ヘタレ魔法使い 9 また厄介をかける
どうも、書いている主人公同様にヘタレなキョロです。
少しは成長したいけどそんなに早く人って成長しないよね!
自分の目の前に叩き付けられている現実が痛いです……。
「あ……、」
ジャンさんに追い越されるのを見て、自然と声が出る。
もう少し一緒にいてもらいたかった。でもそんな私の期待はジャンさんにとっては邪魔でしかない。これ以上厄介になっては迷惑だと私は追いかけそうになった自分を諌めた。
引き止めたって、意味は無いのに。
「……とりあえず、中に入らなきゃ」
既にジャンさんは門を潜っていってしまったし、私も今日はこれ以上進まないでここに留まるべきだろう。
ポーチに入れていた白の無地のハンカチを取り出し、杖の魔石を隠すように包み込む。そのまま取れないようにきつく結んだ。せめて少しは目立たないように、という考えで付けてみたんだけどそもそもこの格好だとあまり意味はないかも。
どこかで新しく服を買うか考えながら私は門番さんに近付いていった。
「え、えーと……。入門の許可をお願いします」
「何用だ」
何用……? 用がないと入っちゃいけないのかな。
親戚が住んでいるので遊びに来たとか……、は無理だね。私、嘘とかは得意じゃないし。
やっぱり普通に「旅の者です」って言ったほうがいいかな。……あれ、よく考えたら嘘つく必要ないよ。
「旅の者です。消耗品の補給と休憩を兼ねて立ち寄りました」
「……そうか。何処の者だ」
「リカイン村です」
出身を言った途端怪訝そうな目で見られた。まあ当たり前の反応だよね、地図に載ってない訳だから。
でも他で知っている場所はアガリスくらいだ。いくらなんでもそれは近すぎるから嘘は通らないだろう。
「聞いたことがないな」
「何分田舎なものですから。大抵の方はご存知無いはずです」
大抵も何も一般の人が知ってたら私が驚くよ。
とにかく嘘はこれで大丈夫。服装で駄目って言われたら元も子もないけど。そこは祈るしかない。
門番さんは考え込んでいる風だったけど、どうやら大丈夫なようで敵意等は見られなかった。
「では入門料として10000Eを払ってもらう」
「分かりました。……しかし随分と高いのですね」
「これは変えようのない規則だ」
なんだか固い国だな。これは居辛そうだ。
ポーチからお金の入った巾着を取り出して金貨を一枚門番さんに手渡す。最近出費が多いような……。
「確かに。では通るといい」
「ありがとうございます」
軽く会釈をしてから私は門番さんの横を抜けて門を潜った。
門番さんから大分離れたところまで歩いてから私は大きなため息をついた。敬語は普通に使えるけど、緊張からか疲労が大きかった。おかしいな、数分の会話なのに。
「次は……、どうしようかな」
まだ日は高い。宿を取っておくという手もあるけど、それよりまだ城下街に対する興味が強い。
……折角だから、買い物してみようか。もちろん欲しいものがあった場合は財布と相談して。
目的を決めた私は騒がしい声が聞こえる方へ歩いて行った。市場とかの場所が分からないから活気がある方に行けばいいと思うんだ。
途中で女の人にしては低すぎる金切り声を聞いた気がしたけど喧騒のせいにして先に進んだ。
………
「うーん……」
私は市場に着いてからいろんな物を見てきた訳だけど、どうにもイマイチな反応しか出なかった。
だって商品が微妙なんですよ。いや、というより高い。携帯食料を買うにしても通常の二倍くらいの代金を支払った気がする。
本格的な買い物はまた今度になるのかなあ……。
消耗品の補給以外、市場では何もしていなかったけどブラブラと適当に見て回っていたからそれなりの時間が経っていた。まだ暗くなりはじめたくらいだけど宿に行くなら時間的にちょうどいいはずだ。
……肝心の宿がどこにあるのか分からないことを除けば、きっと何もかもちょうどいいんです。
