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娘④
「ほとんど知られていませんが、私は今の仕事に就く前、技術者として満州に渡りそこで数年を過ごしました。当時の満州では技術者は様々な分野で重宝され、私は大きなやりがいをもって日々仕事に勤しんでおりました。そんな折、当時の上司から『所帯を持ってこそ一人前だから』と紹介されたのが家内でした。御存じでしょうが当時は今の様に恋愛から結婚というよりも見合いで将来の伴侶を決める事が多く、私も又、その時は『伴侶を得てもう一回り大きな男になりたい』とそんな風に思ったものでした。
家内の父も又、技術者として満州に渡った、いわば同業者で、時々はそれこそ何日も出先に泊まり込んで仕事をこなす事も多い私の仕事にも深い理解を示してくれるのではないかという身勝手な気持ちも多くあったかと思います。いずれにせよ上司からの紹介で初めて家内に会ってから数日後には、私は家内との結婚を心に決めておりました。




