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第一話 ハジマリを叫ぶ前奏曲(プレリュード)

8:00

俺、如月きさらぎ 倫之助りんのすけの平凡な、そして退屈な日常は一瞬にして崩れ去った。






ようやく消えた炎の残熱が身体を焼く。 うめき声を上げていた乗客の声が聞こえなくなっているのは俺の耳が可笑しくなったためか、それとも彼らがうめき声を上げれなくなったためか……

両足を襲った激痛も今ではなにも感じなくなっている。

俺ももう持たないかもしれない。


上下がひっくり返った電車内で、天井であった床に倒れたままなぜこんなことになったのかを思い返していた。 まるで走馬燈のように……





その日は、何時もと変わらない月曜の朝だった。 

日課のジョギングを終え、朝食を取り会社に行くために駅まで歩く。

そういえばたまに見る美少女、たぶん高校生だろう子を今日は見れてラッキーとか思ってたな。

もちろん声を掛けるなんて真似はしない。 通報案件だからね!


そのまま電車に乗り込み、開いてる席に座れたのもラッキーだった。

これは今日は運がいいぞ、などと思ってしまうのは仕方ないことだろう。


しばらく電車に揺られ、昨日の特撮ヒーローのことを思い出していた。

特撮ヒーローは俺が子供のころから大好きで大切にしている物だ。

これに関していえば、オタク趣味と言われても仕方ないと思ってる。

まあ周りにカミングアウトしたわけでもないのだが。

ちなみにその流れというのも変だが、プリティでキュアキュアなのも大好物である。

いっそこの二つが合体した作品などあればいいのになどと妄想していた。

その妄想は今朝見た美少女を勝手に出演させ、戦うヒロインと化していた。

そしていざ必殺技を放つ時に、強い衝撃が襲った。


それは天地をひっくり返すような、いやまさに上下の間隔が分からなくなるほどの回転が俺を襲った。

俺が覚えているのはそれくらいだ。

あとは痛みやら熱さで意識が朦朧としていたのだ。


『聞こえるか地球人よ。』


……だめだ、幻聴まで聞こえてきやがった。

なぜ幻聴と思ったか? それは声が聞こえて来たのが俺の親父の形見である古い腕時計からしたためだ。

なぜかはっきりわかってしまった。


『幻聴ではない。 聞こえているようだな。 私の名はジーク、あまり時間がないので手短に伝える。 私と契約し協力してほしい。 そうすればキミを救うと約束しよう。』


きょう……りょく? 一体なにをするっていうんだ?

すでに声も出せなくなっていたが、ジークと名乗った存在は心が読めるのか問題なく対応してきた。


『この事件を引き起こした存在、特異犯罪者を捕らえるための協力だ。』


……この事件は人為的に起こったてのか?


『うむ、協力してもらえるなら身体の修復中に説明したいと思うがどうだろうか?』


協力すれば俺は助かるのか?


『保障しよう。』


なら、協力する! 俺を助けてくれ!!


『心得た。 では修復を開始する。』


そうジークがいった後、身体が淡い光に包まれた。

まるでぬるま湯に漬かっているかのような安心感とまるで生まれ変わるかのような感覚がやってくる。


『一つ謝罪しなければならない。』


ん? なんだ?

ジークがとても申し訳なさそうな声で謝ってきた。


『修復に必要なリソースが足りない。 これでは元の肉体そのままと言う訳にはいかないようだ。』


マジか… どうにかならないのか?

俺は慌ててジークに問うた。


『……リソースに見合うだけの体積に縮める必要がある。 さらに』


そうしてくれっ!

俺は食い気味にジークに願った。 身体が少しくらい縮まろうと死ぬよりましだろう。


『分かった。 では縮小と女体化を始める。』


ん? 今なんて言った?

俺がジークに問いただそうとした時、光が輝きを増しだした。


『ではこの間に契約内容の説明をしよう。』


俺がなにか言おうとする前にジークが語り出した。

しかたない、後で問いただそう。

契約内容はちゃんと聞かないとな。


『まず私は星間警察機構の警察官だ。 現在、特異犯罪者の護送任務中……だった。』


ほうほう。

宇宙にも警察があるのか。 などと変な感心をしつつ続きを促す。


『その犯罪者達はデータ化処理をされ、これは身体や精神をデータに変換する刑罰なのだが、そうして護送船にて護送していたのだが、その中に一人の狂気の天才犯罪者がいたことがこの事件の始まりだった。 ヤツはどうやったのかデータ化中にも関わらず船のコントロールを奪い、この星に進路を取りそしてこの星にほかの犯罪者共々逃げ出すことに成功したのだ。』


なんてこった。 ん? そのときジークはなにをやってたんだ?


