悪かったことにようやく気が付いたみたいですね。


 まぁ、正確には手を出したと言うより肉食系女子にガッツリ食われただけなんですけどね。


 それは良いとして結果的にアレスは二人に拉致されてしまうのです。そんなことが起きているとは露知らず、アフロディーテさんは牧草地帯をフラフラしておりました。


「んで、どうするんですか?」


 荒縄で縛り、猿ぐつわ噛ましたアレスを踏みつけながらゼウスさんはエロスさんに尋ねます。


「うん?まぁ、うちの(アフロディーテ)は年中発情してるから何か適当にイケメンを目の前に差し出しとけば満足するんじゃないか?」


 策士と書きましたが意外と適当なエロスさん。


「なら、人払いを解除しますか……ふんっ!」


 何か気合い入れてるみたいですが別段、特別な力で人払いをしていたわけでは御座いません。


 ただの気合いです。


 誰かが近づいてくると「むんっ」と眉間に皺を寄せ眼力で追い返していただけですから。


 まぁ、眼力だけでも流石は主神です。


「…うわぁ、変態がいる」


 呆れた表情を浮かべる旅人。


「お母さん、何あのおじさん?」


 母親の服の裾を引っ張る幼子の瞳を伏せながら抱きかかえるように足早に通り過ぎる母娘。


「しっ、目を合わせちゃダメよ。あんなのに目を付けられるとダメ主神の子供を妊娠しちゃうわよ」


 流石です……ゼウスさん。


 安定の人望のなさですね。


「…ウッサいわ。おっ?彼奴なんてどうです?牧人だけど、まぁまぁな物件だと思いますが?」


 眼力を解除した牧草地帯にフラフラと迷い込んでくる一人の男…ってかギリシャ神話で巻き込まれる人って牧人比率高くない?


 まっ、いいか。


 とりあえず不憫な牧人アンキセウス登場です。


「…あれ?誰もいない、なんで?」


 だだっ広い牧草地帯なのに人の気配が全く感じられないことに小首を傾げる哀れな被害者ーーもといアンキセウスさん。


 遠くから獲物を狙うが如き視線を向けるエロスさんが徐に背中の矢筒に手を伸ばします。


「うんじゃあ、まぁ惚れさせるかのぅ」


 背中の矢筒から金の矢を取り出したエロスさんはキリキリと弦を引き絞ります。


「自分を傷つけないでくださいね?」


 ゼウスさん、それ前ふりでしょ?


 駄目ですよ、言っちゃあ……。


 分かる人には分かるギリシャ神話ネタ(笑)


「わしがそんなヘマをするもんかいーーほれっ」


 シュルルルルーーーサクッ。


 見事にアンキセウスさんの頭に命中……。


 痛くないのかな、あれ……。


「…うん?頭になんか当たったような?」


 後頭部に刺さった金の矢に触れるアンキセウスさんですが、矢に触れようとするとスーッと矢が消えてしまいます。流石は神々の武器?ですねぇ。


 そして、タイミング良く現れた万年発情ーーアフロディーテさんとバッチリと目が合います。


 その間、10秒ーーはいっ、堕ちたぁ~。


「あっらぁ~、良い男みっけぇーージュルッ」


 目を爛々と輝かせ涎を拭いながら近づいていく姿は正に痴女としか表現しようがないのですが……。


 けれども金の矢を刺されたアンキセウスさんの瞳には痴女、もといアフロディーテさんの姿は神々しい女神様にしか映っておりません。


 まさに神の所行……怖ろしいですね。


 近づいてくるアフロディーテさんの姿に魅了されるアンキセウスさんは思わず彼女を見て呟いてしまいます。


「なんて美人なお人なんだ……」


 絶世の美女は伊達ではない。


 面目躍如のアフロディーテさん。


「まぁ、お上手な人ねぇ~」


 満面の笑みを讃えながら近づく痴女(アフロディーテ)とアンキセウスは仲良く肩を寄せ合いながら牧草地帯を去っていくのでした。


 ーーーーその結果。


 二人の間に子供が生まれます。


 その子供の名はアイネイアス。


 後のトロイア戦争で名を馳せる英雄となるそのアイネイアス君を溺愛したアフロディーテさんは何かプレゼントしようと考えます。


「ねぇ~、あなたぁ~」


 猫なで声のアフロディーテさんの声にビクッと身体を震わせるヘパイストスさんは恐る恐る振り返ります。


「……な、何かな?」


 満面の笑顔のアフロディーテさんってば、もうね何か企んでるのが丸わかりです。


「私の可愛い子供に武器を作ってぇ~」


 上目遣いで瞳を潤ませながら見つめるアフロディーテさんの姿に若干惹き気味のヘパイストスさん。


 そりゃあねぇ、二人の間に子供いませんから必然的に浮気相手の子供になりますよね……。


「っで、…どの子?」


 とりあえず、アレスの子だったら拒否しようとヘパイストスさんは心に強い覚悟を秘めて聞きます。


「アイネイアスちゃんよぉ~」


「あぁ、あの牧人の子……なら、まぁ」


 同じ神族でなければ許せるヘパイストスさんってばなんだろう……かなり不憫。


「…しょうがないだろ」


 ボソリと呟いて工房へと向かい作業を始めます。


 カンッカンッ、ボォー、カンッカンッ。


 哀愁が漂う可哀想な姿ですね。


 まぁ、鍛冶屋の神様ですから作れと言われれば何でも作るみたいですけど……。


 本当に良いの、ヘパイストスさん?


「だって、仕方ないじゃないか……うぐぐっ」


 振り返ったヘパイストスさんってば………うわぁ~、血の涙を流してるよ。


 そして、愛人の子供のために武器を作るヘパイストスさんの鎚の音だけが工房で哀しく鳴り響くのでした。


ーーおしまい(笑)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