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才川くんと異世界転生  作者: ポッチリプッチョ
2章 学園編
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第23話 【魔法祭前日】

 


 遂に明日は魔法祭だ。

 マーコスとは色々あったが、あの話を聞いてからは俺も練習に混じっていた。

 やはり彼は圧倒的にセーラよりも強く、セーラとの模擬戦より濃密な試合が出来る。


 おかげで今まで問題だった威力調整も、今では相手を傷付けずに気絶させられるようになった。

 誰が毎度毎度模擬戦の度に気絶させられていたのか………

 まぁ、察してくれ。




 さて、実は今、俺の中で1つ問題がある。

 それは、セーラとマーコスのことだ。


 話を聞いたあの日から、2人は妙に仲が良くなった。

 いや、仲が良くなったというよりは俺を省くようになったというべきか。

 コソコソ話したり、偶に俺を席から外させたり、2人だけで大通りに行っていたりと、あの2人だけでいる時間が多くなっているのだ。

 更に言えば、セーラに関しては俺と目も合わせてくれない。

 そんな日がもう2週間以上続いている。


 それもこれもマーコスの話を聞いたあの日からだ。

 恐らく、というか十中八九、あの日の校舎裏で何かあったんだろうが、それを聞いてもセーラもマーコスも頑として口を割らない。



 俺が思うに、あの2人は付き合っている。

 幼女と爺さんのカップルが成立するのかという疑問も無いではないが、こう思うにはちゃんと根拠がある。


 まず、セーラはマーコスと話している時、高確率で顔が赤い。

 恋愛経験が無いからよく分からないが、元の世界では意中の相手と話す時に顔が赤くなる、という話を聞いたことがある。

 それに先程の通り、あの2人だけの時間が多い。

 俺を省くのだって2人でいちゃこらするためなんだろうさ。

 セーラに至っては俺のことを嫌いになっているのかもしれない。


 だが、ここはまだ問題ではない。



 問題は、俺が嫉妬していることにある。


 何に嫉妬しているのかというと、多分マーコスだ。

 彼である確証は無いが、マーコスとセーラがコソコソ話していたりするのを見ていると、胸の中がモヤモヤしたもので満たされて、口から膿でも出てきそうな気分になる。

 こんな気分は初めてだ。


 今まで俺はセーラと仲が良かったのに、彼が来てからは話すらしてくれなくなった。


 きっとマーコスのせいなのだ。彼が校舎裏で何かしたから、こんなことになっているのだ。

 どうせ、省くのだって俺がいたら邪魔だからだろう。

 だったらだったでちゃんと言えば良いのにな。

 何故か非常にムカつく。

 こんなことでムカつくなんてのも初めてだな。


 しかし、あの2人が幸せならばそれで良いと思わないわけではないのだ。

 まぁだからといって、その幸せを許容できるかと聞かれたら全力でNOと答えるがね。


 どうしてこんなに感情的になるのだろうか。

 別にマーコスとセーラが付き合っていてもいいじゃないか。

 いや、良くない。

 何でだ?

