第七話 ワクワク? 学校体験
嵐のようにして夏姫さんが去って行ってからすぐ。
俺は発生した問題をジークと相談することにした。
『なにが問題なのだ?』
ジークが問題が発生したと言った俺に対して、そもそもなにが問題なのかと聞いてくる。
「それは学校へ行く必要が出て来た事が問題だ。」
『む? しかし悠長に学校へ行っている暇はないはずだ。』
とジークは言う。 たしかにジークからすれば、学校へいく間に犯罪者を探して辺りの捜索をしたい所だろう。 だが……
「今朝の事を思い出せ。 少なくとも人がいる場所での捜索は無理だ。 この見た目のせいでサボリだと思われる。」
俺の言葉にジークが低いうなり声を上げる。
そして。
『たしかに、だが人目を避けて捜索する事も可能なはずだ。』
と食い下がってくるが、それだけが問題じゃない。
「最大の問題は夏姫さんだ。」
そう彼女が問題なのである。
『彼女が? どういう事だ?』
そのジークの疑問に答えてやる。
「俺は彼女と交友持った。 それ自体はいい。 問題なのはそれによって学校へ行かない事などで彼女が俺に不信感を持つ事だ。 ただ嫌われるだけならいい。 が、彼女は記者だという。 それも今朝の補導員に対する対応を見たか? たぶん彼女は有能だ。 そこからこちらを探られるかもしれん。」
そう彼女は有能だと思う。 あれだけの対応で、俺が彼女を苗字で呼んだあとにもかかわらずだ。 なにやら事情があります的な雰囲気を醸し出して相手をあっさりと引かせた辺りを見て、少なくとも対人関係に対するスキルは高いと思う。
それに……
帰り際に言った事を思い出す。
「この一連の怪人事件、きっと繋がってると思うの。」
そして彼女は、この事件に対してすでに手掛かりを得ていた。
それに対する情報が入ったと連絡が入ったのだ。 あの携帯はそう言う事らしい。
電車事故から3日と経っていないのにだ。
有能すぎるだろあの人……
『むう、たしかに……』
「俺だって今更中学に通うなんてゴメンだが。 こっちの身辺を探られたら犯罪者探しどころじゃないぜ。」
『致し方なし……か。』
そう独りごちるとジークは深いため息をつくのだった。
あれから制服を買いに出かけ、なんとかサイズのあう物があったためそのまま購入し、ジークがネットを介して近くにある市立の中学、元俺の母校だが、に転入できるようにした。
「しかし高原中学か…… まさかまたあそこに通う事になるとはなぁ。」
おれがそう愚痴ると。
『かつての母校か。』
ジークがそう聞いてきたので。
「そうそう、まあ木造のオンボロ校舎で歴史だけが自慢の学校だったがな。」
とそうジークに返した。
なんやかんやで、と言うかジークの努力によりどうやったかわ知らないが、次の日には学校へ編入出来る事になった。
そんな訳で初登校だ。
……いきたくねぇ。
などと言える訳もなく、重い足を引きずり昔の記憶を思い起こしながら中学への通学路を歩く。
市立高原中学校の制服は学ランにセーラー服だ。
取り立てて特徴のないスタンダードなセーラー服だが、自分が着るとなるとなんか変な気分だ。
途中バスに乗り中学に到着する。
自転車買ったほうがいいかもしれんな。
そんな事を想いながらバスを降りる。
すると……
目の前には真新しいというほどではないが清潔感あるコンクリート建ての校舎が目に入る。
あれ? 間違えた?
