第ニ話 新生活始めます 1
8:00
今回短いです。
俺の初戦闘、線路上の戦いから数時間が経過しやっと家にたどり着いた。
……うちが持ち家で助かったぜ。 これがアパートなんかだったら説明が大変だったろう。
俺は変わり果てた自分の姿を見下ろした後、家の中に入った。
キッチンでインスタントコーヒーを入れ、ダイニングのソファーへ座り込む。
一口コーヒーを口に入れてから、今まで沈黙を保っていたジークに語り掛ける。
「さて、ジーク? 色々話してもらうぞ。」
『うむ、了解した。』
その後ジークの語った内容を纏めると、ジークの所属する星間警察機構の大本、汎銀河国家は多数の銀河へ版図を広げているらしい。 ちなみに太陽系は、今だ人類が汎銀河国家の参入の水準を満たしていないため接触すらしていない状態だそうだ。
犯罪者が太陽系に向かったのもそこらへんが狙いのようだ。
銀河規模で国家を形成している所は他にもあるそうだが今回は関係ないので割愛する。
ふあ……
その汎銀河国家が定める法に著しく逸脱した犯罪者、特異犯罪者というのが今回の事件を引き起こした。
特異犯罪者とは、星系規模を超える犯罪を犯した者の事らしい。
先の折、ジークの語った狂気の天才犯罪者ド・ラウヘルは、汎銀河国家加入のある銀河系を巻き込む犯罪を成し遂げたSS級のヤバイ奴らしい。
生物の進化先の無理やりな変更や掛け合わせ(キメラ化)などなどやりたい放題だったらしい。
……そんなヤツが地球にきてる事自体最悪な状況だと思う。
くあぁ…… むにゃ。
とは言えデータ化処理。 この処理によってそこまで大きな犯罪は出来ないだろうというのがジークの考えだ。 ねむ……
データ化処理とは特異犯罪者のみが受ける特殊な刑罰で、身体や魂をデータに変換し逃亡や獄中でのトラブル防止を狙った物だそうだ。 まあ今回は逃亡された訳だが。
他にも色々あるようだが、如何せん眠気が……
『そもそも……』
「あージーク。 すまんがストップだ。」
俺はさらに語り出したジークを止めた。
『む?』
「悪いが今日はそれぐらいにしてくれ。 正直眠い。」
『ふむ…… 確かに今日は色々あったからな。』
ジークはそう言うと語るのをやめてくれた。
さてとりあえずもう寝るか。
実はかなり限界ぽい。
風呂は…… 明日でいいや。
俺は目を擦りながら寝室まで何とか歩き、そこでベットに潜り込んでから泥のように眠った。
次の日の朝、昨日のことは夢? なんて勘違いを起こす事も無く、俺ははっきりと状況を理解していた。
『おはようリン。』
まあジークが起こしてくれたからってのもあるんですがね。
「おはようさんジーク。」
ジークにあいさつを返し起きることにする。
日課のランニングだが、今日はやめておく事にする。
そもそもジャージのサイズが合わなくなったのがなあ。
今日は服を買いに行かなければいけないかもしれない。
予想外の出費に頭を抱えそうになる。
『リン、風呂にでも入ってきたらどうだろう。』
ジークがそんな俺を心配してかそう提案してきた。
そうだな、昨日は入ってないし朝風呂でも入ってさっぱりするか。
俺は深く考えずに風呂に入る事にした。
風呂での出来事は割愛する…… いや割愛させてほしい。
女になってるんだった。 別に女の裸を見たことがないって訳ではなかったが、自分がそうなるとやはり勝手が違うというか。 いやよそう。
余計なストレスを抱えながら台所で朝食の用意を済ましリビングへ。
朝食は食パン二枚と目玉焼きにザワークラフトに付けていたキャベツがあったのでそれを、後はコーヒーで所謂洋食メニューというやつだな。
『なかなかの食事だな。』
俺が朝食をお盆に乗せてリビングに行くと、俺のスマホの上に載せていたジークが声を掛けて来た。
なぜジークがこんな状態になっているかと言うと、それは俺が風呂に入る前のことだ。
風呂に入るためにジークを外した訳だが、その際ネットに繋がれる器機に触れさせてほしいと頼まれたのだ。
そこでスマホの上に置いておいたと言う訳なんだが。
「で、結局なんの目的でネットに?」
との問いにジークは。
『うむ、まずリンはこれまでと大きくのそ姿を変え元の生活通りとはいかなくなったと思う。』
まあ確かに、仕事は間違いなく首、ていうか事故で死亡扱いだろうから首ではないのか? どうなんだろう。 そもそも戸籍の事もある。 これが一番重要だなあ。
『そこで私がネットを利用して新たなリンの戸籍の偽造をおこなった。 それに合わせてリンの財産も増やしておいた。』
は?
どういうことだ?
寝耳に水である。
「おいジークちゃんと説明しろ!」
俺は慌てて説明を求めた。
『うむ? いやこの国で戸籍がないというのはいささか問題があると思ったので、なにか問題でもあったのか?』
「いや問題じゃなくてどうやったのかと」
『ああ、ネットに繋げれる物を借りただろう? それを使ってな。 今だ幼い技術だから私のつたない技でもなんとかなったのだが。』
幼い技術…… ねえ。 いささか引っかかる物言いだがそれはまあいいとして。
「で、結局どういう風になったんだ?」
『とりあえず如月家の長女ということにして、訳あって海外で暮らしていたということにした。』
「なるほど、んで今回戻って来たという風にする訳か。」
まあそれが無難か? 両親も海外出張が多かったし知り合いもさほど不思議には思わないかもしれないな。
「んで財産を増やしたっていうのは?」
どちらかというとこっちの方が問題かもしれない。
俺の問いにジークはなんでもないかのように答えた。
『ああそれはリンが元々持っていた銀行の預金を用いて、デイトレードや株の売買などで資金を増やしたのだ。ネットハック以外の違法性はないと約束しよう。』
どれほど増やしたかはわからないがたしかに助かる。 その確認も含めて今日は買い物にいくか。
『一つ質問があるのだが。』
そう考えていたらジークが問いかけてきた。
「なんだ?」
『リンは先ほどの戦いで見事な戦闘術を披露していたがあれは? リンは一般人だと認識していたのだが。』
「ああ、一般人だとは思うぜ? 元はただの会社員だし…… だったし。 ただ、うちは小さい道場持ちでな。 ああ、そこから見えるかな?」
そういって庭の方を見やるとそこにはオンボロな小さな道場が見えた。
「あれが家が代々伝える如月流骨剣術の道場だ。」
俺は立ち上がりジークを腕にはめると、道場へ向かって歩き出す。
いやいややっていた物だがこれのお陰で助かったのも事実だ。
俺は道場の鍵を開け中に入った。
To Be Continued……