第十二話 問題発生! みんなとお買い物
8:00
途中トラブルはあったが、午前中は問題なく(俺のスカートを絶対買うガールが二人現れた事は除く)昼食を取ることになった。
恵美が回転寿司を食べたいということで、店内に入ってるテナントを調べてみると…… あった。
「一階の飲食スペースにあるっぽいね。」
俺がそう言うと、恵美はその場で駆け足のように足踏みを始めた。 どうやら早く行きたいアピールらしい。
「はいはい、行くから焦らないの。 まったく。」
祈里は恵美のそんな様子に苦笑を浮かべる。
俺達はそのまま一階に降りて回転寿司屋へと向かった。
昼時だし多いかなと思ったが、それなりに混んでいるが並ぶほどではなくすんなりと入れた。
テーブル席に案内され、俺は茶わん蒸しを祈里は味噌汁を注文した。
「うおー! 食べるぞー!」
と恵美は迷惑にならない程度の声量で叫ぶと? レーンから何品か取り出す。
俺と祈里はタッチパネルをテーブルに置き、まずは祈里に注文をさせる。
「あらいいの?」
「まあ後でもいいさ。 回ってるレーンを見るのもいいし。」
俺はそう言ってレ-ンを見た。 しかしあまりそそるようなネタは流れてないな。
俺はそう思い婦と恵美の方を見やれば、すでに5皿目に突入していた。
「早っ!?」
「恵美はどこでもこんな感じよ?」
慣れなさい、とでも言うかのように祈里はそう言って注文し終えたタッチパネルをこちらに向けて来た。
なににするか、とりあえずオニオンサーモンだな。 あとは炙りサーモン。 それと……
「……サーモン好きなの?」
俺の注文を見るとは無しに見ていた祈里がそう尋ねて来た。
俺の注文はと見れば、オニオンサーモンに炙りサーモン、トロサーモンにイクラ乗せサーモン。
うん、見事にサーモンだらけだな。
「うん好き。」
俺はなんだか恥ずかしくなってつい頬を赤らめてしまった。
「こっこれはなんて破壊力!」
「たいちょー!? わ、我が軍は壊滅状態ですっ!?」
……二人してなにやってんだ? 突然変なことを言い出した二人を尻目に俺はやって来たサーモンをほおばる。
うーんうまいっ!
回らない高級寿司も接待で行った事はあるが、俺の貧乏舌ならこっちのが合ってるな。
ちょっと情けない事を思いながら食べ進める。
恵美は手あたり次第といった様子でレーンから流れてきたのを取っている。
祈里はハマチ、アジ、イカなどを食べた後マグロを食べ箸を置いた。
「ちょっと食休み。」
そう言って苦笑いする。
まあ女の子だもんな。 そんなに食えないか。
……とはいえ俺の視界の端にはすでに十皿を超えようとしている猛者がいるが。
最終的に俺7皿、祈里5皿とデザートのチーズケーキ。 そして恵美が……
「10、と5皿で15皿になります。 お会計はレジでお願いします。」
なんと店員さんが数えた結果、15皿であった。
すごいな男の時でも15皿はなかなか食べれないぞ。
と驚愕しながらレジへ向かうが、レジ前は結構混んでいた。
これは少し待ちだな。 と思っていると恵美が話しかけて来た。
「ねえねえ、お寿司屋さんのお会計ってお愛想っていうんでしょ?」
恵美がそう言ってちょっとドヤ顔決めてきた。
うむ、恵美は小動物可愛いな。 そんなことを考えていたら、祈里がなにか言いかける。
と、そこに俺達の後ろにいた中年サラリーマン風な二人連れの内の一人、先輩であろう方が皮肉げに此方に聞こえるようにとなりの男に話しかける。
「おい知ってるか? お愛想ってのはお愛想悪くてすいませんって意味で店側が使う言葉なんだよ。お前は間違っても使うなよ?」
「え! マジっすか!? 知らなかった先輩物知りっすね!」
後輩にそう言われ先輩の方はこちらを見ながらドヤ顔を決めて来た。
ウゼえ……
ふと恵美の方を見ると、ショボンとした表情を浮かべ下を向いている。
祈里はバツが悪そうな顔をしていた。 祈里は知ってたな。
だがな……
「恵美、お愛想っていうのは、元々京都のお寿司屋さんが始めた言葉でね。 意味はお愛想悪くてすいませんなんだけど、別に全国のお寿司屋さんが使ってた訳じゃないんだ。 で、お客の一人がその言葉を聞いてそれは面白いっていって使いだしたんだけど。 それを雑誌が取り上げてお客が使う言葉として全国に広まったんだ。 それが明治の時だよ。 だから結構昔からお客が使う言葉として伝わってるんだ。 だから恵美は間違ってないよ。」
