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大正ロマンの異世界物語  作者: ロマン
1章・組合と見る魔物の世界
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サテライト邸と散剤の恐怖

 光を誰かが喰らってしまったかのように暗い夜道を歩いて早30分、夜の仕事と聞いてどんな魔物が出るかと思いきや、今回の仕事はまさかの借金の取り立てであった、冒険者組合、それはこの街を守る民間兵団であると同時に、銀行の役割も担っている、組合が貸し出す金は利子が低いことで有名であり、そして返さない輩はどんな手段を持っても返済させることでも有名であった、それ故組合の別名は暴力寺


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 時は少し遡り組合の中、活気にあふれる座敷の上、机においてある依頼書を眺めながら今回の以来の打ち合わせが始まった、依頼書の他の資料にシッカリと目を通すサミ姉、それを傍らに酒を飲む朱天さん、そして頬杖を付いて二人を眺める俺、その三人は時に命を預ける身として以来の打ち合わせに集中する。


 資料に目を通し終わったサミ姉はテーブルの上の食器をどかして手に持っていた資料を置いて説明を始めた。


「今回の依頼は、第1次神楽妖怪屋敷戦争の有名軍師のサトリウム・サテライトの借金取り立て、借金額は驚異の金貨123枚、報酬は銀貨3枚だよ、まあ終戦後にろくな仕事もせずに借金こさえた落ちぶれ軍人だ」


 かなり高い報酬に朱天さんも俺も目を見開いた、しかし報酬が高いということはそこそこ危険性のある仕事なのであろうかと疑いの思いがすぐさま脳裏を過る


「危険があるの?」


 俺がそう尋ねるとニヤニヤしながらサミ姉は俺に資料数枚を投げつけてきた


「薬草狩りよか危険だけど、朱天とお前の魔法があれば確実に武力面で不足はない、この依頼に必須の【金銭取扱師】が依頼受諾条件だが、何を隠そうこの私はしっかり資格持ってるよ!」

「なるほど、、、まあそれでも荒事にはなりそうだね」

「そうじゃなければ依頼になってない」


 資料の内容は受諾条件と依頼の詳しい内容であった、依頼に必要なのは金銭取り扱い師、内容は借金の返済交渉、最低額金貨120枚の返済を拒んだ場合武力行使にて屋敷を取り押さえろとのことであった




 かくして現在サテライト邸前、屋敷の大きさはまるで国会議事堂、無数とはいえないが大勢の兵士が見回り、大きな塀と大きな兵と、そして巨大な門は俺達の進入をシッカリと拒んでいた。


「で、サミ姉、どうするの?」


 屋敷前の林の中で俺達三人は立ち尽くしていた、サミ姉はスーツ姿、俺と朱天さんはいつもの服装だ、というかここにまで来て酒を飲む朱天さんの姿に少し不安を覚える。


「どうするも私がまず交渉しに行く、まあ失敗するだろうから失敗したら屋敷から出てきて信号術式でフラッシュ焚くから、後は屋敷占領を二人がやれば終了」


 あの屋敷の兵士全員を倒せとでも言うのであろうか、そう俺が不安がっているのを無視してサミ姉は一人屋敷の中に入っていた、もうそれは堂々と門から入っていった。


 隣で酒を飲む朱天さんはその場に座り込んで俺に盃を渡してきた


「飲むか?」

「いえ、仕事が終わってからありがたくいただきます」

「ははは、良い心がけだ、まあ大丈夫だよ、あんな人間どもじゃ私一人にも勝てやしない」


 俺の不安を察したのか、朱天さんは俺の緊張を解いてくれた、なぜだか分からないがその朱天さんにはかなりの安心感を抱く。


 まだ5分も立っていないというのに門が開き、中から頭を濡らしたサミ姉が出てきた、何をされたかはなんとなく察しがついた。


 当初の作戦のフラッシュが焚かれる前に鬼の形相の朱天さんが立ち上がった、その姿はまさしく鬼、歩く姿が武力の化身、サミ姉の姿に相当腹を立てたのであろう


「朱天!!、屋敷だけは破壊しないで!!!」


 サミ姉がそう叫ぶと低く鋭い声が周囲に劈いた


「私は白い屋敷が嫌いなんだ、赤色に染め上げてくれる!!!!!!!」


 次の瞬間驚くべき光景が目に飛び込んだ、門番をホコリを払うかのように投げ飛ばすと、そのままカーテンでも開けるかのように鉄製の巨大な門をこじ開けて屋敷の中に入っていった


