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消えた罪悪感~3~

 


「充君、この中から捜してみて?」


 ふと我に返り、いつの間にか目の前に広げられた写真の数々に目を落とす。


 一枚ずつ手に取り、いる筈のない犯人を隅から隅まで捜した。

 周りからの視線を、全身で受け止めながら。



 みんな待っている。期待と不安を抱きつつ、僕の反応を伺っているのが手に取るようにわかった。


 でももう、同じ過ちを繰り返しはしないよ。これ以上の厄介事はごめんだからね。



 じっくりと見た後に、ようやく僕は言葉を発した。



「いませんでした」








 ハァーッと誰もが息をつく。ようやく緊迫した空気が緩んだ。


「そう…… だったら明日、うちへ来て下さる? まさかとは思うけど、高校生も混じってた可能性もあるかもしれない。卒業生のアルバムも借りれると思うので、それも見てみてはいかがかしら?」


「でも……そこまで甘えてもいいんでしょうか?」


「ええ。遠慮なさらないで。同じ親として、最後まで諦めずに頑張りましょう!」


 お父さんもお母さんも、力強く頷く。


「わかりました。松井さんのお言葉に甘えさせて頂きます。本当にありがとうございます」


 テーブルに頭をこすりつけて礼を言う二人が、何だか違う、知らない人に見えた。





 松井親子が帰った後のリビングは、妙な安堵感で満ちていた。


「こんな事いっちゃ何だけど……充が間違えてくれて良かったわ。だってお陰であんなに良い方とお知り合いになれたんだもの」


「本当だな。濡れ衣着せられて嫌な思いもしただろうに。文句も言わずに協力してくれるっていうんだから……」


「人ってあったかいのね。こんな時なのに凄く幸せな気分だわ」


「ああ……そうだな」


 しみじみと噛み締めている両親とは逆に、僕は素直には喜べない。

 当然だろう。全部嘘なんだから。


 松井親子の優しさに触れ、少し芽生えた柔らかな感情も、保身の為ならすぐに打ち消せた。


 明日も大量の写真とにらめっこ。見なくてもわかってるのに。言ってやろうか?



『いないのは、もうわかってますから』



 想像したら笑えるな。みんなどんな顔するだろう。

 どんどん膨らむ妄想に、笑いを堪えきれなくなってきた。



「僕、お風呂入って寝るね。ご飯はおばあちゃんちで食べてきたから」


 早く一人になりたかった僕は、そそくさとリビングを出て行く。


 お母さんが何か言ったように思えたけど───緩んだ顔を見られると困る僕は、聞こえないふりをした。


 聞き返せば良かったと後悔するのは、数十分後。









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