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第八話 最低男参上? 学園生活

8:00

ガヤガヤと騒がしい教室内に高く鋭いしかし耳に心地よい声が響く。


「そこまでっ!」


その声の主を目で追うと、立ち上がり周りを睥睨する一人の少女の姿があった。

その声に従ったのか周りの声もピタリと止んだ。


「失礼しました先生。」


そう言ってペコリと頭を下げた少女は綺麗な仕草で着席した。


「すまんな早瀬はやせ。」


「いえ、学級委員ですので。」


ふむ、彼女は学級委員なのか。

たしかに眼鏡を掛けてまさに委員長! って感じがするな。

早瀬と先生が呼んだ少女は、可愛らしいおでこを出しカチューシャで留めていた。

後ろ髪はストレートで背中ほどの長さ。 スラっとした体形と相まって容姿にとても似合っている。

目は気の強そうな感じからすると意外だが少したれ目で眼鏡でうまく隠している。


「……じゃあ如月の席は早瀬の後ろになる。」


俺が早瀬さんを見ていたらいつのまにか話が進んでいた。


「はい」


と返事してそそくさと言われた席へと移動する。

早瀬さんは窓際二番目、つまり俺は窓際三番目か。


「よろしくね如月さん。 私は早瀬はやせ 祈里いのりです。 困った事があったらなんでも相談してね。」


「こちらこそよろしく。。 如月きさらぎ りんです。 ありがとう。 たよりにさせてもらうよ。」


横を通るとき早瀬さんがそう言ってくれたので、軽く会釈して礼をいいつつ席へ。

席に座ると早々に背中を突かれる。

チラリと後ろを見れば、満面の笑みでこちらを見る女の子。


「えへへ。如月さん! 私 橋本はしもと 恵美えみよろしくねっ!」


そう言って橋本さんはニコリと笑顔を見せる。

恵美と名乗った少女はボーイッシュを思わせるショートカットで日に程よく焼けた健康的な小麦色の肌のスポーツが得意そうな子だ。

小柄な身体だが元気があふれ出しそうな印象を受ける。


「ではこれでHRホームルームを終わる。」


「起立、礼! 着席」


委員長の号令が終わり先生がドアの向こうに消えた後、すぐに俺の周りえを取り囲んだ。

そして一斉にそれぞれ好き勝手に名乗ったり質問したりしてくる。

オイオイ、俺は厩戸皇子うまやどのおうじじゃないんだ。 全員の声なんて聞き取れないぞ。


「ハイハイ! 全員落ち着きなさい。」


と早瀬さんが声を上げてくれた。


「なによー祈里ぃ! また委員長のお仕事とか言う訳?」


と、橋本さんが文句を言うと。


「そうだけど、これはあなた達のためでもあるのよ? そんな一斉に話しても如月さんが聞き取れる訳ないでしょ。 時間と順番を決めて一人ずつ自己紹介が正しいわよ。 それに次の授業は川本かわもとよ?」


そう早瀬さんが言うとみんなが一斉に席に戻っていく。


「うげえ川本かぁ。」

「あっ! 私今日タオル忘れたっ!? やだなあ当てられなきゃいいけど……」

「次の休みから出席番号順でいくからね。」

「りょーかい。 いいんちょ!」

「へーい」

「番号順ってことはオレ最期かよ。」


うーむどうも早瀬さんを中心にまとまってるようだなこのクラス。

皆、各々おのおの次の授業の用意をしだす。

にしても。


「川本?」


折角なので、このクラスのオピニオンリーダーに聞いてみる。


「ああ次の授業、数学担当の教師の名前よ。 まあ……どんな人かはすぐ分かるわ。」


そう言って苦笑いを浮かべる。

なんだ? なんか厳しい人なのかな?

すると後ろの橋本さんが話掛けてくる。


「ねえねえ如月さん? 如月さんは鼻はいい方?」


「え? まあ悪くはないけど。」


いきなりの変な質問に振り返りながらそう答えた。


「じゃあ出来るだけ鼻で息しない方がいいよ、川本の授業中。」


そうしたらもっと訳のわからない返答をもらってしまった。

え? それはどういう……

俺がさらに質問しようとするとチャイムがなる。


「鳴り終わったら入ってくるよ! 前向いて。」


橋本さんはそう言うと一度鼻をつまみニヤッと笑う。

チャイムが鳴り終わると同時に教室前のドアが開き、一人の教師が入って来た。

それと同時に俺の鼻に何とも言えない、いやまるで野良犬が入り込んできたのかと思う悪臭が立ち込める。

なんだこれ!?

俺はあわてて口呼吸に切り替えたが、なんか目が痛い。

その間にその教師は教壇へとたどり着き、早瀬さんが号令を出す。


「起立。 礼。 着席」


早瀬さんは、どことなくさっきよりも早口で平坦な口調で号令を終えた。

川本と早瀬さんが言った教師は40代の男性で、ブクッと太った体型のまあフツメン? だった。

口元はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ、生理的嫌悪感を掻き立てる。

内臓のどこか悪いのか顔色が悪いが授業してていいのかね。


「どうやら転校生がいるようだがオレは容赦しないぞ! ビシビシいくからな!!」


川本はそう言い授業を開始した。

……何言ってんだこいつ?


