第09話 住人発見だといいなぁ
案ずるより産むが易し、という言葉がある。
為る様に為るさ、とも言う。
考えるのはやめよう。
既に俺の体力は限界に近く、抗い様が無い。
そうさ、彼らが好戦的だと決まった訳ではない。
言葉だって通じるかも知れないじゃないか。
何だかハイになってきた。
変なスイッチでも入った気分だ。
息を尽いてもう一度彼らを見遣る。
彼らの顔は……笑ってる?
いや…困ってる?
いやいやどうなんだこれ。判別がつかん。
表情が人間基準でしか判断できない俺にとって、これは未知のものだ。
人と同様に考えていいのだろうか。
いや、考えるまい。感じるのだ。
そうこうしている内にゴブリン(仮)の一人が、俺に向かって歩いて来る。
幸い、槍の先を向けて突っ込んで来るでもなく、キョトンとした顔(人間基準)で語り掛けてきた。
「ギュパイ・ギョウビミ」
うん、わかってた。
ゴブリン(仮)の言語が俺に分かる訳が無い。当り前の事だ。
ほんの少しも期待しなかったと言えば嘘になるが。
わかっていたのだ。
それからは苦労した。
ボディーランゲージでどうにか意思の疎通を図ろうとするが、うまくいかない。
結果分かったのは、はい・いいえは、頷く・首を横に振る、で通じるであろう事位か。
これでもかなりの進歩だ。
そして、やりました。
俺はやったのだ。やはり考えすぎはいけなかった。ゴブリン(仮)超ー友好的。
大トカゲを指差して俺の物だと主張したところ、云々頷いて捌くのを手伝ってくれたのだ。
決して奪おうとしている訳では無い。だいたい俺は襲われてないし、槍を向けられてもいない。
そうして大トカゲを捌き終えると、どうやら彼らは帰るみたいだ。
なんだか「こっちこい」と誘われているっぽい。
これを断るなんてとんでもない。
俺は直感の信じるままに、自分の荷物と大トカゲを持ち上げた。
◇◇◇
ゴブリンさん超ーいい人たちだ。
満身創痍の俺は重い荷物を持って移動ができなかった。
それを見かねたのか先程捌くのを手伝ってくれた方が、大トカゲを持ってくれたのだ。
決して盗られた訳ではない。
こっちこい、みたいに手を振っているし。
俺は直感を信じるのだ。考えるな、感じるんだ。
重要な事は二度といわず何度でも言うのだ。
体は痛いが歩けなくもない。
俺はゴブリンさんたちの後に付いて川縁を歩く。
どうやら俺が向かっていたのと同じ方向に移動する様だ。
川沿いに村でもあるのだろうか。