『うむ、丁度私は休眠期に入っていて対応が遅れてしまったのだ。』


なんてこった。 まあそいつがジークが休眠期に入ったからこそ行動を開始したんだろうが。


『ヤツらが地球へと逃れた後、すぐに私も行動を開始した。 まず私の意識を複数に分け、地上へと降り立ったのだ。』


分ける? なんでまたそんな真似を?


『もちろん現地人への協力を要請するためだ。 ヤツらはかなり広範囲に散らばったからな。』


マジか、日本だけじゃないってことか。


『そうだ。 だから…… ん、修復が完了したようだな。』


ジークがそういった瞬間、身体を覆っていた光が消えた。


そこには……

背中に届くほどの長い黒髪、ほっそりとした、だが均整の取れた身体、そこには決して大きくはないがまったっくないとは言えない胸のふくらみがあった。

俺は慌てて股間に手を伸ばす。


……ないっ!?

俺のビック、いややめておこう。 虚しくなるだけだ。


女体化って、にょたいかってマジで女になることだったのかあっ!


いや切り替えよう。 今は生きているだけでラッキーなんだ。


『すまない。 だが現状ではそれが限界なのだ。』


ん? 現状では?


『うむ、犯罪者を全て捕らえることが出来れば私は母船に戻ることができる。そうすれば船のリソースを使う事も出来るだろう。』


つまり犯罪者を全員捕まえれば、俺は男に戻れると。


『その通りだ。 呑み込みが早いな。』


よし、やってやる。 犯罪者を全員捕まえてやるぜ!

と、決意した所で俺は電車から出ることにした。

割れたガラスに気を付けながら窓から抜け出す。

ちなみに服は着ている。 ジーンズパンツにTシャツにスニーカーという恰好だがこれはどこから?

などと考えてたら、ジークが俺が元着ていたスーツを再構築したものらしい。


改めて周りを見渡す。


……ひどいな。 辺りはまさに地獄さながらだった。

俺の乗っていた車両は線路から大きく外れ、天井を下にしてさらに焼け焦げていた。

二両目以降も同様だ。 生存者はいるのだろうか?


俺が他の車両へと向かおうとした時、三両目、脱線している始めの辺りから何かが飛び出してきた。


「なんだ!?」


それは奇妙な姿をしていた。

身体はツルンとした鈍い銀色をしていて、右腕だけがやけにゴツい。

その右腕はまるで蟹のハサミのような形をしていた。

違う所といえば、ツメに当たる部分は刃となっていて下ハサミの所は正面に穴が開いている。

そしてソイツは俺の声に反応を示し、此方を向いた。


なぜだか確信をもって言える。 コイツがこの事故を起こした犯人だと。


『そうだ。 ソイツがこの事件を起こした犯人だ。』


ジークの肯定の声にも怒りを感じた。


「ジーク、俺はアイツを倒す力はあるか?」

俺はカニ野郎を睨みながら問いかける。


『もちろんだ。 キミにはキミが望んだ力を与えた。 わかるはずだその力を。』


……そうだな。 感じる。 俺の中にある力を

ならばっ!


