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大正ロマンの異世界物語  作者: ロマン
1章・組合と見る魔物の世界
4/5

白黒新聞と白い彼女

 カチャリカチャリと鳴り響く金属音、朝だというのに未だ街の活気はやまない、その光景はまるでお祭りのようであり、不思議と歩くと心が踊る。


 ついさっき組合で目醒た俺は、今日の仕事は夜に行うと聞いたためそれならばと街を散策していた、しかしながら案内に朱天さんかサミ姉を誘えばよかったと後悔している、この神楽部屋だが非常に広いのだ、実のところもう少し迷子になっている。



 しばらく歩くと道に黒く細い羽ペンが落ちていた、かなり高価な物であろう、羽はすごく綺麗な輝いていて、手に持てばその重さは文字通り羽のように軽いのだ


「これ落としたやつ困ってるだろうな・・・」


 俺も昔高い時計を落としてしまったことがあった、その時はおじいさんがたまたま持っていて回収することができたのだ、その時以来、落ちてる物は猫ばばしないと心に決めていた、が、俺が持っていても持ち主には届けられない。。。どうしたものか


 取り敢えず俺はキセルを持つようにペンを手に持ち歩みを進めることにした、持ち主であれば俺に話しかけてくるであろう。



 さらに進むと、組合前の風景とは違い一切露天のない場所にたどり着いた、周囲にそびえ立つ大きな屋敷内からは物凄い物音が聞こえてくる、完全に迷子だ。。。


「そこのお兄さん!!、少々うちに来てみないかえ?」


 俺の斜め後ろの店から男が出てきて、俺は呼びこみを喰らった、何の店かも知らなければほぼ金のない俺にとって、その返事は最初から決まっていた


「すいません、いま急いでまして」

「そうか~、そりゃあ残念だ」


 案外とあっさり切り上げてくれた、呼びこみといえばもう少ししつこい物と考えていたがゆえに少々驚いた、、、


《バラバラバラ》


 風にのって突如紙が飛んできた、紙にはびっしりと文字が書いてあり、その紙の質感と文字の書き方はまさに新聞である、内容を見ようと一枚拾い上げて周囲にある休憩用の椅子に座り込んだ、椅子の後ろには大きな木があり日を遮っていて非常に涼しい


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 〘親方様!!、酒飲み暴走山を消して側近に消しかけられる!〙

昨日神楽屋敷の主であり、この神楽部屋の部屋長である神楽様が酒を飲んで、南にしばらくの森を消してしまった、幸いにも森に人は居なく、死傷者は出なかった、昨晩の宴会にて宴会出席者に嗾けられ、森を見事消してしまった親方様であるが、夜が明けた瞬間鬼の形相の側近に消されかけたのは言うまでもない。


 しかしながらこんな事をしでかしでも、あまり大事にならないのはやはり親方様の人望あってのものであろう、色々消えてしまったこの騒動であったが最後に親方様の人望が姿を現したようである。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 他にも乱痴気騒ぎ起こして捕まった男の話や、風呂の除き連中が獄中でも除き行為をしたなど、新聞らしき紙にはこの街であった滑稽話がつめ込まれていた、話の中には思わず笑ってしまうものもあり、これをただで見られるのは非常にお得感があった。


《カツカツカツ》

「そこのお兄さん!!、そのペン何方のですか!?」


 新聞を読み上げ正面を見ると、人混みの中から白い髪を大きく後ろで編みこんだ女性が走ってきた、女性の背丈は小さく、華奢、と言う言葉がよく似合う感じである、服装は千両下駄に真っ黒な軍服のような格好だ、俺の服に形状が似ているか俺の元のは違いジャケットが短い、切れ長な目と整った顔、華奢な体にもかかわらず可愛らしいというよりも、、カッコいいと思えた


「このペンは落ちていたものですが、貴女のものですか?」

「そうなんです!!、お返ししていただけたりしますか?」

「ええ、勿論です、持ち主が見つかってよかった」


 そう言ってペンを渡すと、彼女は満面の笑みでそのペンを腰の鞄にしまった、よほど大事なものなのであったのだろう、ペン一つでこの喜び方、このペンは幸せものだ。


「有難うございます!、お名前お聞きしてもよろしいですか?

「あ、ああ。僕はカンテラ」

「カンテラさんですね、私はふみと言います、神楽屋敷軍広報部隊隊長です、まあ隊員は3人しか居ないんですがね~」


 彼女は軍人さんであった、確かにこんな大きな街、新聞の内容では王様みたいな人もいるのだ、軍人が居ても何ら可笑しくはなかった、しかし、この中世ヨーロッパと大正を足して割ったような世界の中、彼女の服装はかなり近代的であり、この世界では俺の目にはかなり浮いて見えた。


「お礼に何かしたいのですか、お困りのことはありませんか?」


 彼女がそう言ってきたので少し考える、無論無茶な頼みをするつもりはない、少し考えてから俺は簡単な頼みをすることにした


「実は俺はこの部屋に来たのはつい最近で、今も迷っていたんだ、ここら辺だけでいいから少し街案内なんかしてくれないか?」

「ほうほう、その程度でいいのでしたら喜んで!では付いて来てください!」





 彼女に連れられて、最初に向かったのはレンガ作りの建物が並ぶ場所であった、街の中には冒険者組合の通りとは違い、少々お洒落な感じの食事の匂いが立ち込める、街には美味しそうに店のテラスで食事を摂る人たちが街を彩っていた、、、俺も正直腹が減ってきた


