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王の処刑人  作者: 高月怜
王の処刑人と野バラの姫
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21.唐突な変化

アルフに腕を捕まれた翌日。学園に登校してきたリリアは自分の紙に書いて机に貼られた紙に呆然と立ち尽くした。紙に書かれた文字はたった一言。


“アバズレ”


その文字に固まっていると周りからこれみよがしな声か囁かれる。


「まぁ………見て。あの白々しい驚いたような顔」


「あんなおとなしい顔をして男を次から次に毒牙にかけてるそうよ」


「やはり家の出が卑しいと体を使ってでもと思うのね」


「最低ね」


こそこそとひそひそと至るところから囁かれる声にリリアは無表情で机に張り付いた紙を剥がすと席に座る。


“なんで………”


レオンとの密会を誰かに溢した事もない。図書館の奥深い秘密の場所でしか会った事もない。ギュッと拳を握りしめて俯いていると明るい声が自分に届く。


「おはよう」


エリメールの明るい声に教室内のひそひそ声がピタリと止まる。それにホッとしているとエリメールがリリアの傍に寄ってくる。


「リリア、おはよう」


いつもと変わらない様子に恐る恐る顔を上げればエリメールに変わった様子はない。その事にホッとしながらリリアはぎこちなく笑顔を向ける。


「おはよう、エリメール」


そんな自分に気づかないエリメールは何事もないように穏やかに話かける。


「そうだ。昨日出された課題はもう終わった?」


そう問いかけるエリメールにリリアは穏やかに頷く。


「少し時間はかかったけどなんとか終わったわ」


「流石、リリアね。私は取り組んではみたけど全く分からなくて。悪いんだけど放課後にでも教えてくれない?」


「もちろんよ。私で良ければいくらでも」


「なら、約束ね」


「ええ」


「じゃあ、また」


いつもと変わらない朝の挨拶を交わして自分の席に行くエリメールを見送ると幾人かの同級生が我先にと寄っていく。きっと自分の噂を丁寧に教えに行ったのだろう。それに嘆息して、リリアは自分の手の中に握りしめた紙を再度ゆっくりと開く。やはりそこに書かれた文字は“アバズレ”だ。


“一体、何がどうしてこんな事になっているのか?”


自分は誰にも………エリメールを除いて秘密を口にしていない。しかし、自分には彼女が自分の秘密を誰かに漏らすような人間ではないと分かっている。では誰が何のために………。そう思いながら、リリアは手の中の紙を握りしめた。





その日、学園はどこか浮き足だっていた。ガヤガヤと騒がしいのはいつもの事。しかし、至るところで少女達が寄り集まって話している。それを横目にココノアは教室へと歩いていく。


「おはようございます」


そう言って、教室内に足を踏み入れて挨拶すると教室の隅に集まっていた同級生達が自分の姿に寄ってくる。


「ココノア様!もう聞かれましたか!」


「何をですか?」


近寄るなり、興奮ぎみの少女にココノアは小首を傾げる。少女が自分に言いたい事を予想しながらもそう問い返せば顔を赤くした相手が興奮ぎみに口を開く。


「最高学年のアルフ・ユドル様とバレー男爵家のリリア嬢が人目を忍んで抱き合っていたそうですの!アルフ様は今まで誰ともそんな噂を聞いたことがありません!」


「きっとリリア嬢がアルフ様を誘惑したんですわ!」


「そうよ。絶対、そうに決まってますわ!」


何の根拠もなく、そう言う少女達にココノアは困ったように笑う。自分には優秀な諜報員がいる。彼らから昨日の騒ぎは聞いている。そう、少女がアルフを誘惑したのでなく、待ち伏せをしたアルフが少女を物陰に引っ張りこんだという事実も。


「そうなんですの?」


困ったように首を傾げる自分に令嬢達は拳を握りしめて頷く。


『勿論ですわ!!』


そう言い切る令嬢達にどう返そうかと考えていると背後で“ドサリ”と荷が落ちる音がする。その音に周りの少女達が一斉に礼をとる姿に背後の人物が自分の予想通りの人物だったことにココノアはゆっくりと振り返る。


「おはようございます。殿下」


「……………ああ」


頭を下げると目を瞬かせていたリオンは酷く不可解な顔をしていた。

いつもお読み頂きましてありがとうごさいます。誤字・脱字がありましたら申し訳ありません。

少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


ようやく試験が終わりました。結果が出るまでは無心で小説を書いていきたいと思います。

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