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王の処刑人  作者: 高月怜
王の処刑人と野バラの姫
40/66

5.剣の王子の本性

☆注意☆


王子が作者の思っていた以上の屑でした。


本当に本当に王子が屑です。

展開上、女性蔑視の表現があります。了承頂ける方のみ、お読みください。

「リリア嬢は今日も図書館で君を待っていたらしい」


資料を読む親友兼将来の主たるレオンを前にアルフは口を開く。その報告に学園から部屋に戻って公務の資料に目を通していた目の前の青年が顔を上げる。王族の証である黒髪に金の瞳を有している第1王子レオン・クーラは姿形だけは物語から出て来た王子と言っても差し支えない容貌をしている。第2王子であり、母が同じであるリオンと顔立ちは似通っているがレオンの方が美しいと評判の母親似であった。


しかし、その本性が最低だと知っている人間は自分以外にあまりいない。今もまた自分が告げた言葉に少し考えた後、興味なく肩を竦めてみせる。


「まだあの女は待っているのか………健気なことだ」


「いい加減にしろ!」


その言葉に切れたのはそんな相手の十数年来の親友兼将来の側近候補であるアルフ・ユドルだ。クーラ国内に数えるほどしかない公爵家の嫡男でレオンとは違う金色の色彩を纏った彼は年頃の令嬢達からレオンと二分する人気を誇っているが今は額に青筋を浮かべていた。


「そんなに気にするような女でもなかっただろう」


額に青筋を浮かべるアルフの様子も知らず今も自分に告げられた報告にさほど興味を抱くことなく、資料に目を戻したレオンは脳裏に1年前に偶然見かけた身分の低い少女の存在を思い出すがそれ以上の感情はない。ちょっとした気まぐれでちょっかいを出し、暇つぶしになるかと思っていたが意外にも少女はまだ自分に体を許さない。数日前も一緒に街を散策したが最後の一線を越えようとはしないし、そろそろ別れ時かと考えている。甘い言葉を囁けば婚姻するまで手を出せない婚約者の代わりになるかと思っていたが今までに関係を持った少女達とは違い、少女は自分に対してどこか一線を引いている。


「何度か声をかけているうちにこちらに興味を持ったから暇つぶしになるかと思ったが意外に身持ちが堅いのが難点だな」


“私は分かっております”


そう言っていつも寂しげにそう笑う相手を思いだし、レオンはクックッと笑う。


「まぁ………私の身分を知って、自分は王妃にはなれないと弁えている姿は他の女達とは違って好感が持てるがな」


「レオン」


再び、馬鹿にするよう吐き捨てれば咎めるような声音がすぐに飛んでくる。その指摘にレオンは“はいはい”と手をあげる。


「本当に我が側近は頭が堅い。婚姻するまでのただの火遊びじゃないか?」


「君にはれっきとした婚約者がいる。彼女と婚姻するのが決まっていて、他の女性に手を出すなんて男の片隅にもおけない」


そう返すアルフにレオンは“ただの火遊びごとき”で一々、騒ぐなと言いたい。自分に請われたから断れなかったと身体を女の方が悪いのだ。そう思いつつも資料を読む手を止めて、座っていたソファーで足を組み替えながらレオンは更に生真面目な相手にからかうような声をかける。


「婚約者とは言うが、そもそも婚約者とは国の契約のようなものだろう。あの女は私が王位に就くために必要な道具にすぎない」


「本気でそう思ってるのか!君は!」


そう堂々と言ってのける相手にアルフは嫌悪に顔を更に歪める。そんな自分の態度にニヤリと笑うレオンが対して気にも止めていないことにアルフは盛大にため息を吐く。


「本当に君には失望する」


もう10年来の付き合いになるがアルフにはこのレオンの行動が信じられずにいる。対外的には優しく紳士的な王子として通っているレオンは呆れるほどに女癖が悪いのだ。しかも、問題にならない相手やこちらに訴えられない相手を選んで手を出すため、大きな問題になってはいないのが更に質の悪さを物語っている。何より今後、国を継ぐ第1王子が女癖が悪いというのは後々後継者という問題を引き起こす。何度言っても伝わらない相手にアルフはやきもきとした気持ちをずっと抱えている。