俺はあわてて学校の名前を確認するが、ここが高原中学で間違いないらしい。
なんてこった校舎が新しくなってやがる。
校門や塀に至るまで新しく生まれ変わっていた。
とはいえここ数年で建て替えた感じがする。
そしてまだ完成してないのか奥に木造の建物が見える。
行くか……
俺は真新しくなった校門を抜け近くの校舎に進む。
正面玄関を潜ると受付? 事務室? があったので要件を伝え職員室の場所を聞いて校舎の中へ。
さほど事務室から離れてない場所にあった職員室を見つける。
ノックをして入室の返事を待ち中へ。
中はHR前のためか教師が多くいた。
俺が入口でキョロキョロしていると、一人の男性教師が近づいてきた。
「もしかして如月さん? 転入生の。」
そう言われたので頷くとその男性教師はニコリと笑うと自己紹介を始める。
「俺は諏訪 雄二 きみの担任になる。 担当は世界史だ。」
そういって諏訪先生は自分の席まで案内する。
それから学校における諸注意などや書類に不備がないかなどを確認した。
しかし、諏訪か…… 同級にそんな名前のやついたな。
なんとはなしに諏訪先生の顔を見る。
顔はまあイケメンで通る顔だちをしている。 髪は短く清潔にそろえている。
歳は前の俺と同じくらいで20代後半ってところか。
体つきは筋肉質でマッチョというよりはアスリート体型といった感じだろうか?
後で聞いた話だが彼は水泳部の顧問らしい。 自身も元水泳選手だったとか。
パッと見体育教師に見えるくらいだ。
「これから教室に向かうが如月、ご家族の事は俺から生徒に伝えるか?」
そう言ってくれたが折を見て自分から言うと伝えると、そうかと呟いた。
「あー、そのな? 実は俺は君のお兄さんと同級だったんだ。」
だから困った事があったら遠慮なく言えよ。と言って立ち上がる。
「そろそろ時間だ。 いこうか。」
そう言って教室に向かう。
うーむなんかドキドキしてきたな。 緊張するぜ。
俺は2年生ということになっている。 ので教室は2年のA組だそうだ。
この学校は1クラス30名ほどで2クラスある。
昔は3~4クラスくらいはあったが少子化の影響だろうか。
着いたが。
諏訪先生が立ち止まった教室前、呼ぶまでちょっと待っててくれと言い置いて教室の中へ入っていく。
ざわついていた教室内は先生が入室するとピタリと声がやみ静かになる。
ふーん、最近の子はちゃんとしてるのか、先生が信頼されてるのか。
そんな事を考えてる間に中から漏れ聞こえる先生の声が転校生が来たことを説明していた。
やがて扉が開き、先生が俺を呼ぶ。
そのまま教室に入り、教壇の所まで進む。
俺が黒板に名前を書き生徒の方を向き直ると、それまでシンとしていた教室がにわかに騒がしくなった。
なんだなんだ?
俺は突然の事に内心焦っていると、察してくれたのか先生が苦笑いしながら場を鎮めてくれた。
「おーい皆落ち着け! 如月が困ってるぞ。」
静かになった教室を見渡した後。
「では如月、自己紹介を頼む。」
そう言って先生は俺に自己紹介を促してきた。
そう言われ俺は心持ち前に出ると、昨日ジークと考えておいた設定を話し出した。
「皆さん初めまして。 この度この学校に転入する事となった如月 凛と言います。 日本は久しぶりなので変に思われる事もあるかと思いますが、その時は教えてくれると嬉しいです。 これからよろしくお願いします。」
そうなのだ。 俺は海外暮らしが長いという設定で行くことに下。
これでTS化によって生じる認識の違いによる変な行動も海外暮らしが長いことによる常識の違いとして誤魔化す事が出来るハズだ。
さて、生徒達の反応はどうかな? 不信がられてなければいいんだが……
そう思い様子を窺おうと注意を向けると。
うおおおおおおおお!
と歓声が上がる。
うおっ!?
さっきよりも激しい反応に思わずビクリとなった。
「かっかわいい」
「海外からだって! こういうのなんて言うんだっけ?」
「帰国子女じゃなかった?」
「それだ!」
「やさしく教えたい」
「アンタ変態くさい発現やめなよ」
「ああ罵って欲しい」
「もっと変態発言キター!?」
教室内は絶賛大混乱中であった。
To Be Continued……