「あー、さっき一緒に聞けば良かった……」
活気がある市場からは既に離れ、今は少し小道の暗めの道を歩いている。このまま迷子とかは洒落にならないよね、一回大通りに出たほうがいいかな。
それから沢山の角を曲がって私が大通りに出たのは二分後のことでした。あれ、なんでこんなに時間かかってるんだろう。
「……人に道を聞いただけじゃ辿り着けない気がしてきた」
今、迷いかけてたよね? これは本気でヤバイよ。
とにかく人を探さないことには何も始まりません。ゴツい怖面さん以外の人に宿まで案内してもらおう。また迷惑なことをしようとしているよ、私は。
目標時間は夜まで。魔法で辺りを照らしてもいいんだけど、それは魔法使いってことがバレそうだからしたくないのが本音です。さすがに図書館の件で懲りたよ……。
しばらく周囲をうろついたりきょろきょろと頻りに顔を動かしたりして宿と人を探す。それらしき建物は無いし、人もいない。運の悪さにもほどがある。
「うー、もう嫌……」
「どうしたんだ?」
「宿が見つからないんですよ……。って、わあ!?」
「反応が遅いなー」
つい話し掛けてくれた人を確認せずに応えていました。かっ、確認大事! 変な人だったらマズイし……。
慌てて男の人と距離をとる。ジャンさんほどではないけど、男の人は私より少し背が高いから顔を微妙に上に向けないといけない。首が、辛い。
……容姿が分からない。さっきより大分暗くなったから見えづらい。多分髪は黒なんじゃないかな。
確認をしたところで男の人に状況を説明する。「なるほど」と男の人は呟いて、私に視線を向けた。
「良かったら案内するぞ? もう結構暗いしな」
「あ、ありがとうございます! 道に迷っていたので助かります」
ぺこりと頭を下げてお礼を言う。この人すごくいい人だ。
頭を上げて男の人の顔を見ると口を開けてぽかんとしているのが分かった。次いで吹き出す男の人。え、なんで?
「ぷ、ぷふっ! なんか村に居た妹分を思い出すなー」
「い、妹分? 妹じゃないんですか?」
「ああ、近所の子だよ。馬鹿で阿保でマイペースだったけど後ろをついて来る姿だけは可愛かったなー」
うわあ、なんだか酷い言われようだなその人。
そういえば私もフリュウの後ろをついて回ってたなー。一回、焔を浮かべて追いかけ回されたことあったな。絶対ドSだよ。
……時々悪戯されたこともあったけど、良いお兄ちゃんって感じだったな。本当今どこにいるんだろう。
「俺が言うのもあれだけど、知らない人にはついて行かないほうがいいぞ」
「……あっ」
そっか、それで笑われたのか! 考えてみたら私即答してるもんね。そりゃ笑われるわ。
でもジャンさんも知らない人と同じようなものだよね。既について行っちゃってるよ私。
「まあ宿はいいとして。……君が持ってるそれは魔法関連のか?」
「……え?」
男の人の視線を辿ってみるとどうやら私の杖のことを言っているみたいだった。あれ、なんで分かるんだろう。魔石は隠しているはずなのに。
私の疑問は顔に出ていたようで、それに気付いた男の人が口を開く。
「俺も魔法をかじっていたからな、少し分かるんだ」
「そ、そうなんですか」
調子の良さそうな男の人の声を聞いているととても魔法を学んでいたとは思えない。まあ私より強いんでしょうけどね!
でも魔法を学んでいたからって、簡単に分かることなのかな。杖って言ったら大体お年寄りのか魔法使いのかぐらいなんだと思う。……それで気付いたとか?
分からないことに首を傾げつつも、男の人に宿へ案内してもらうことになった。すいません、よろしくお願いします。
「よし、じゃあ満員にならないうちに行くとするか」
「あ、はいっ!」
次の街からは頑張って自分で宿を探してみたいな。無理かもしれない、なんて思ってたら始まらないよね!
次回からタイトルの数字が二桁に。
……上手い具合に調節できるといいんだけど。