 何でか、だ。


 こんな自問自答に意味なんてないのに繰り返してしまう。

 はぁ、俺は一体どうしてしまったのだろうか…




 〜セーラ目線〜




 私は、アルムが好き。

 それを初めて自覚したのは、マーコスに校舎裏に呼ばれたあの時だった。


 何を話されるのかどきどきしていると、マーコスは真剣な顔で私に言った。



「お主……アルムのことを好いておるのじゃろ?」



 私は一瞬、マーコスが何を言っているのか分からなかったけど、少しして理解してくると顔が熱くなった。


 最近私は、アルムのことを考えることが多くなっていた。

 ふと授業中に、ご飯を食べている時に、勉強をしている時に、気付いたらアルムのことを考えていた。

 いつからこうなったのかは分からないけど、マーコスとアルムが初めて模擬戦をしたあの時にはこうなってたと思う。



 私は、ラード家の娘として生まれて、色んなことを習わされて育った。

 剣術、魔法、地理、歴史、言語、算法に理科。他にも沢山ある。

 私は、こんなにたくさんのことが出来る私は偉いんだと思っていた。偉いから、こうやって何でも出来て、偉いから、誰にも負けないんだと思った。


 そんな私の"酔い"を覚ましてくれたのはアルムだった。

 彼は私より遥かに何でも出来て、でもそれを鼻にかけるなんて事せずに優しくて、礼儀正しくて……

 そんなアルムが、私は最初は気に入らなかった。

 私よりも出来ることが妬ましかった。


 でも、友達になってからは違った。

 初めての友達で、どうしたらいいのかと思ったけど、とにかく失いたくはなかった。

 だから、頑張った。なるべくアルムの言うことを聞いて、なるべくアルムと一緒にいた。


 そうしたらその内、あることに気付いた。

 アルムは、見た目こそ私よりも幼いけど、中身はとっくに大人なんだ。だから、アルムが私よりも出来ることは当たり前なんだ、と。


 それからは私はアルムに少しでも近づこうと頑張った。その頃から、アルムのことを考えるようになっていたんだと思う。



 私はそれが不思議だった。

 何でアルムのことを考えてしまうのか分からなかった。

 アルムのことを考えると胸の辺りが暖かくて、それでいて苦しくて、何かの病気なのかと心配したくらい、頻繁にソレは起きていた。


 でも、その謎はマーコスの一言で解けた。

 私は、アルムのことが好きなんだ。

 そう思うと、何だか恥ずかしくなって、顔が熱くなった。

 その恥ずかしさを押さえ込んで、私は途切れそうな声で答えた。



「……うん」


「そうか、そうか。それをアルムは知っておるのか?と、その反応ではお主も今知ったところじゃの。

 その気持ちをアルムに伝えてみたらどうじゃ?」


「えっ!?で、でも……ほらっ、伝えて何になるわけじゃないし!」



 慌ててそう言うと、マーコスは真剣な顔を更に真剣にして、しっかり目を見ながら言った。



「そうやって何もせんと、お主は必ず後悔するぞ。必ず、じゃ。

 お主の何十倍も生きておる儂が言うんじゃから、間違いない。

 伝えてみるといい。伝えることが大切じゃ」


「…わ、分かった。伝えてみる」



 私は、マーコスの力のこもった目に気圧されて、言った。



 とは言ったものの、私は未だに伝えられていない。

 というか、目すら見れていない。

 この間、久しぶりにアルムと目があった時は、心臓がどきどきしすぎて痛いくらいだった。

 いざ話しかけようとすると、恥ずかしくなってしまう。


 だから私は何度もそのことをマーコスに相談した。

 聞かれるとまずいから、アルムには聞こえないように話すか、どこかに行ってもらったりしながらだ。


 その甲斐あってこの間、とても良いことを思いついた。

 魔法祭の祭を一緒に回るのだ。

 最初はマーコスも一緒だから私も話せるだろうし、慣れてきたらマーコスに合図を送って私とアルムの2人だけにしてもらう手筈だ。

 マーコスがプレゼントがあったほうがいいと言うから、何度か大通りに行って、プレゼントまで用意した。


 あとは、アルムに一緒に回ろうと誘うだけ。

 これぐらいマーコスが言ってくれれば良いのに、何でか「セーラが言わんとダメじゃ」と言ってくれなかった。


 明日は魔法祭だし、今日しかチャンスはない。

 でも恥ずかしいし、一緒に回ってくれるか分からないし……

 いや、でも今日を逃したら伝えられなくなるかもしれない。

 でも……


 という問答を何度も繰り返しながら、私は誘うタイミングを狙い続けていた。




 〜アルム目線〜




 今日は放課後の練習は無しだった。

 明日のために魔力温存のためだ。

 俺は別に使ったところで支障は出ないが、周りは違うのだからしょうがない。


 ということで今は寮の部屋にいる。

 自分の寝室のベッドの上に寝転がって、夕日で赤紫色に染まる天井をただぼーっと見ているのだ。

 リビングにはセーラがいて気まずいから行けないし、部屋から出てもすることがない。


 早く眠気が来ないかなぁ、なんて思っていると、部屋の扉が開いた。

 そこには、モジモジしながら俯いているセーラが立っていた。

 俺は、まさかの登場に思わず姿勢を正してベッドに座る。



「セーラ、どうしたの?」



 セーラがずっとモジモジしたまま立っているので堪らず聞くと俯きながら、途切れそうな声で吐き出すように答える。



「あ、あの、ね。明日の、魔法祭をね、一緒に、回らない?」



 俺は、珍しくキョドキョドしているセーラに驚くのではなく、久しぶりに会話が出来たことに喜び、大きな声で答える。



「勿論さ!!」



 セーラはそれを聞くと一瞬だけ顔を上げた。

 しかし、目があった途端にいつものようにプイッと顔を逸らし、さっさと部屋を出て行ってしまった。


 その姿を見て、何か間違ったのかなと心配になりつつ、俺はベッドに寝転んだ。

 少しすると眠気が波のように押し寄せてきて、瞼を閉じる。



 あれ?

 そういえば、セーラはマーコスと付き合っているのだから、マーコスと回るんじゃないか?

 じゃあ何で俺を誘う…?

 もしかして!俺に2人のいちゃいちゃを見せつける気なのか!

 そうだ、きっとそうに違いないな……

 くそ、OK出すんじゃなかったか。



 そんなことを考えながら、俺は眠りについた。

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