「え、どうしたの!?」

「ああ、朱天がキレたんだ、、、ありゃ屋敷内は地獄だぞ~」

《バリン!!》


 二階の窓から次々と兵士が飛び降りている、窓をあける時間もなかったのであろう、彼らは地面にゴミのように落ちると折れた足を無理やり引きずって逃げ出そうとしている、屋敷内で一体何があったのか想像したくもない。


「ぎや、逃げろ!、殺される!!!」

「なんだあれ!、勝てるわけ無いだろ!!!!」


 地面を這いつくばって逃げる兵士たちだが、窓から飛び降りた朱天さんによってもう一度屋敷内に投げ入れられ、そして朱天さん自体ももう一度屋敷内に飛び入った、もはや逃げることすら許されない屋敷、これは屋敷というよりも地獄という他無いのであろう、一瞬見えた朱天さんの姿はまるで地獄の獄卒である


しばらくすると屋敷の中から大量の汗をかいた小太りの男が出てきた、その体型からは想像もできない速さで走っており、少し痩せればオリンピックにでも出れそうだ、その身なりの良さから恐らくはあれがサテライト本人と予想がつく。


初級凍結魔法ファーストマジック氷結壁」


 俺が朱天さんによって捻じ曲げられた正門を凍りつかせると、サテライトは氷の壁を前に出してくれと叫びながら氷の壁を殴りつけた、その姿には高貴さのかけらも見受けられない


《カツリ、カツリ》


 後ろから乾いた足音が鳴り響く、サテライトはその足音の大きさと比例するようにその評定を歪めて行く、まるで養豚所の出荷直前の豚だ。


 遂に朱天さんが真後ろまで来ると、サテライトは後ろを振り向いた、そこには真っ赤に染まった朱天さんが鬼の形相で見下している、標的は俺ではないというのにものすごい恐怖を感じた


「さてこのブタ野郎、今やお前は活殺自在だ、何か助かろうとするのかな」


 冷たい声がサテライトを貫いた、氷の壁にべたりと背中を付いて声を震わしてその問に答える


「か、金なら返します、ですからどうか命だけは!!」

《ズドン》


 命乞いの直後鈍い衝撃音が響いた、分厚い氷の壁は砕け、スーパーボールのごとくサテライトは吹き飛んだ、制圧を終えた屋敷の前で酒瓶に口をつけるその姿はまさに鬼その物だ



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 それからしばらく、サテライト邸を占領し見事銀貨3枚を受け取った俺達三人は、組合内で大豪遊してい、テーブルを2つつなげて収まりきらないほどの量の料理を並べ、朱天さん中心に大量の酒瓶を並べ、3人で大宴会を繰り広げる。


「がはははは、高い酒はやはり違うね!!!!!!!!!!」

「朱天は酒好きだね~、私は酒より肉の人間だよ」


2人共もう上機嫌、酒池肉林のなか絶えず口の中にものを入れる姿は見ていて楽しくなる


「しっかし、一人銀貨1枚って、これしばらく使いきれませんよね~」


 俺がそう言うとサミ姉が肉を片手ににやると頬を上げて少々悪そうな顔で言い放つ


「おいおい、金があるんだ、明日にはここを出て、、、娯楽街に行くぞ!!!」


 サミ姉の隣では嫌そうな顔の朱天さんが酒を呑む手を止めた


「な、なあ、サミ、それで前回散財したじゃん、やめておこうよ」

「無理だね!!!!!!!!!!」


 そう言うとサミ姉がバサリと資料を俺達に渡した、資料の内容は護衛依頼である、行き先は神楽屋敷、歓楽部屋までの商人の道中護衛、報酬は銅貨1500枚である、


「幸い娯楽部屋に行くだけで金が貰える!、そして仕事の後に遊べば~、最高だね!!!」


 満面の笑みとほろ酔いの赤の表情の隣では、悪酔いの白と残念な苦笑いで首を横にふる朱天さん、恐らくだが護衛依頼で稼ぐとかでは話にならないレベルで金を使うのであろう、金があるから遊びに行こうと言う人は決まって何をやってもある分だけ金を使う


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 それからしばらく、食事が全てなくなった頃にはサミ姉は酔いつぶれて寝てしまった、サミ姉の10倍は酒を飲んでいるはずの朱天さんはサミ姉にブランケットをかけると、少しこざっぱりした机に伏した


「はぁ~、明日恐らく娯楽街行くけど、、、カンテラ、、、絶対散財するなよ。。。確実にサミは金をすべて使い切って泣くから」

「そ、そんなに酷いんですか」

「本気で博打で金が増えると思っている口だ」


 かくして期待と不安と散財の恐怖の夜は過ぎていった、仕事中は鬼のような強さを持つ仲間であったが、やはり金の力には逆らえないようだ






 

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