大正ロマンの異世界物語 上
「あはははは、これは楽しみデスね!」
「ハーレム物ならいいですな、ははは」
騒がしい声、周囲にはアニメや小説がいかにも好きそうな男や女が軽く20人ほど居る、まあ俺もそういった娯楽は好きだ、きっとこいつ達とも話が合うであろう、これが例えばゲームの友人で、オフ会であったり、親戚同士であったり、勿論友人同士であればさぞかし楽しいであろう、たまたまであっただけの知らない奴でもまあ、うん、ぎりぎり話せるであろう、、、しかし、ここが何処か俺にも分からないのである、何もない白い部屋、ここまま居ては気が狂いそうになるほど真っ白な部屋だ、、、
少し前まで家でアニメを見ていたのだが、ふと気が付くと真っ白な部屋に来ていたのだ、周囲の人間もここがどこかを分かっていないらしく、『もしかして、、、俺たちアニメの世界に行けるんじゃね?』みたいな話で盛り上がっている、まあ俺もそういう願望はあるが、突如見知らぬ場所に居ることはかなりの恐怖でありそう個人的にはそうそう楽しめるようなものではなかった
「アテンション!!」
突如として豪勢な椅子とともに、綺麗なドレスを身に纏った女性が目の前に現れた、女性は長く赤い髪の毛をふらりと揺らし、豪勢な椅子で足を汲んで金色の瞳で俺達を見下していた、凄く綺麗な女性であるとは思うが印象は良くない
「皆さんにはこれより異世界で、、ちょっとした物探しをしてもらいます~、そういう話好きでしょ?」
「「「おおおおおお!!」」」」
女性の一言に周囲は歓喜の声を漏らした、この手の話が好きな人間を集めたのは混乱よりも好奇心で胸踊らせて話を進めやすくするためであろう、露骨なやり方に余計印象を悪くした
「みなさんは現在神隠しにあっている状況です、今から基本的な異世界の知識を頭に叩き込んで異世界に送ります、異世界にある神の遺産を見事11個集めた方にはどんな願いも一言叶えてあげましょう!」
「すげ!、マジでやべえよ」
「すごいな、ははは」
説明を訊いて余計に興奮する周囲の人間、まあ俺としても興味はあるが、、、少しいらっときた、要するに目の前のやつは神様で、他の神の遺産を集める駒がほしいってことだ、、、露骨な手口に俺は異世界に行けるということの混乱よりも目の前の神の印象の悪さが鼻につく
「基礎知識は、まあ、言語、初期魔法5つ、神の遺産の知識、これだけです~、じゃあ頑張ってね~」
周囲の人間はもう楽しみそうに体を揺らす、、、ここに来て混乱してきた、こいつは本当に神なのだろうか、そもそも異世界とは何か、人間として常識的な理性が戻った時には、、、俺はもう異世界に落ちていた
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異世界まの道中は非常に暗く、俺はそのくらい空間を真っ逆さまに落ちていた、あまりの恐怖で走馬灯のようなものが見える、、、
これは小学生の時の記憶であろうか、当時は4年生からアニメなんかを親戚の影響で見始めたな、、、記憶が移り変わりこれは、、、高校生であろうか、高校1年生では格好を付けてアニメなんかを見るのやめようと思ったけれど、もう中毒で辞めるとか無理だったな、そして現在、高校卒業しても童貞は在学中、ただのリーマン独身貴族、、、小説ならほんの一文で終わる薄っぺらい人生だ、神が見下してきた理由がよくわかった気がした。
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気が付くとガラクタの山に俺は埋まっていた、ガラクタの中から身を出すとそこは大正ロマンを髣髴とさせる町並み、しかし街を歩く人々は中世ヨーロッパを意識した服装、まさにあべこべの世界であった、街の中は祭りなのかというほど屋台が並び、見たこともない料理が売られている、
俺の想像していた異世界とは違うがこれはこれで異世界感があった、まあ神隠しから来たわけだからこの世界が妥当ということか、そんなくだらないことを思いながらゴミ山のある路地から抜けようと立ち上がった、
「よっこしょっと」
《カラン!、ガン!!!》
「いって、、なんだこれ」
ゴミの山の上から落ちてきたのはキャンドルランタンであった、、、なにか見たことが、、、あ!!
これは神の遺物の一つ、【鬼火のランタン】である、まさかこの世界にきて立ち上がるだけで見つかるとは思わなかった、、、難易度低すぎだろ、来てそうそうかよ、ひどすぎるだろ
ランタンは鉄の筒のような形であり、正面にはガラスが張られている、ガラスはだいぶホコリがかぶっていて中身が見えない
「汚えな~、ホコリかこれ」
《フゥ》
《ブォン》
俺がガラス部分に息を掛けてホコリを落とすと、すると突如としてランタンに光が灯った、ランタンの中には何も入っていないというのに、金色の普通じゃありえない色の光が俺の顔を照らした
「ふぁ、、、流石神の遺物、すげえ、綺麗だな」
ここで俺はふと思った、別に11個物を探す必要はないな、と、あの神に何か義理があるわけでもない、俺はこの世界で遺物を探さず他の道で生活するのも良いかもしれないと思った、幸いにもこんな綺麗なランタン、最終的には売り払えば金になるだろう、第一願いなんて異世界に来れれば十二分だ。
早々に遺物探しを中止にした俺は、どうせ異世界に来たのだ、もう潔く混乱は捨てて楽しもうと思い街の中を散策した、街の中には香ばしい揚げ物の匂いが立ち込めていて俺の胃袋をいい音で鳴らした、町並みは変に洒落た街灯に旅館のような建物とレンガ作りの洋風な建物が乱立するし本当に異世界というより大正時代にタイムスリップしたようだ、しかし洋風な服装と肌色の住民が俺の思考を大正から異世界に連れ戻す。
「うわぁ!!」
上を見上げるとそこには摩訶不思議な光景が目に入る、この街は螺旋状に上に向かって伸びていたのだ、物凄く巨大な螺旋階段のような街が上まで続き、建物や街灯が立ち並んでいる、しかも壁もないのに自立してるから驚きの光景だ
「おらぁ!!」
「この野郎!!」
周囲は面白い光景だけではない、治安が悪い、先程から喧嘩している奴をちらほら見かける、まあ喧嘩はなんの華とも言うしこういう町並みで喧嘩をするのは案外それはそれで住民の中の良さを象徴しているのかもしれない。
さらに少し歩くと目の前から、綺麗な白い服を来た女の子が走ってきた、金色の髪の毛をゆらりと揺らして俺の元まで来るとその足を停めて俺の顔を見上げた
「お兄さん良いランタン付けてるじゃないか!、きっと良い性格してるんだろ?、ちょっと仕事付き合ってや!」
「え!?」
異世界に送られると訊いた時よりも現状況が最も混乱していた、突然ランタンが良いからいい性格と言う頭のおかしい理論の下での仕事のお誘い、、、全く意味不明、取り敢えず拒否しておこう
「すいません、俺なんかじゃ力不足ですの」
「良いから付き合えや!、てめえぶっ殺すぞ!!!」
「ひぃ!!」
この少女こそが俺がこの世界でもっとも最初に出会った仲間であり、今後共に仕事をしたりする事になる、今後も色々な仲間には無論出会うのだが、あえて最初にネタバレをしておく、こいつが一番屑である