俺はそう言って恵美の頭を撫でてやる。
二人組の先輩の方は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべスマホをいじり出した。
後輩の方はそんな先輩を見てオロオロしている。
そうこうしてるうちに俺達の会計の番となったので手早くすませて店を出た。
「凛って物知りなのね。 私あの男の人が言ってる方で覚えてたわ。」
と店から出て暫くして祈里がそう言ってきた。
俺は肩を竦めて答える。
「別に物知りってわけじゃないよ。 たまたま知ってただけで。」
俺がそう言うと恵美が抱き着いてきた。
「凛ちゃんかっこよかったよ! 決めた、あたしも神聖凛様同盟に入るっ!」
なに、そのシンセイリンサマドウメイって………
抱き着く恵美の頬を両側から引っ張りながら神聖ナンチャラのことを尋ねた。
「いひゃいいひゃい!? ひどいよ凛ちゃん。」
「いいからさっさと話す!」
頬っぺたを俺から解放すると抗議をしてきたがさっさと話せと切り返した。
祈里は無関係を装っているようで他所を向いている。
「えーとね、凛ちゃんが転校してきた時にできたファンクラブの一つだよ?」
ファンクラブ!? なんだそれは…… いや待て一つって言ったか?
つまりまだ存在するってことか!?
「神聖凛様同盟でしょ? ラブラブリンリンファンクラブに凛お姉様をお慕いする会に凛ちゃん守り隊…… くらいかな?」
いやいや、くらいって多いわっ!
俺があまりのことに頭を抱えてると祈里が肩に手を置いて慰めるように話し掛けて来た。
「まああきらめなさい? 私にも二つほどファンクラブがあるし、恵美にも三つあるわ。」
となんの慰めにもならない事を言う。
まったくどうなってるんだウチの学校。 自由すぎかっ!?
その後は何事もなく三人で帰路につくのだった。
ファンクラブの事は考えないようにして……
~松本宅にて~
「どいつもこいつもルールを守らないクズばかり! なんなのルールは守るためにあるんでしょう!?」
その女、松本 久子は憤っていた。
ルールを守らない若者に。 平気で他者を傷つける者に。
彼女は学生の時から正義感が強く、進んで風紀委員などの仕事を引き受けて来た。
たまに行き過ぎているなどと言われる時もあるが、おおむね周りからの評価は高かった。
それは今でもだ。 彼女を煙たがるのは心にやましい事がある者だけだ。 そう彼女は思っている。
ゆえに、正さねばならない。 そのために補導員になったし、煙たがられようと頑張っているのだ。
そう正義のために。
「ご立派な考えだねぇ。 俺様感動しちまったぜぇ!」
その時、自分以外だれもいないはずの家で第三者の声がした。
「だっだれっ!?」
泥棒か? 久子はそう思いいつもそばに置いているモノに手を伸ばし……
「おっとあわてなさんな。 俺様は敵じゃねえ。 あんたの味方さ。」
何時もであれば粗野な印象を与える不法侵入の謎の男の言葉を信用できるはずもない言葉だが、その時はなぜかその言葉で警戒心を解いてしまった。
「おーけぃ、それでいい。 俺様はあんたに力を与えにきたんだぜ?」
謎の男はそういって一枚のカードを久子に手渡す。 久子はどこか虚ろな目でそれを見やりつつ素直に受け取った。
「期待してるぜぇ。 あんたの正義ってやつをなぁ!」
そう嘲笑まじりに言うと男は姿を消した。
後にはカードを手にぼんやりと中空を見つめる一人の女性だけが残ったのだった。
To Be Continued……
お愛想の話
ちなみにこの雑誌とは、明治時代の雑誌【風俗画報】95号の事で、この中で京都の流行として「勘定をおあいそといふなどと尤も面白く存じ候ふ」と紹介され全国に広まったとされています。
一応お客がお愛想と言うと「この店には愛想が尽きた」という意味になると書いてるものもありますが、明治の頃からお客の間で使われているのにそんな意味になってたらおかしいですよね?
実際は「愛想よくしてまけておくれよ」と言う意味になります。
元々がお愛想悪くてすいませんという謙遜の意味なのに、客が使うだけでなんて二度と来るか的な事になるのかよくわかりませんね。
とはいえ、お愛想がお客の使う言葉ではないという意見がまかり通っている訳で(ネットもふくめ)地方によって伝わり方が違うのかもしれません。
ですので、この作品では作中の意味であるということで進めていきたいと思います。




