憧れ?恋心?
憧れ?恋心?
高校最後の文化祭、俺のクラスはお化け屋敷をすることになった。
クラスみんなで分担して作業をするのだが、俺は3人の友達とお化け屋敷の看板を作ることになった。
生憎俺は絵を描けないから色塗りを率先してやった。
そんなこんなで無事完成、後は当日を待つのみ。
そして当日、ついに最後の文化祭だ。
俺の学校の文化祭は主に音楽部のバンド演奏がメインとなっている。
体育館でバンドや有志の演し物をやり、校舎でお化け屋敷や売店、写真館などを行うのだが、中でも音楽部のバンド演奏が1番盛り上がる。
俺も一年生のときに見に行って楽しかった記憶がある。
しかし去年は用事があり見ることができなかったので音楽部の友達に来年は見に行くと約束した。
そしてついにその約束を成し遂げる日が来たのだ。
その前に誰がどの時間にお化け屋敷を運営するかを決めなければいけない。
都合の空いてる時間を各々が選び、同じ時間帯の人たちで役を決めていった。
メインのお化け役、演出、受付、その他驚かせる隊の中から選ぶのだが、俺はお化け屋敷という真っ暗な空間は生理的に耐えることのできない性質なので受付を選ぶことにした。
そんな感じで役割を決めていったが、1人いないことに気づいた。
「あれ、1人いなくない?」
俺が言うとその人物の友達らしき女子が思い出したように言った。
「あぁ、あの子音楽部だから今本番の練習中なんだよ。」
その人物はどうやらドラム担当で音楽準備室で1人ドラムを叩いて調整しているらしい。
ちょうど隣の部屋だったので窓から覗いてみた。
するとそこには曲を聴いているのかヘッドホンを耳につけてドラムを叩いている女子がいた。
その子は俺もクラスでなんどか見かけた人だった。
今はまだ6月で初めて同じクラスになったから顔と名前までしかわからなかったが、ある程度はどんな人かわかっていた。
その子はショートヘアで女子の中でも身長が少し高く、天然なのか授業中に先生に当てられた際にはトンチンカンな答えを出して先生に呆れられるような子だった。
しかし今はそんなイメージを覆すように、真剣な表情でドラムを叩き8ビートを刻んでいた。
普段は見せないその顔はまさにドラマーであった。
俺はその普段とのギャップを目の当たりにして思わず見入ってしまった。
「今練習中だし、また後で呼ぶよ。」
彼女の友達がそういうと俺は我に返り、見入ってしまったことを少し恥ずかしく思いながらその場を後にした。
その後彼女が調整を終え話し合いに参加し、やっとみんなの役割が決まった。
彼女はメインであるお化け役になった。
このお化け屋敷は少女の幽霊をメインとしたストーリーがあるので女子である彼女が抜擢されたのだ。
役割も決まり準備も整ったことでみんなで体育館へ向かった。
体育館で文化祭の開会式をするのだ。
開会式を終えトップバッターである音楽部が準備を始めだした。
俺のシフトは午後に入っているのでこのまま体育館にいることにした。
音楽部のバンド演奏が始まった。
最初は2年生バンドだ。
1年生はまだ入ったばっかりで演奏できないので音響などの仕事に取り掛かっていた。
2年生バンドは1年やってきただけあってなかなかの出来であった。
2年生の全てのバンドが終わり、見知った人が何人か出てきた。
次は遂に3年生バンドだ。
音楽部には何人か友達がいるので余計にテンションが上がる。
その中に彼女の姿があった。
始める前にスティックを落としてしまうといういつもどうりの彼女であったが、いざ曲が始まるとドラマーへと変わった。
俺はその姿に見惚れていた。
俺もドラムはほぼ遊び程度だがやったことあるからドラムに興味があるし、第一いつもとのギャップからドラムに目を奪われっぱなしだった。
その時は唯たんに彼女の意外性に興味を持っていたのだが、あることを機にその心情が変わりつつあった。
バンド演奏が終わると同時に俺のシフトの時間が迫ってきた。
俺は受付なので特に準備は要らないのだが、客を制止させつつみんなの準備が終わるのを確認し、客を入れるという仕事があった。