「ここは食事通りが一つレンガ通り、主に粉ものを使った食事が楽しめるんですよー、さあこちらへ」


 彼女に言われるがまま白いレンガの店に入った、店の中は小洒落た小物が並ぶ少しよさ気なお店だ、店内の窓側の席に座ると食事を頼むことにした


 メーニューを覗いたが正直見たところで何なのか全くわからない、ただどうやらパスタ料理の店であるということは何とか把握できた


「私は白戀しらこいにします、カンテラさんは何を食べますか?」

「では同じもので」


 まあ妥当な選択肢、自分で選ぶのではなく同じものを頼むというのは何処の世界でもハズレを引きにくい選択肢であろう、幸い俺は好き嫌いが少ない。


「そう言えば、カンテラさんはどんなお仕事なさってるんですか?」

「あ、冒険者やってます、まあ仲間に助けられてばかりですが」

「ほう、、、正直この街では軍隊並みの力がありますからね、あの組合」

「そうなんですか?」


 そう言われると正直疑問に思った、軍隊があるというのにもかかわらず街周辺の魔物退治は民間に任せているのだ、確かに軍の負担は減るが、軍の他に民間で軍同等の兵力を置くというのは少し不思議な状況であった


「ははん、その顔は軍が魔物倒せばいいのにって顔ですね~」

「あ、はい、そうですね」

「軍もだいぶ戦力不足なんですよ、神楽屋敷の近くの妖怪屋敷と月氏屋敷とは現在休戦状態、軍を動かして事を荒立てないようにするほど私たちには力がないんです」

「へ~」

「と言うか、あの組合には妖怪屋敷の旧妖怪王がいるらしいんですよね~、今は大人しく魔物退治やってるみたいですが、、、怖い怖い」

「はは、そうなんですか、一度はお目にかかってみたいですね」


《カチャリ》

「お待たせしました、白戀二つです、ではゆっくりどうぞ」


 しばらく雑談をしていると料理が届いた、さらに盛りつけられたパスタには白いソースが惜しみなく掛けられている、口元まで持って行くと少しさわやかな白百合のような匂いがする、味はというと、、、お洒落な感じ、さわやかな甘味と濃厚さ、そして鮮やかな花の香、貧乏舌には似合わない味だ


「これちょっと小洒落すぎてるんですよね~」

「あ、それ思いました」


 しかそ、白い料理を食べる彼女は何というか、、、少々映えていた、白い髪に白い料理、間近で見ると彼女はさらに肌も白い、雪のような光景は見ていて気分のいいものであった




 その後、色物通り、食材通り、商売通り、色々な場所に案内してもらい、気がついたらもう日が少し傾いていた、彼女は気を利かせて最後は冒険者組合の前に連れて行ってくれた


「では、そろそろ私はこれで、仕事がありますので」

「俺もちょうどそんな感じでした、案内ありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそ楽しかったです、また街で見かけたら話しかけてくださいね」





 屋敷の中にいると酒を飲んでいる朱天さんと口いっぱいに唐揚げを入れるサミ姉が座敷に座って待っていた、テーブルには三人分食事が用意されている、、、


「お待たせ、二人共」

「待ってたぞ~」

「はは、酒飲むか?


 席について早速食事を口に頬張った、やけに脂っこい料理の数々、味も濃い、この少々貧乏くさい料理が俺の舌にはあっているらしく、やはり美味しく感じられた


「やっぱり美味しい」

「はは、もっと食え~、まあ割り勘だがね!!」

「おや、カンテラ殿は何かいいことでもあったのか?、少し表情が明るいな」

「ええ、少し親切な方に街案内をしてもらいまして」


 かくして俺達は食事を食べ終わると早速仕事に向かった、異世界での自由な時間の最初は結構楽しく、そして何とも綺麗なものであった。


「あれ、これ新聞、、、」


 組合内に新聞がばらまかれ、冒険者足しが徐ろに新聞を読み始める。俺もせっかくだからと何気なく読んでみた、新聞は朝と夜の二部に分かれているらしく、これは夜型発行の物だ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ー親切な冒険者と筆者のペンー

 恥ずかしながらこの新聞の筆者ですが、本日ペンを落としてしまいました、そのペンですが高級な魔導羽ペン、価格にすれば金貨3枚の高級品!!、これは終わったと思ったその時!、なんとそんな高級なペンを拾ってある男の方が返してくださった、腰には金色の光のランタン、軍装のような服を着たその男性は見返りを求めることもなく返したのだ

 通常落とせば帰ってこない品が手元に戻ってくるとは、、、やはりこの街も少しづつではあるが優しくなっているのではなかろうかと思う。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ははは」

 

 思わず声を上げたしまった、思わぬところで彼女にまた出会うことができたことに内心少しうれしく、それと同時に驚きを覚えた


「どうしたんだ?カンテラ」

「いや、、、この新聞面白いなって」

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