「いくぜジークっ!」


『問題ないすべて良好だ。』


俺は右手を前に突き出し手のひらを空へと向ける。

そして。


「イグニッション!」


その声に反応し手のひらの上に炎が灯りその中から一枚のカードが現れる。

俺は左手を見る。

すると、腕時計がその姿を変え箱型のブレスレットになっていた。

白を基調とし、真ん中に半球状のクリスタルの様な物が嵌っており、それを中心として赤いラインが十字に走っている。

そのブレスレットの一部が上にせり上がり、スリットが姿を現す。


「変身!」


俺は勢いよく叫びながら、そのスリットにカードを差し込む。


『メタモルカード・タイプファイター リーディング』


ジークの言葉と共に俺の身体が光に包まれる。

その光の中で俺は変わる。 少女から戦士へと。


元々長かった背中までの黒髪は地面に着きそうなほど長く、そして輝く銀髪に。

身体を覆う服は、メイド服のようなデザインへ。 脚にはニーソックスが。

そして身体のあちこちにメカニカルなパーツが各所を覆う。

頭にはこれまたメカニカルなプリムカチューシャが装着され、その時に長い髪はツインテールにまとめられた。

最期に顔を濃緑色のバイザーが顔を覆う。


『メタモルフォーゼ・コンプリーテッド』


その声で俺の身体を覆っていた光がはじける。


これが俺が得た力。 俺の理想か……

いいっ! とてもいいっ!

まさにヒーロー! やってやるぜ。


『思うままに戦うがいい。 リンノスケ ……いやリン!』


たしかにこの格好で倫之助はおかしいか……


「よろしくたのむぜジーク!」


そういえばカニ野郎は……

俺がカニ野郎を探し前に目を向けると、ヤツが右手をこちらに向けている所だった。

とてつもなくイヤな予感!

俺の全身を悪寒が走る。

その予感に従って身をねじるのと、ヤツの腕から発射された光弾が俺の横ギリギリを通り抜けていくのは同時だった。


「あぶねえっ飛び道具かよ!」


光弾が着弾した地面を見ると大きくえぐれている。

かなりの威力のようだ。


俺は考えるより早く地面を蹴りヤツに接近する。

遠距離は不利だ。 接近戦で!

強化された身体能力で素早くヤツに接近する。 その間も数発撃たれたがからくも躱す。

そのままの勢いのまま、強く踏み込みパンチを叩き込む。

それは容易くヤツを捕らえよろめかせた。


しかし口がないせいかうめき声の一つも上げないから効いたのか分かりずらいな。

なら倒れるまでぶん殴る!

俺はさらに踏み込み拳を、時には蹴りを叩き込んでいく。


その猛攻にカニ野郎は吹き飛ぶ。

湖面を何度も転がりながらも体制を整え起き上がる。


再び距離を詰めようと足に力を入れたその時、ヤツの頭からメキメキと音がして顔に大きな横線が生まれた。

そしてその線は大きく開いた。 そう口のように。

そして凄まじい絶叫を上げた。


「GUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」


それ絶叫は凄まじく、線路の一部が浮き上がり千切れ飛んだ。


そして右手の刃部分が伸び、80cmほどの長さになった。

そして今度はヤツから距離を詰めて来た。

俺ほどではないが素早い動きでヤツは肉薄すると、袈裟懸けに切りつけてきた。

俺はその攻撃を躱しカウンターを叩き込むがヤツは右手の部分で防ぐ。

分厚い壁を殴りつけたような感覚。

殴った拳に痛みが走る。


……硬ってえ!?

それから数回ヤツの攻撃を躱し、こちらも攻撃するもどれもヤツの右手に防がれる。

しだいにヤツの攻撃回数のほうが多くなってきた。


たまらずに俺は、慌ててヤツから距離を取った。


「おいジークなんか武器はないのか? 出来れば刀希望!」


『残念だが武器は今の所ない すまない。』


くそっ。

ないならしかたない。 取りあえずあの右手をなんとかしないと。


『いや待て、武器ではないがこれは使えるかもしれない。 リン、右腰にあるカードホルダーへ手をかざしてくれ。』


俺は言われた通りホルダーへと手を伸ばす。

するとホルダーの蓋が開き、手の中にカードが飛び込んできた。


『それを私に。』


「わかった!」


カードをジークのスリットに差し込む。


『スキルカード・キックブースター。 リーディング。』


その声と共に、ニーソックスの外側に赤いラインが走る。


『コンプリーテッド。』


俺の脚は大きくその姿を変えていた。

足首の部分にあったメカパーツはひざ上までその範囲を広げ足甲のような物に。

そこから感じる力強さは安心感を覚えるほど。


『このスキルでリンの脚力は数倍になっているはずだ。』


なるほど脚力が…… これなら!


「ナイスだジーク!」


よし、反撃開始だ!