俺はまだ明るい屋敷内へ入りみんな準備ができてるかの確認をした。
みんな物陰でスタンバイしたり小道具の再確認をしていた。
俺はメインのお化け役を務める彼女の様子を見に行った。
お化け役は大きなボードの裏に隠れそこから驚かすらしいのでそこにいるだろうと思いボードの裏を覗いた。
幸か不幸か彼女はお化けの衣装に着替えようとブラウスのボタンを外してる最中であった。
俺は一瞬固まったがすぐ様ごめんと言いそそくさと退散した。
彼女もこっちを見たが特に言われなかったのでセーフであったのだろう。
そんなハプニングがありつつも無事次の引き継ぎ時間がくるまで受付を成し遂げた。
時間もそろそろ文化祭が終わるくらいだった。
仕事も終わったことだし俺は友達と自分のクラスのお化け屋敷に入ることにした。
たくさん並んでる列の最後尾には終了と書かれたプレートを首から提げてる彼女の姿があった。
「どうしたの?」
友達が彼女の行為について聞いてみた。
「そろそろ文化祭の終わりが近いからこの列で終わらせてって言われたの。」
どうやらこれ以上客を増やすのは時間的に無理なようだ。
だが俺たちはスタッフということでギリギリ入れるとのこと。
「あ、そうだ。これで終了なんだから一緒に中入らない?」
突然のことに俺は驚いた。
なぜなら俺は女子とお化け屋敷に入るというのは初めてだからだ。
しかもさっき着替えを少し見てしまったこともあり緊張度が半端ない。
幸い友達もいるのでなんとかなりそうだが。
そんな動揺してる中、俺は驚きと共に新たな感情が芽生えた。
俺は例のハプニング-着替えを少し見てしまったこと-から彼女への感情が少しづつ変わっていくことに気づいていた。
本当に少しづつだが、彼女を意識するようになった。
そして今のお化け屋敷に一緒に入るという発言で、俺は気づいてしまった。
もしかしたら、俺は彼女に恋をしたのかもしれない。
ドラマーとして彼女に憧れを持ったのだが、徐々にその憧れが恋心に変わったのだろうか。
俺は中学生の時から恋はしていたが、その全部が一目惚れで今回のようなその人柄を知って好きになるというのは初めてだ。
そんな風にたった今芽生えた感情について考えていた頃、彼女は彼女の友達に呼ばれた。
そしてすぐに戻ってきて俺たちに話しかけた。
「なんかまだ余裕あるっぽいから私抜けるね。」
フラグの折れた音がした。
俺は折角好きになった子と(3人ではあるが)お化け屋敷というデートスポットのような場所へ入れると思ったのに、と少し残念に思いながら友達と仲良く2人で入っていった。
人生そう上手くはいかないのだ。
日が沈みかけている午後5時頃、文化祭の閉会式が体育館で行われた。
これで最後の文化祭だと思うとなんだか寂しく感じる。
しかし最後なだけあって余計に楽しく感じた。
そして今回の文化祭で新しい恋を見つけた。
しかし、それは本当に恋心なのだろうか。
もしかしたら文化祭特有の雰囲気で勝手に自分で盛り上がるだけじゃないのか。
終わった後にくる冷静な考え。
だが、例え恋心ではないにしろ確かに特別な感情が芽生えた。
それはただの憧れなのか、それとも本当に恋心なのか。
自分では決めることのできない、そんな高校最後の文化祭であった。
なんか続きましたね(笑)
前回で続くかもといいましたが第2話出ちゃいましたね。
はい、そんなわけで今回は恋について書いてみました。
青春ストーリーを書くのなら恋話が不可欠かと思いました。
恋はいいもんですよね。その子に会うために学校が楽しくなるし、なによりもカッコいいところ見せようと頑張れますしね。
でも決して告白せず自分の中で片想いのまま終わっちゃうんですよね。
告白して関係が壊れるのが怖かったんでしょう、私はいつもそうでした。
それに今は彼女を作ることより友達と遊んでる方が楽しいってこともあるからでしょうかね。
まあ大人になったらそういうわけにはいかないんでしょうけど。
今日はここまでにしときます。
それではまた次回。