嘘.
─── 十数年後 ───
24歳になった僕は、何の因果か、とある大型スーパーの保安係をしていた。
仕事内容には、万引きの取締り───いわゆる万引きGメンような仕事も含まれる。
先程から僕は、一人の少年の動向を追っていた。
高校生になっているのかいないのか。幼さと大人っぽさの両方を兼ね備えた危うさを持っている。
キョロキョロとひっきりなしに瞳を動かし、周りに不審人物だとアピールしているようにしか見えない。
自慢出来る事では到底ないが、上手く万引きを繰り返してきた僕には、少年はまだ初心者と見受けられた。
暫く食品売り場をうろついた後、少年は100円程のガムを手に取り、ポケット入れた。
そのまま急ぎ足でレジを通り過ぎ、表の自動ドアを出た所で声を掛ける。
「お客様、何かお忘れではないですか?」
振り向いた少年の顔と、十年前の自分の顔が重なった。
バタバタと足音が響き、勢いよく保安室の扉が開かれる。
「───申し訳ございません!」
叫びに近い謝罪を述べるその女性。僕の足は、微かに震えた。
随分歳はとっていたが、当時を思い出させるふっくらとした丸顔に丸い瞳。
エミ先生…………




