異性の友達
異性の友達
※この話は前回のストーリーの主人公のもう1つの視点です。なので前回の話を先に読んでからこの話をご覧になってください。
1年前
「えー、私たちの演奏見れないの?」
春が終わりを告げ夏に差し掛かろうとしている6月の初め、彼女は廊下を歩いている最中に俺に向かって言った。
「委員会の仕事があるからな、今年は行けそうにないわ。」
2年生になったからやっと演奏できるようになったのに〜、と彼女は少し不機嫌な様子になった。
「すまんって。その代わり来年は行くからさ。」
俺がそう言うと彼女はそれで納得してくれた。
俺が彼女と出会ったのは小学生のときだ。
小学生といえばまだ男女関係なく仲良く遊ぶ年頃なので俺でさえも女子の友達ができた。
その中でも今もその関係が続いているのがこの子だ。
小・中・高と同じ学校に通っていたので10年以上一緒になる。
そんな彼女は現在音楽部に所属しており、今年になって遂に文化祭で演奏出来るようになった。
俺も是非とも見に行きたかったが、生憎今年は委員会に入らざるを得ない状態になったので来年に持ち越しになってしまったのだ。
そして月日は流れ、3年生最後の文化祭の日がやってきた。
お化け屋敷のシフトの時間を再確認し、体育館で音楽部の演奏が始まるのを用意された椅子に座り待った。
そして数分後、音楽部の演奏がスタートした。
まずは2年生が初の演奏で少し緊張しながらも正確に演奏する。
2年生が演奏しきり満足気に舞台袖に消えると、いよいよ3年生バンドの登場だ。
その中に当然彼女もいた。
マイクを持ちMCをこなし、曲名を告げると同時に演奏が始まり、そして歌いだす。
そう、彼女はバンドの華とも言える存在、ボーカルなのだ。
中学最後に有志が芸を披露する際もボーカル担当でバンド演奏していたが、それとは比にならないほど上達していた。
女子ならではの高く綺麗な歌声は聴いてる人々を魅了していく。
彼女が歌い終わると至る所から歓声が湧いた。
彼女の友達が声援を送るところを見て俺も声をかけようと思ったが、ある人物の姿が目に入り、その行為をしなかった。
その人物とは、彼女の現在付き合っている男子である。
彼氏の前で声をかけるのはマズイと思い自重したのだ。
俺は彼女が付き合っている人がいるというのは噂で聞いていた。
俺はあくまで彼女とは友達だったので特に気にすることもなかった。
しかし、いざ彼女がその男子といるところを見ると、何故か妙な気持ちになる。
今も次の曲の繋ぎでMCをしている彼女がうっかり傍観席にいる彼に話を振り、顔を真っ赤にしているところを見ると複雑な気持ちになってくる。
この気持ちはなんだろう。
嫉妬?そんな馬鹿な。
俺はあくまで友達として彼女を見ていた。
恋愛対象にはなっていない。
なのに、何故、こんなに悔しいのだろう。
それから俺はまともに彼女を見ることが出来なかった。
もしかしたら唯一の異性の友達を取られたという思いが嫉妬という形で出てきてるのだろうか。
そうだとしたら、俺はなんて面倒くさい男なんだ。
友達なら恋愛を応援するのが普通だろう。
彼氏でもないのに束縛するのは論外だ。
俺は初めて自分に嫌悪感を抱いた。
音楽部の演奏が終わり、自分のシフトの時間がやってきた。
俺は体育館からでて自分のお化け屋敷へ向かうと、受付に彼女の姿があった。
どうやら自分たちの演奏が終わると、後は次のグループに任してすぐにお化け屋敷で受付をやっていたそうだ。
俺は彼女に交代のことを告げると共に演奏を感想を言った。
「お疲れ、なかなかよかったよ。」
「ありがとう!私も傍観席にいるところちゃんと見てたからね。」
彼女は俺も見に来ていたことに気づいていたらしい。
当たり前か、去年約束したんだし。
「交代だよね?はい、じゃあこれ。」
そう言うと彼女は自分の首にかけていた『受付』と書かれた板のようなものを首から外し、俺の首へとそのままかけた。
「はい、これでよし。受付頑張ってね。」
そういうと彼女はその場を後にした。
俺はその時少し呆然としていた。
顔が意外と近かったし、なにより自分のかけていたものをそのまま俺にかけるという行為にドキッとしたからだ。
まるで妻が夫のネクタイをつけてあげるようなその行為は俺が呆然とするには十分だった。
彼女はただ『友達』である俺に受付の係りを任せただけなのだろう。
しかし俺はそんな彼女の思わせぶりな行為に、また、複雑な気持ちを感じていたのだ。
まさかの前回からの続きですよ。
続きというか具体的にはもう1つの話、アナザーストーリーのようなものです。
なので細かいところは前回をご覧になってください。
そうしないとわからないところが多いので。
それと、前回にでていた『彼女』は今回の『彼女』より後のグループなので、音楽部の演奏の時系列は今回が先となります。
異性の友達について複雑な気持ちを抱いてたのにすぐ他の異性に見惚れてしまうこの主人公もどうかと思いますが(笑)
今回は異性の友達の話です。
よく『異性の友達はありなのか』という議題を見かけるのですが、私はあってもいいと思います。
趣味が同じなら異性でも同性のように友達になれますからね。
なので 異性の友達=彼氏or彼女という考えは私は持っていません。
趣味が同じ異性の友達・・・私も欲しいです。
私は異性の友達と一緒に音ゲーをするのが夢です。
なので私のメインの小説である『音ゲー部!』もそんな想いを込めていたりします。←ここステマ
というわけで今回はここまで。
それではまた次回。