第12話 【入試】
ここから二章です。
拙い文章ですので、ご指摘ご感想などありましたらよろしくお願いしますm(_ _)m
昨日はあまり眠れず、今日を迎えてしまった。
今日もまたナーバと2人、いやムガーマもいるから2人と一頭の旅の途中だ。
時刻は真昼。この世界での太陽がギラギラと馬車を照りつけるせいで屋根があっても暑苦しい。
「ナーバは剣士なんですよね?剣士になるための学校なんかはあるんですか?」
「いや、ない。皆独自に学び、剣士を名乗る」
入試のことを考えていて、ふと浮かんだ疑問を聞いてみる。
そうか、剣士に学校はないのか。独自ってことは俺も今から剣士を名乗れるってことなのかな。
まぁ生まれてこのかた、いや、元の世界でのことも含めて今まで木の棒すら振ったことないけど。
それにナーバはあの戦闘からしても半端じゃなく強い。試しにあの剣を魔力強化した体で待たせてもらおうとしたけど10センチ持ち上げるのが精一杯だった。
アレをぶんぶん振り回すナーバはやはり人間じゃないのかもしれない。
そういや確か、魔法使いもどれか1属性を初級が使えると名乗っていいらしいけど、俺は名乗れるんだ、よな?
一応上級までは5属性使えるけどアトミー以外の他の魔法使いをみたことないから分かんないんだよな。
アトミーの魔法は治癒以外見たことないけど強いはずだ。学園にだって恐らく3、4歳で入学したはずだし。
「おい、アルム。お前の使った素早く動くアレは魔法なのか?」
「はい。まぁ歯が立ちませんでしたけどっていうか、ナーバ。あの時は初めから僕を殺す気で戦っていたんですか?」
「あぁ、そうだ。戦いというのはそういうものだろう?俺は護衛だからお前を殺しはしないが殺すつもりではあった」
「そ、そうですか。あの、無いとは思いますがね、出来れば次するときは殺す気でしないでください」
「む、なんでだ?」
「だって、ナーバとは仲良くしたいですし、僕は死にたくありませんから」
「そうか、考えておこう」
考えておこうって、ナーバは俺を殺したいのだろうか。
過去に一体何があったら3歳の子供を戦いといって殺そうとできるのか分からない。
…まぁでも、そこを除けばいい奴だよな。ちゃんと護衛もしてくれるし、頼もしいお兄さんって感じだ。
今日でお別れなのが悲しい。また何処かで会えるといいんだが。
ナーバの背中を見つめてしみじみしていると、ナーバが無言で前方を指差した。指のさす方向を見ると1キロほど先に街が見える。
何かの壁に囲まれていて少し分かりにくいが確かに街だ。門番であろう人が2人、壁にある大きな門の脇に立っているのが薄っすらとだが見える。
壁の中にはファンタジーならではの尖った屋根が幾つか見え、その中に1つだけ明らかに大きな建物があった。
そしてその大きな建物の屋根の下には何か黒色の大きなものが吊るされている。鐘か何かだろうか。
しばらくして門の前まで来るとナーバが何かを門番に渡して門をくぐった。
この門というのも遠くでは分からなかったが意外と細かな装飾が施してあり、奥行きは5メートル程、高さは軽く10メートルはある。壁に至っては20メートル程ありそうだ。
この壁でなくては守れないほどの災害でも起きるんだろうか。まぁ、これも無いよりかは良いとは思う。
門をくぐると雑音に包まれる。
門から馬車が2台ほど通れる幅の一本道がのび、道を形成するように屋台のような小さな店が所狭しと並んでいた。
目が眩むような量の人が歩き回って雑踏を形成し、俺たちの乗る馬車はその雑踏の中を突き進んでいる。
学園がどこにあるかは知らないが、ナーバが案内してくれるだろう。
道の端の屋台は最初は果物や干し肉といった食べ物を扱う店だったのが少し奥に行くと武具店が多くなってきた。
ナーバの剣ほどではないが、それでも明らかに大きな剣や、短刀、弓矢などが置いてある。
中には杖らしき物もあったが今は学園の入試が先だからな。また後で見に来るとしよう。
更に進むと人の数が減り、大きな宮殿が見えてきた。ベルサイユって名前が付いてそうだ。
そんなことを考えていると馬車がその宮殿の大きな鉄柵の前で止まる。
「アルム、付いたぞ」
「へ?」
「ここがナヴィガ魔法学園だ」
「ここですか?」
「そうだ」
「本当にここですか?」
「そうだ」
おい、嘘だろ。こんなの学園じゃなくて城だ。これからここで入試を受ける…
やばい、外観に押されて受かる自信が揺らいできた。
外観だけでこんなに緊張するなんてこと今までなかったな。
いや、外観ではないがあったか。ナーバとムガーマに会った時がそうだった。
「俺は馬車を置いてくる。アルムは先に中に入ってろ」
「え、僕1人ですか?」
「そうだ。馬車のままは入らないからな」
「あの、ナーバが戻ってくるまでここで待ってるというのはダメですか?」
「何でだ?」
「えっと、その、入りづらいというか…」
「そうか。ならばダメだな」
それだけ言うとナーバは俺を置いて馬車を走らせた。
おいおい無視かよ。
はぁ、ああいうキャラが頼りたい時に頼らせてくれないってのはお約束なんだろうか。
でも、これがナーバなりの意見何だろう。なよなよするなってことだ。
そりゃそう言われて当然か。ここでビビってちゃ何のために来たんだか分かりゃしない。
そうだ、大丈夫。受かるはずだ。勉強はした。魔法も、まぁ使える。
俺は大きく息を吸うと鉄柵開け、中に入っま。
鉄柵の内側にはだだっ広い芝生の中庭があり、案山子っぽいものが何体かポツポツと見える。
この中を1人で歩いていくというのは案山子からの視線を感じるせいか落ち着かない。
俺は震え気味の足を無理やり前に出して、ようやく扉らしきものの前まで来た。
3メートル程の大きめのソレには鳥やら剣やらの装飾がびっちり施してある。
多分、扉だよな?ノックしちゃって大丈夫だよな?