「何度も言うようだが女性は君の欲を満たす存在じゃない」


そうため息を吐いて、冷たくレオンに警告を促す。このままではいつか痛い目をみる。新しい女に手を出す度にアルフはそう相手の行動を咎めるも相手には伝わらない。何より自分の家が政略結婚した両親でありながらも仲が良い姿を目にしているからかもしれない。そのため第1王子として帝王学を修めた相手がいかに優秀でも女性をまるで道具のように扱う姿は譲れない。睨み付けるとレオンが大げさに肩を竦めてみせる。


「怖い怖い。本当に我が側近は頭が堅くて困るな。そんなんだから、婚約者とうまくいかないんじゃかいか?」


公爵家の嫡男でありながらいまだに婚約者の1人もいない自分を揶揄するようなレオンの言葉にアルフはギロっと相手を睨む。


「変な言いがかりはやめてもらおう。何度も言うが私には婚約者はいない。そもそもこれは頭が堅いとかそんな問題じゃない」


「そんなに頭が硬いと今後困るぞ」


「困っても構わない」


レオンの言葉にアルフはそう言い返すと踵を返す。いくら将来的に王位に就く男だとしてもこんな男の側近などこちらから願い下げだと幾度も外してもらうように父に頼んだが慎んでお仕えしろと言うばかり。そうしているうちにずるずるとこの男の傍にいることが続いている。


「私は忠告はしたからな」


護衛も兼ねて学園からの下校を共にしている相手に背を向けたままで言えばめんどくさいと言わんばかりの返事が帰る。


「はいはい」


「もう知らない。私は帰る!」


「ああ、また明日」


決して真面目に取り合わない相手に背を向けたままそう言うとレオンの部屋を後にするが肩越しに見た相手に反省の色はない。その色を見たアルフは怒りのままレオンの部屋を後にすると止まる事なく歩き続ける。


ーそしてー


「はぁ………」


この国で今1番王位に近い男の部屋から離れるとアルフの口からはため息が零れる。


「………彼女もいい加減諦めたらいいのに」


思わず、溢れた思いにアルフは弱ったように壁に背を預ける。レオンが彼女に手を出した時から何度もやめておけと繰り返した。


“男爵の娘では王妃にはなれない”


少女に対してもそう忠告し、アルフはレオンにも厳しく批判した。何より、男爵という身分はレオンにとって都合のいい相手になる。手を出したとしても身分から泣き寝入りしか許されない。

だから、レオンに恋をした少女にアルフは今までにないほど厳しく当たった。


“ああ~”


レオンに手を出され、捨てられた少女達が泣き付す姿を幾度も見て、自分に出来たのは幾ばくかのお金を握らせること。彼女もその道を辿るのだと冷たい目を向けていた。


“あの男にとって君は遊びだぞ”


忠告と非難がましい目で少女をレオンに隠れて今までの経緯から他の女性達と同じように彼女に対してもそう告げたが少女は寂しげに微笑むだけだった。他の少女達はレオンに愛されていると自慢気にこちらを見下してきたにも関わらず。彼女だけは今までの少女と全てが違った。


“分かっています”


その言葉が何を分かっているかと問い詰めたくなった。


“忠告はしたぞ”


そう言って身を翻しても彼女はただ寂しげに微笑んでいた。唯一、違ったのは他の女性達と違って自分の言葉を嘘だと言わなかったことぐらい。今までは私と彼の仲を邪魔するのかとヒステリックに声を上げる女性が多かったのに。


そこまで回顧して、アルフは肩を落とす。


「私は何がしたいんだ……」


このまま続けば今までと同じように彼女もまた自分の言葉を受け入れず、レオンの毒牙にかかる。そう思った瞬間、なんとも言えない思いがアルフの胸から込み上げる。


「くそっ」


その言葉を吐きながら、アルフは王宮の壁に拳を打ち付ける。


彼女の行動に1番に苛立っているのは他でもない自分自身。


“なんでなんだろう………”


今日もレオンについて学園に登校した際、クラスの中から物言いたげな彼女の瞳を目にした。


「なんで君はレオンなんかを好きになったんだ……」


アルフの口から零れた言葉を聞くものは誰もいなかった。

いつもお読み頂きましてありがとうございます。誤字・脱字がありましたら申し訳ありません。少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

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