おいおい、普通前の学校の授業内容を聞いてどこまで進んでいたのかの確認とかしないか?

というか容赦しないってなんだよ?

と、その教師の発言に呆れていると、黒板に乱暴な字で問題を書きだす。

ちなみに黒板と言ったがこの学校は電子黒板を採用している。

だがおっさんのさがか、川本は間違えた部分を消すのをもたついていた。

やっと書ききると、川本は一人の女生徒を指名する。

その子は、ハーフアップにした黒髪でおっとりとした容姿の美少女だった。

そしてさらに言うとすさまじい胸部装甲の持ち主である。

まさにけしからん胸である。 最近の子は発育いいなあ。 

ふと見ると川本の眼がその子の胸にくぎ付けであった。

さらにいやに高い所に問題を書くなと思っていたが、少し背の低い彼女が背伸びしながら書いている訳だが、どうも書くたびに胸が揺れているぽい。

ここからではよく見えないのだが、川本の視線で分かる。

最悪だなこの教師。


「こんな問題もわからないのか!」


突然、甲高い声を上げて彼女を罵倒する川本。

途中で手が止まった途端いきなり怒鳴りつけてきた。

と言うかあの問題、去年の某高校の入試問題じゃなかったか?

中学二年生になにだしてやがる。

黒板の前では罵倒が続いている。

しかし……

ヤツはさらに予想しなかった行動にでた。

突然罵倒を止めると彼女の頭をポンポンと軽く叩き囁くように声を掛ける。


「キミはがんばれば出来る子だよ。」


と、たぶん本人はやさしく言ってるつもりな態度で、実際には視線が胸から離れない為たたのキモい行動でしかなかった。

そうしてるとチャイムが鳴り授業が終わりを告げる。


「起立。 礼。 着席」


まだなにか言いたそうにしていた川本を無視して早瀬さんが号令を掛ける。

その早瀬さんに文句をいいたそうにしてたが軽く睨まれてソソクサと出ていった。


「真紀ちゃんだいじょうぶ?」

「ほらタオル! 早く拭かないと!」


声がした方を見て見ると、さっきの少女に友達であろう子達が彼女の頭をタオルで拭いていた。

そして前列では男女問わず消臭スプレーを辺りに吹きかけてる状況が見える。


「川本どうだった?」


橋本さんがそう問いかけて来た。


「なんなのあれ?」


俺は質問に答えずに問い返した。

だが橋本さんは普通に答えてくれた。


川本かわもと あらた 40……3だっけ? 数学教師。」


と、その後を早瀬さんが引き継いだ。


「どうも自分のことイケメンだと思ってるらしいわね。 あと体型は細マッチョだとも思ってるみたい。」


マジか……

その後さらに何人か増えて川本の悪口大会になったが、話を纏めるとこういう事らしい。


自分はイケメンだと思ってて周りにもそう言ってる(職員室でそう発言してるのを聞いた子がいる)

女性にモテて困ってる(と思ってる)

あの悪臭はどうも自分には女性を引き付けるヘロモン(本人談、実際はフェロモンだ)が出ていて、それを邪魔しないように殆ど風呂に入らないらしい。 教師がなにやってんだ!

いきなり罵声を浴びせた後やさしくする(してると思ってる)のはモテテクニックの一つでギャップがいけてると思ってるらしい。

武勇伝で何々中の女子を何人も抱いたとか自慢しているらしい(本当なら淫行で捕まってるはずなんだが……)

川本 新、あらたはシンと読めることからカワシンと呼べと言ってるが、皆無視している(教師ふくめて)


とまあいい話がまったく出てこない訳だが、ちなみにあのタオルは川本専用タオルで女子は全員もってるそうだ。 触られた頭はネチョっとしたナニカが付着するらしい。 俺も用意したほうがいいと言われた。

余談だがさっき被害にあっていた子は矢敷やしき 真紀まきさん。

丁寧にごあいさついただいた。 いい子であった。

アイツ以外はいい先生がほとんどなんだけどねえ、と早瀬さんがため息交じりに呟いたのが印象的だった。







           ~新校舎、2階から3階の間の非常階段の踊り場にて~


川本 新は踊り場にやってくると懐からカードを取り出した。

そこには鎧を纏った美丈夫が書かれていた。

川本がこのカードを拾ったのは昨日の事。

このカードを見ていると心が沸き立つ感じがする。 そう川本は感じていた。

この世の中は悪で溢れている。

自分がそれを正さないといけない。 彼は常々つねづねそう考えていた。

自分こそが救世主なのだ。 そう決意をあらたにして踊り場を離れる。

その際に懐にカードを仕舞うのだが、その懐に収まる瞬間カードの絵柄が変わり、醜悪な姿のナメクジへ変わる。

だが川本はそれに気づかない。


彼らの魔の手は着々とこの街に広がっていた。






                   To Be Continued……




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