ていうか今更遅いけど服装は普通に旅装束のままなんだが良かったんだろうか。いや、良くない。
服は面接の時に重要なポイントだ。面接があるかは知らないけど。
どうしよう、戻ろうかな。戻ってから今度はナーバも一緒に正装で来ればいいじゃないか。そうだ、一旦戻って態勢を……
いやいや、何を言ってるんだ。なよなよするなってことを忘れたらダメだ。
そう、俺は出来る準備はした。服装は違うけど他は今の時点で最大のはずだ。だったら受かるに決まってる。
落ち着け、才川明。いや、違うか。今はアルム・ガルミアだったな。
俺は改めて決意を胸に勢いよく扉をノックした。勢いが良すぎて手が痛くなる。
ノックの直後に扉が開き、中からモノクルをした背の高い貫禄漂う老人が出てきた。
「どちら様でしょうか?」
「私はアルム・ガルミアと申します。御校の入学試験を受けさせていただきたく参りました」
「おぉ、入試ですか。ふむ、そのお年での受験は珍しいですな。申し遅れました私は校長のナルバ・ファン・コルナルドラといいます。ふむ、礼儀正しくて素晴らしいですな。それではこちらへ」
そういうと校長は俺をさっき通ってきた中庭に案内した。
そして、案山子から50メートル程離れたところに立たせると服から小さな砂時計を取り出した。
「それではアルムさん、試験を開始します。この砂時計の砂が落ちきるまでにあの案山子を魔法のみで壊してください。そうですね、あなたの年齢なら破壊までは至らずともある程度の損傷で合格としましょうか」
「えっと、今からですか?」
「はい、我が校は基本的にいつでも受験を受け入れていますので。さぁ、始めますよ」
「は、はい!」
そうか、実技だけなんだな。じゃあ全然心配することなかったじゃないか。
いや、でも、あの的に当てられるだろうか。いや、全身全霊でいけばどうにかなるはずだ。
俺の返事と同時に砂は時を刻み出している。
俺も1度全身全霊で臨むと決めたからには手を抜いたりなんかはしない。
俺は一気に魔力を練り上げ、まず空中に岩を作った。
使う魔法は岩弾丸だ。マリオネットは体を利用してしまい魔法だけというルールに反する可能性があるから使えない。それに、こういう狙う系のものはコレが1番だろう。
岩の形を変える途中でふと異変に気付く。
魔力消費が少ないのだ。いつもと同じことをしているのに練習していた時の大体半分くらいしか使っていない。
どういうことだか分からないが、きっと今日は調子が良いんだろうな。
俺は消費が少ないため更に魔力を練る。
岩弾丸は大体本物の弾丸と大差ない大きさと形にした。
硬さやら速さやらを限界まで高めて最後に前から試したかった回転を加える。
ウィーンとモーターのような音が響き、回転を速めていくと段々とキィーンという音に変わり、若干風を帯び出した。
多分これが俺の今使える魔法の最高威力だろう。
速さだとかは"出来るだけ"で決めたからどんな威力になるかは分からないがこの魔法1つに魔力は全体の3分の1くらい使ってる。
まぁこれだけやれば合格するだろ。
「岩弾丸!!」
俺の号令と同時に弾は前のようにブレることすらなく消え、直後前方にドガァーンという音が響いた。
音の方向、つまり案山子の方向を見ると先程までそこにあった案山子は跡形もなく消え去っていて、奥にあった案山子も何体か消えている。
マジか。こんなに威力出せるのか。これは凄い。
あ、ナーバにこれを見せないようにしないとな。また「戦おう」なんて言われたら堪ったもんじゃない。
ふとアルバの方を見ると、彼は呆気に取られた顔をして震える口元に力を入れ、俺の方を見て言った。
「ご、合格です…」