俺は踏み込みのために地面を蹴りつける。

するとまるで瞬間移動したかのようにすぐ目の前にヤツが。

俺も驚いたが、ヤツも驚いたのだろう。 慌てて刃を突き込んできた、


その腕もらった!


俺はその攻撃に合わせて跳躍する。

だがこれは回避じゃない。

……攻撃の前動作だ。


飛んだ俺は頭を後ろにし水平状態になる。

そして、足は右足を上に左足を下にそれは龍の咢のような形に。

その口は突きだしたヤツの右腕を狙っている。


如月流(きさらぎりゅう骨剣術こっけんじゅつ 竜骨砕りゅうこつさい!」


裂帛の気合いと共に龍の咢が閉じられる。 超強化された両足で挟み込んだヤツの右手は凄まじい音と共に砕け散る。

そのまま俺は地面に落下する。 受け身を取りながら数回地面を転がり間合いを開けるが、ヤツはそれどころではないようだ。


砕けた右腕を押さえながら呻き此方を見ていない。


追撃を掛けようとしたが、スキルの使用時間がすぎたのか、足は元に戻っていた。


「ジークもう一度だ。」

俺はそう言ってもう一度キックブースターを要求した。 だが。


『いや、今のヤツならリアライズが可能だ。』


リアライズ? それは一体……


『リアライズ自体はこちらがやる。 キミのやることはシンプルだ。 ヤツにトドメを。』


なるほどね。 ジークから流れ込んできた情報を瞬時に理解した俺はカードホルダーに手を伸ばす。

それと同時にブレスレットがさらに持ち上がり新たなスロットが姿を見せる。 その数は3.


俺の手に三枚のカードが飛び込んでくる。

俺は連続でその三枚のカードをジークに投入する。


『マジックカード・フレイムボディ。 スキルカード。ダブルジャンプ。 スキルカード・キックブースター。 リ、リ、リ、リーディング。』


ジークのその声の後、三本のリングが俺を取り囲む。

そして一本のリングが消えると、俺の身体が炎に包まれる。 これはフレイムボディの力。


「はあっ!」


掛け声を上げ跳躍する。そして空中で二本目のリングが消える。

俺はさらに空中を蹴る。 それはカニ野郎へ向かっての踏み込み。 これはダブルジャンプの力。

最期のリングが消え再び両脚が足甲に包まれる。 これはもちろんキックブースターの力だ。


俺は空中で回転し足をヤツに向ける。

そして。


『「ファイナルアタック。 バーニングキックエンド」』


二人の声が重なる。


消えていたリングが俺の前にトンネルのようにして現れる。

それをくぐりながらさらに勢いを増しヤツに向かい突き進む。 まるで一本の炎の矢のように。

逃げようとするヤツをあっさり貫き、地面を滑りながら着地する。


「GUAAAAAA!?」


絶命の悲鳴を上げながらカニ野郎は爆発する。 が、しかしすぐに爆発を囲うようにして三本のリングが現れる。 そこに 『リアライズ。』 とのジークの声で時間が止まったかのようにその爆風がピタリと止まり、やがてキラキラとした粒子となって消滅する。

その粒子が消えるとそこには一枚のカードが現れた。

そのカードは俺に向かって飛んできた。


「おっと。」


捕まえたカードを見て見るとそこには、アイテムカード・ソードマギカとあった。


『どうやらフェイクデータだったようだな。』


ジークが話しかけて来た。


「フェイクデータ?」


俺は効きなれない言葉に聞き返す。


『うむヤツらが地球に逃れるとき私の目くらまし目的で作った偽のデータだ。 だが偽とはいえかなり厄介なもののようだな。』


「つまり犯罪者本人じゃなかったってことか?」


俺の問いにジークは頷いた。


マジか。 そう簡単にはいかないようだ。


『とにかく変身を解こう。』


「そうだな」


『メタモルフォーゼ・フォームレリース。』


その声で俺の変身が解け装備が光の粒子となって空へと立ち上っていった。

すると今まで聞こえなかったパトカーや救急車のサイレン音が聞こえだした。


『とりあえず場所を移そう。』


たしかに警察に捕まってもメンドウだ、

俺は足早にその場から立ち去ることにした。






                                 To Be Continued……








友人からせめてなぜ女体化したのか書けと言われたのでついでに続けてみました。

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